18話 少女の願い

 「質問に答えてくれないか?君が悪意を持っていないことはわかっていたから放っておいたが…さすがにそろそろ理由を知りたくてね。」

 「…」

 「無口な方なのか?それともただ無視しているだけかな?このままいくと、君のことを不審人物として憲兵に突き出すことになるが?」

 「…あななに…頼みたいことがある。」

 「やっとしゃべってくれたな。ふむ…、頼み事は内容を聞いてからだ。何も聞かずに引き受けて、犯罪の片棒を担ぎたくはないからね。ということは君は頼みごとをするに値するか見極めていた、ということなのかな?」

 「それもある…、けど単純になんて声を掛けたらいいのかわからなくて…。」

 最後のほうは声が小さくなってよく聞こえなかったが、なんだか結構かわいいことを言っていなかったか?

 「まあいい、今弟子もこちらに向かっているから、合流したら場所を移して話そう。」

 「ん…わかった。聞いてくれてありがとう。」

 「礼は頼みを引き受けるといってからにしてくれ、まだ何もしていないからな。それにしても、頼みがあるならギルドを通して指名する方が手っ取り早いと思うが、なぜそうしなかったんだ?」

 「人に頼みごとをするなら自分で出向いて頼むのが当たり前…、ましてそれが個人的なお願いならなおさらそうするべき。」

 「いい心構えだな。それを聞くだけで君の頼みを聞きたくなってきたよ。」

 「師父~!ハアハア…ほんとに幻みたいに消えたね!魔法で瞬間移動したのかと思ったくらいだよ!」

 「ミラも今後これをできるようにするんだぞ」

 「…実際に見てみてもっと自信なくした…。まあでもがんばるよ、師父の一番弟子としてね!ところで…そっちの人は結局何だったの?」

 「なんでも俺らに頼みごとがあるようだ。今からその詳しい話を聞きに移動するぞ。」

 「ふーん、わかった。でもなんで私たち?」

 「それを今から聞きに行くんだろう…。じゃあ…あそこの飲食店に入るとしよう。たしかあそこの店は個室があるんだったよな?ミラ」

 「うんそうそう!何かを話すにはぴったりの場所だよ!」


 「それで?その頼みというのは何なんだ?」

 俺たちはその飲食店に入り、各々飲み物や軽くつまめるものを頼んだ。

 「私と一緒にあるモノを取りにいてもらいたい!」

 あるモノねえ、3週間も見ていたぐらいだからそこまで緊急性のあるモノではないんだろうが…、どんなものだろうか?

 「あるモノとは一体何なんだ?そして、それを仮に手に入れたら何に使うつもりだ?」

 「私の…その…身内が病気をしていて、それで…グリフィンの心臓があれば…治療できるんだ。」

 「「グリフィンの心臓?(?!)」」

 「ちょ、ちょっと待ってよ、グリフィンなんて冒険者として依頼を受けたなら、少なくともBをくだらないほどの難易度だよ?!」

 「それは、わかっているんだ。それでも、お願いしたい。君たちに!」

 「なんで私たちなの?私たちの冒険者ランクはまだ師父がDで、私はEなんだよ?普通に考えて無理に決まってるよね?」

 そう、俺の修行についてきているうちに、ミラのランクは一つ上がっていた。ちなみに俺も今初めて聞いたぞ。

 「ミラ、落ち着け。この娘は身内の治療のために恥を忍んでお願いしているんだろう。だが確かに一理ある。なぜDとEランクの我々なんだ?それこそBランク以上の冒険者に頼めばいいのでは?」

 「…ある程度の実力がある冒険者に依頼を出すとなるとリスクが高くなるんだ。」

 「どういうことだ?」

 「ふっふっふ、師父!それはギルマスの娘である私が!説明します!」

 「あ、ああ。頼む」

 「まず実力のある冒険者、つまりランクの高い冒険者は特定の貴族に雇われているかのうせいがあるんだ。それで、もし出した依頼がそういったお抱えの冒険者なんかが受けると、その雇っている貴族に全部情報が流される可能性があるの。たとえばその依頼をした経緯とか、その依頼によって得られたものとかね。そうなるともし依頼を出していた人がその貴族の政敵だったりすると、そうした情報を悪いことに使われたりしちゃうし、仮に敵でも何でもない人でも、得られた成果物なんかを強引に奪い取られる可能性も出てくるんだ。それで今この娘がお願いしてるグリフィンの心臓は間違いなく、高価であまり市場に出回らないものだから、できるだけ貴族と関係がある冒険者にお願いしたい、っていうことだと思うよ?あってるよね?」

 ミラはよく若いのに賢いな、余程クラウディアに恩を返すために勉強したんだろうな。だがこれで俺たちに依頼してきた理由はわかった。

 「なるほどな。それで俺たちというわけか。だが貴族と関係のない実力者も探せばいくらでもいるはずだ。なぜわざわざ駆け出しの俺たちに声をかけた?」

 「それは…」

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