第15話 実験

 「ふむ…ずいぶん奥まで入り込んでるな。まあこんな奥までくれば、一般人が入り込んでくるということもないだろうしな。」

 もうずいぶん歩いた、かれこれ15分くらいはたってるぞ。明日はまたミラと依頼を受けるから早く終わらせたいのだが。

 「ん?いた…。剣使いだったか、オーラが使えるかどうかはわからんな。…、この世の男は自堕落な奴ばかりだから、どうせオーラまでは使えないだろう。いや、Aランクだから使えるのか?まあ気にすることでもないな。こんにちは~!」

 ちなみに今は仮面を外している。同じ男だと同類だと思われ警戒しないでくれるかもとの期待をこめて、なんてことはなく単純に息苦しいからだ。

 「!だれだ!」

 「俺の名前はアドリウス、よろしく頼むよ修為君。」

 「しゅう…い君…?男か!なんでこんなところに男が!」

 「それを言うなら君も男だろ?それもかつての女を何とも思ってない男を体現しているようなな。」

 「それを知ってるってことは冒険者か!お前一体何ランクなんだ!」

「俺のランクか?残念ながらFだ。ギルドで受け付けてから来いるわけではないからな。」

 「は、ハハハ!Fランクが俺をとらえに来たってのか?!お前にできるとでも?!」

 「ランクだけ見れば当然無理だろう。まあ今回の依頼は犯人の実力が不明なことと、犯行の悪逆さからAになっただけで、もう少し正規のランクは下だろう?」

 「A?!Aランクか!思ったより高いな!」

 「喜んでるのか?」

 「ああ、そうさ。この世の男が必要とされなくなってから、おれはそれまでの贅沢な暮らしができなくなった。それで今回性欲がたまってしまってな、あの一家に体を貸してもらった、というわけだ。お礼にあの世行きの切符をくれてやったからな、あいつらも感謝しているはずさ。」

 「…ゴミめ。お前はここで始末させてもらう。」

 「ハ!Fランクのカスが、俺はそこらのただ自堕落な男とは違ってある程度鍛えていたからな、Fランクごときには負けないぜ?どうせ依頼に犯人が男と書いてあったから、冒険者として登録している自分のほうが強いとか思ってきたんだろ?残念だったな、この依頼を達成できることなく、お前は死ぬんだ!」

 「そうか…それよりも、いいのか?」

 「あ?なんだよ?」

 「お前の右足…お前の体とくっついていないように見えるが?」

 「はあ?なにをいっ…て?は?」 

 俺は会話中に瞬時に相手の足を切断し、それを認識させ混乱させている間に…

 「ふっ!!!」

 相手の懐に飛び込み顔を思い切りぶん殴り、吹き飛ばした。ついでに…

 「おい大丈夫か?それと今度は目がお前から離れているようだが。」

 目玉をほじくり取った。残虐性の解消とはこうして徐々にしていくものだ。

 「おい!?!は!?な!なにしてくれてんだ?!お、俺のあしが!そ、それに右目が見えない!!」

 「こらえ性のない奴だな、例え足がなくなろうと、目がなくなろうと致命的だということはない。確かになれるまでは時間がかかり不便だろうが、人間とはなれる生き物、そのくらいは順応できる。だから痛みなぞ気にしている暇があるのなら、俺に切りかかってくればいいものを。そうすればここから生きて帰れる道が開けるかもしれないというのに、いやどのみち相手が私では不可能か。まあいい、お前には俺の実験に付き合ってもらうぞ。」

 にしてもうるさいな、点穴を打って…よし、静かになった。

 「呑奪魔功、劫之汚魂。」

 首をつかみ、魔功を発動させる。さあ、この世界ではどのような結果になる…?

 「あ、あああアアアア!!!!」

 シュウゥゥゥ…。うまくいったぞ!修為の上がりはほぼ皆無だが、かつてと同じようにちゃんと作用する!これで今後も魔性の解消と修為の向上という、二足の草鞋状態を続けられることが決まったな。ちなみに俺は吸収している間、同時に手などを折っていた、そうした方がより報いを受けさせられるからだ。弱肉強食なこの世界では、泣き寝入りする人も多いのだろう。十大天帝のように民の味方をしてくれる存在もいなそうだったからな。これで少しは殺された人たちの気も晴れたかな…。


 ギルドにて…

 「すみません、受付の方。道中たまたま、Aランク依頼の対象と思わしき人物と遭遇したので遂行したのだが有効だろうか?」 

 「へ?」

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