22話 大道と閉じ込められた強者

その剣術を展開した瞬間、俺はさっきまでいた場所とは全く異なる場所に立っていた。

 「そうか、ここが…この世界の剣の大道の大きさを示した場所、この大道の本源か…。」

 剣の大道使いとは剣使いがたどり着く一種の境地であり、自身の剣意をもち、さらにそれを剣の大道に共鳴させられるようになることである。大道は剣に限らず、魔を冠する大道や、仏を表す大道など様々なものがある。普通の人間であれば、一つの大道を共鳴させることが常識であり、多くの大道に染まることはない。だがそれはあくまで一人につき一つの大道しか共鳴させることができないというわけにはあらず、単純に大道を感じ取れるほどの才能が稀有なことと、仮にその才能が複数の大道を感じ取れるほどだったとしても、2つ以上の大道を修練するとどちらも極められずに終わることがほとんどだからである。

 「…まあ俺が共鳴させられる大道は5や10どころではないがな…ハハハッ!」

 そんなことはさておき、大道はそれぞれの世界によって大きさや強さは異なってくる。天帝だったころも、ほかの仙界や小世界なんかにいったときは、世界ごとに大道の大きさが異なるため共鳴させることが困難だった記憶がある。俺の場合は無理やり元の世界の大道を自身に共鳴させる、なんてこともできた。元の世界より小さい大道の世界で、その世界の定められた大道より大きな大道を発動させれば、それすなわち無双できるということに近い。なぜなら弱い大道は、より強い大道で抑制や制御できてしまうからだ。そうなれば小さい大道と共鳴している人々は、瞬く間に大道使いからただの剣意使いになり下がる。となればまあ…これまでの説明で分かるように無双できてしまうわけだ。大きな大道で抑制する以外にも、大道と人との繋がりを断ち切ったり、大道そのものを燃やしてなくす、なんて方法もあるにはあるが…そんなことをすれば後世に生まれる大道と共鳴できる天才が生まれる前に目を摘まれてしまうからな、俺はそんなもったいないことはしない。あ、できないとは言ってないぞ?

 「それにしてもこの世界の剣の大道…上界にも負けないくらいの大きさだな。この世界のスケールの大きさを考えれば当たり前というべきか…。だがなぜここに?ただ共鳴させただけだというのに、大道の場所までくるというのは…?ん? !」

 あれは…誰かここにいるのか?!この世界にッ!!!大道を感じ取りなおかつ大道の本源まで来れる奴がいるのかッ?!いや…まて、この世界は魔法とオーラが主流で功法はないはず…、そのため仙人が生まれたりすることもないはずだ…、それに仮に上界にはいなかった存在がいたとしても大道なんてものにアクセスするとは考えずらい…。たとえこの世界にオーラ使いで大道を共鳴させることができる人間がいたとしても!大道の本源まで来られるなんてありえない!もしこの世界に大道の本源まで来れる存在がこの世界にほかにも複数いるのなら…上界からすればとるに足らない仙人の生まれないこの世界に…とんでもない強者や秘密が隠れているかもしれない…!!!!

 『君が…今回この大いなる場所につながった者か…』

 「!(しゃべれるのかこいつは…)大いなる場所というのは…この剣の大道のことを言っているのか?」

 『剣の大道?なるほど君はこの場所をそう呼んでいるのだな…。いきなりこの場所にきて驚いただろう?この場所につながれる存在は私以外にはいないと思っていたんだが…初めて例外を感じ取ったものでね…こちらに呼ばせてもらったよ。』

 「そうだったのか…、いきなりここに来た理由がわかってよかったよ。(こいつ…かなり強いな、間違いなく今まで出会ったこの世の人間よりは強い…!)」

 『興味をひかれた、というのもあるが私はこの場所から出られなくてな、久しぶりに誰かと話したかったんだ。』

 「…出られないだと?」

 『ああ、私がまだこの場所にとらわれる前、剣をただただ振るっていたころの話だ。何分何時間と無我の状態で剣を振り続けると、何か剣から発せられていることに気が付いた。さらにその状態でも剣を振り続けると、この場所を見ることができた。そして私は…この場所にこそわが剣の道の終着点があるのではないかと思い始めた。』

 「なるほどな…それであんたはこの場所に来れるようになるまで剣を振り続けたというわけか…。」

 『ああ、そのとおりだ』

 なるほどな…おそらくこいつは剣意を感じられるまでの才能はあったんだろう。だがそこでこいつは止まらなかった、剣意を感じられるようになった後は剣意を極めて終わりだったはずのこいつの道が、天意がこいつの剣への思いを受け大道とつなげてしまったのだ。本来は大道を感じることはできない人間がここへきてしまった、そしてこいつの終着点は剣の大道そのもの。天意はそこまでは汲み取ったが、元の場所へ戻るところまではしてくれなかったわけだ。まあこいつが終着点なんて思ったから帰るところまではしてくれなかったんだろう、いや終着点として剣の大道に強い思いがなければそもそも天意はこいつをここまでは導いていない、か…。

 「それで?それを俺に話して何になるんだ?」

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