24話 強者との約束

 ある不思議な空間で、白髪の端正な顔立ちをした男性が、地面にうずくまっている人物を見つめていた。その男は仙人のような服装をしており、見た目は二十代前半にも後半にも見える。その男と地面に付している人物は戦いの後なのだろう、男は何も変わったところはないが、もう一方は服がぼろぼろで体もあちこちに傷ができている。

 「どうだろうか、さらなる上の次元、身に浴びた感想は。」

 『フ、フフフ…これはすさまじいな。大いなる力が2つ感じられることも驚くべきことだが…、何よりここの大いなる場所との共鳴が完璧なのが驚きだ。私とは比べ物にならない、これでも私もかなり扱えるようになっているのだがな。これもその数十万年の間に習得したのか?』

 「ああ、そういうことだ。」

 『その…数十万年というのは、どういう事なんだ?あなたの昔の姿がその姿なのはわかった、があなたは自分を6歳だとも言った。6歳だと言うにはその姿は辻褄が合わないし、今のその姿も二十代に見える、つまり数十万年なんてことはありえないんだ。そもそもオーラをいくら極めようが、魔法をいくら極めようが、そこまで長生きしている人間のことなど聞いたことがない。私にはあなたという存在が本当に分からない。』

 いつのまにか俺の呼び方が君からあなたに変わっているな。おそらく俺の実力を見たからだろうがな。

 「返老還童と、転生さ。」

 『返老還童に…転生だと?』

 「ああ、私が六十ほどの時だったか、実力がある高みに到達したときにより効率的に肉体が扱えるように二十代の姿へと還ったんだ。このように老人が若者の姿になることを返老還童というのさ。そして転生だが、数十万年生きたのちに死に、輪廻に入ったということだ。要するに生まれ変わりさ。だが私の実力があまりにも高く、そして魂、いわゆる精神の修行もしていたおかげで記憶を失わずに済んだんだ。だから今世で6歳というのも事実だし、数十万年以上生きたというのも間違いではない、ということだ。これで疑問は解消できたか?」

 『…聞いても完璧には理解できないが…少なくとも嘘を言っていないのはわかる。それにしても…私は負けたのだな。悠久の時をここで過ごし、剣に対する理解も深まり、剣においては無敵なのではないか、とも思っていたのだがな。』

 「生きていればそういうこともある。自分にとってはこれ以上ないほどでも、世の中にはその最良を軽々飛び越えてくる奴がいるものだ。世の中を隅から隅まで探せば…私よりも強い強豪がいるかもしれないしな。」

 『あなたは…そこまで強いのに、まだ上がいると…考えているのか?』

 「別にいると思ってるわけじゃないさ。あくまで可能性として上がいるかもしれない、というだけだ。」

 『そこまでの強さがあれば、無敵だ!と有頂天になってもいい気がするが…』

 「少なくとも私と同等の実力のある存在を九は知っているからな。上がいても全然不思議ではないんだ。ところで君は、この大道から出たくはないか?」

 『!出られるのか?!ここから!』

 「少し時間はかかるが…出すこともでいないこともない。もしここから出たら、私と一緒に冒険をしてもらったり、いろいろしてもらうことになるだろうが…。」

 『それでもかまわない!私をここから出してくれ!』

 「わかった、どんなに遅くとも2年以内にはここから出そう。早ければ数か月と立たないうちに出れるかもしれない。」

 『わかった…、感謝する、ありがとう…!』 

 「ああ、それじゃあ元の世界に一足先に戻らせてもらう。現実ではモンスターと戦っているからな。」

 『わかった。また会える日を楽しみにし~~~……………』


 大道から出ると、蒼穹天涯剣がグリフィンをちょうど絶命させたところだった。

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