第16話 期待の新星?

 「すみません天冒険者、もう一度おっしゃっていただけますか?」

 「Aランク依頼の対象の人物をとらえたのだが、この依頼はランク不足で受けていなくてな、受けていなくても達成は有効なのかどうかが知りたいんだが。」

 「ちょちょちょ、待ってください!Aランクって言いましたよね?!Aランク?!確かに強いと思っていたけど、冒険者歴2日のFランクがそんなことできるの?!」

 「エミリー!落ち着きなさい!」パコンッ!

 「い、いたい…で、でも先輩!この方がAランクの依頼を達成したっていうんですよ?!」

 「いや、達成したといっても一人のひ弱な男を殺しただけだ」

 「それって…数日前におきた強姦殺人の犯人ですよ…ね? そ、それならありうる、ウン全然ありうる、かも?」

 「申し訳ございません冒険者様、エミリーは使い物にならないので私が対応させていただきます。」

 「ああ、かまわない」

 「まず部屋を変えましょう、奥の部屋まで来てください。エミリーが騒いだせいで注目が集まっていますから。」

 俺は素直にうなずき、その女性の案内に従って別室に移った。

 「まず天老君様…、犯人の証拠となるものはありますでしょうか?」

 「老君は敬称だから、様かどっちかを外してくれ。それと証拠になりそうなものだと、あいつが俺に殺される前に自白したことと、あいつの持っていた所持品だ。」

 「それは申し訳ありません天様。それと自白したのですか?」

 「ああ、俺がFランクと告げると俺を返り討ちにできると思ったのか、犯行を語ってくれたよ。」

 「わかりました…、ところで犯人はどこに?」

 「すでに物言わぬ死体となっていてな、ここに死体を出すのも悪いからどこか出せる場所はないか?」

 「?!こ、殺されたのですか?」

 「依頼は生死問わず、だったものだからな。」

 「か、かしこまりました。で、ではこの町の警備隊を呼ぶのでそちらに死体はお渡しください。それと犯人の所持品はギルドに一度提出してください。自白したというのを疑ってはおりませんが、その方がより確実な証拠となり世間も安心するでしょうから」

 「わかった、そうしよう。」


 

 その後、宿に戻り運気調息をしてすぐ眠りについた。このぐらい大したことではないが、やはり初めてなことをいろいろ経験したからか疲れたようだ。

 「師父!」

 「ミラ、来たか」

 「師父さ~Aランクの依頼達成したでしょ?!」

 「ああ、つい昨日な」

 「用事ってAランクの依頼を達成するためだったの?!普通Fランクでそんなことする馬鹿はいないよ!」

 「馬鹿じゃない、それに昨日の用事はある実験をすることで、Aランクを達成したのはそのついでだ。」

 「はー?!ついででAランクを達成するとかはっきり言ってありえないよ?まあ犯人の犯した罪が重罪だったからランクを高く設定して、より高いランクの冒険者にやってもらって達成確立を上げようと思ったんだろうけどねギルド側は。それを抜きにしても、魔法か剣かどちらを使うか不明で追跡も難しくて、長期的な依頼になるか総合的に考えてC、Dランクはあると思うんだけど…。」

 「なるほどな、だが確かにあの男の実力自体はそこまででもなかった。なんでも誰かに剣を師事していたらしいが…、普通のEランクよりも少し上、くらいだったからな。」

 「あ、ほんとに?じゃあやっぱりかかる時間とかも加味してC、Dらへんが妥当だね。でも師父、いくらいろいろあったとしてもAはAだよ?そのせいで師父はギルド内で期待の新星、なんて呼ばれているからね。」

 「そうか、期待のね…。まあ悪い気はしないな。」

 「そうそう!期待の新星さん!いや~仮の 弟子として鼻が高いな~。ということで、期待の星であり私の師匠の顔を…見てみたい、な?」

 「ほめてくれてありがとう。だが俺の肉声を聞かせることも、顔を見せることも今後とも俺に師事して、真の弟子となったら…だ。」

 「え~なんでえー。師父がものすごい美人だったら今すぐ本当に弟子入りするのにな?」

 …上目遣いであざとい言い方だ。確かにかわいらしいが、俺はロリコンではないからな、小さい子供をみる親のような感じだ。

 「あきらめろ、それにそこまで気にするようなことでもないぞ?」

 「なんでそんなに見せたくないの~?もしかして…男だったり?」

 するどいな、仮面と変声は完璧のはずなんだがな。それともあてずっぽうか?

 「ばかいうな、俺はミラの目からみてそんなに傍若無人だったり自分勝手に見えるのか?」

 「そうは見えないけどさ~」

 「もう俺の顔のことはいい、早く依頼を決めていくぞ」

 「はーい」

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