第14話 ミラの今後と天帝の魔性
「剣はこんな感じ~!」
天才だな、うん。剣をまともに習ってなかったといっていたのに、キラーラビットを剣で普通に一刀両断したぞ?ごく稀に世界には天性の才を持つものが生まれるが…ミラはその中でも間違いなく上位だ。それに剣でキラーラビットを切る際、魔力を無意識下で体に循環させているのが見えた。おそらくオーラが発現していないため、その代わりとなるものを本能で引っ張ってきたのだろう。とりあえず…
「ミラは魔法と剣、両方を同時に学んでいくことにしよう。魔法も剣も申し分ない才能だ。それに君なら仮にオーラを発現できなくとも、剣をオーラマスターとほぼ遜色ないレベルで扱うことも可能となるだろう。それでどうだ?」
「ほんとに両方できる?」
「ああ、それは俺が保証する。」
「わかった!じゃあ両方やるよ!」
「決まりだな。天階武技、蒼龍飛翔。」
ミラと話しながら俺は、以気御剣術で依頼されたキラーラビットの数に到達するまで狩り続けた。
「よし、今日の目標は達成したから、とりあえずは帰ろう。」
「えーもう?まだまだ日は落ちないよ?」
「俺にも少しやることがあるからな、今日はここでおしまいだ。それと明日から剣術だったり魔力の運用方法を教えたりするから、帰ったら早めに休めよ。」
「うん~わかった。ところでやることって何?」
「くだらない野暮用さ。」
俺のやることは今日の朝、ミラと依頼書を見ている時にできたものだ。帰ったらさっそく取り掛かろう。
「じゃあまた明日ね、師父!」
「ああ、また明日」
……よし、ミラはもう行ったな。さて探し出すか。今回俺が目を付けた依頼はAランクの依頼で、ある犯罪者を捕まえるというものだ。罪状は強姦と殺人だったかな。ある一家に押し入って、家長である女性を殺害後、娘の1人を強姦しもう一人の娘にはその光景を目の前で見せて絶望しているところを殺したそうだ。当然襲われていた娘も、その後殺された。その家はいわゆるシングルマザーだったそうで、奥さん(いや今回殺害されたほうも奥さんだな、ややこしいな)は二人を生んでまもなく死んでしまったようだ。ひどいものだな…今回依頼を出したのはその娘さん2人の幼馴染の女の子だそうだ。単純に幼馴染として親しくしていたからか、あるいは恋人のような関係に近かったのか、それはわからないがこの依頼は絶対に達成する必要がある。天帝だったころもそういった手合いは絶対に始末してきた。俺自身が正道出身ということもあり、このような邪悪なことを見過ごせなかったのだ。義に反する、そう言った行いがなされていたから俺たちは天帝になった。そう…義こそが俺の原点であり、今世でもそれは変わらない。まあある時から単純な義侠心から、というわけではなくなってしまったが…。
「ここだな…、惨殺された一家の家は。この世界には戸籍登録なんてものはないし、ましてや指紋を鑑定することなんてない。一応魔力やオーラの痕跡を視て人を割り出す、なんてこともできることもあるみたいだが、ほとんどは痕跡がすぐなくなって見つけることはできない。だが俺の神通をもってしてみれば…天羅致網の際に使う神通、天地巡眼!」
この神通は天地を見通す目であり、母様達と戦った際もついでに発動させて世界を見通したな。さて、犯人に関してわかっていることは男で、魔法使いかオーラ使いかは不明ということだ。つまりほとんどわかっていない。幼馴染の女の子が逃げていく男をぎりぎり遠目から見た、という話だからな。しかしこの神通ならば、前世の刑事ドラマとかでよく聞く、ゲソ痕のようなものを視ることもできる。ふふふ…天帝とは万能な存在なのだよ!…ゴホン!まあいい、もう足跡は見つけたからこれを追うだけだ。この世界に生まれてから改良した歩法を使おう。この世界なら人の功法を盗んだなんて他に使い手がいないから言われることもないし、バンバン使っていこう。ちなみに名前はまだない、俺の名づけセンスは壊滅的だからな。単純に元となった功法を混ぜた名前だと、修羅天魔幽霊天外僧印~うんたらかんたら歩法、とあほみたいな名前になってしまうからな。…と、そんなことを考えている間に見つけたな、この洞窟の中か。今回この依頼を遂行している理由は、さっき言った純粋な義侠心ではなくなったということと、魔功に関係している。魔功を習得し、対極で魔心との均衡を保ったが、魔心の影響を消すことができたわけではない。魔の心から来る破壊衝動や残虐性、そういったものはいつまでも自身の中にあり続け、時間がたつと抑えられなくなった。いわゆる魔性が抑えられなくなった、ということだ。そこで俺は悪人に目を付けた。殺されてもおかしくない、いやむしろ殺されてしかるべき悪人ならば、手にかけても問題ない、いやむしろ称賛されるからな。悪人ならば俺の義侠心に反することもなく、悪人しか傷つけなくてすむ。さらにその魔性を有効活用するために、人の修為や本源、精髄を奪える魔功もみにつけた。そして今回の依頼で、魔力とオーラしかないこの世界でもこの魔功が使えるかの実験、そして俺自身の名誉を高めてくれる、というまさしく一石二鳥というわけだ。さて、そろそろ行くか、俺の修為に会いに…。
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