19話 理由
「それは…っ」
「そんなに言いづらいことなのか?」
「その、仮面の人だけでいいなら…理由を言う」
「は?なんで?私たちへの依頼なんでしょ?」
「まてミラ、わかった。とりあえず俺だけでその理由を聞こう。悪いがミラは一度席を外してくれるか?」
「む~!わかったよ、もうっ!」
「ありがとう。」
そうしてミラは膨れながら部屋から出ていった。
「それで?その理由は?」
「まず…質問なんだけど、あなた…男、よね?」
「!…まさか、あんな怠惰で自分勝手な存在が、冒険者なんて命を失うかもしれないほどのことを仕事に選ぶと思うか?」
「隠さなくていい、私にはわかるの、あなたが男だって。あなたにだけ理由を言うといったのもあなたが男だから、よ。私のその病気の身内というのが…私の兄なの。だから女の冒険者には受けてもらえない可能性が高い。そこで同性のあなたなら、受け入れてくれるんじゃやないかと思っているの。それと聞かれると思うから先に言っておくけど、私が赤ん坊だったころから兄のそばで暮らしてきたから、そのおかげであなたの動きのしぐさなんかをみて男だとわかったわ。」
この娘が言っていることが本当なら…嘘をつき続ける必要もないか。
「なるほどな、同じ男だからか…。ところで君はその兄と仲がいいのか?」
「ええ、とっても。私のことをずっと見守ってくれていたから…それにほかの男たちと違って兄はイケメンで優しいし…あ、ちなみに性的な意味で好きなわけじゃないわ。昔は男の少なさから兄弟で、っていうことも少なくなかったみたいだけど、私は純粋に家族として、妹として心配しているの。」
「そうか…、わかった。その依頼を受けよう。」
「!本当に?!ありがとう!」
「礼を言う必要はない。君の家族を思う心に感銘を受けただけだからな。ところで…君の名前は?」
「私の名前はコーネリア。ちなみに年は7よ。」
「わかった。俺の名前は天老君だ、年は6。そしてさっきまでここにいたのがミラで、年は8だ。よろしく頼むよ」
「ええ、よろしく天老君。あ、それとしっかりと報酬ははらうからそこらへんのことは安心してほしいわ。」
「コーネリアのような家族思いな人間が、報酬を踏み倒すなんて思っていないさ。さて、受けると決まればミラを呼んで、どうやってグリフィンの心臓を手に入れるか話し合うとするか」
「ところで…素顔は見せてくれないの?」
「もし顔が見たいなら…俺と信頼関係を築くことだな。まだ弟子であるミラにも見せたことがないからな。」
「へえ…弟子の子にも、ね…わかったわ。信頼が築けるように頑張るわ。」
「どうせこの依頼が終われば会わなくなるのに、そんなに気になることか?」
「ええ、見知らぬ人間の頼みを引き受けてくれるくらい優しい人の顔なら、知りたくなるのも当然じゃない?それに、この依頼が終わっても会わなくなる、ときまっているわけでもないし…」
「ふむ、たしかにそれもそうだな…」
「それで師父、受けることにしたのはいいものの、どうやってグリフィンの心臓を手いれる?ママに確認してみたけど、最近グリフィンの目撃情報はないってさ。一から探すっていうのだと、とんでもなく時間がかかると思うけど?」
「それについては心配しなくても大丈夫よ。すでに私のほうであなたたちを見つける前に、グリフィンのおおよその位置は把握しておいたから。ここからそう遠くないところにいるはずよ。」
「よし、明日の明朝に向かうとしよう。なんだかんだ話していたらもう日が落ちているからな。」
「ほんとだ」「ほんとうね」
「よし、今日はここでお開きだ。各自早く寝て、体調を崩さないように。グリフィンはなかなかに骨が折れる相手らしいからな。」
「師父はたぶん余裕だと思うけどね…。」
「そうなの?」
「そうだよコーネリア、師父の実力はほとんど把握できてないけど、今わかる部分だけでも怪物だもん。だからきっと…コーネリアの家族?の薬も手に入るから安心していいと思うよ!」
「!ありがとうミラ、あなたは優しいのね。」
「家族のためにっていうのは私もすごく共感できるから、明日はお互い頑張ろ!」
「ええ!」
そうして次の日を迎えた…
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