第11話 やっとはじまる冒険者生活
「天…老君?変わった名前だな。たとえ偽名だとしても。」
「老君は敬称のようなものさ。だから実際には天、という名前だ。」
「なるほどね、天か。よろしく頼むよ天老君。私はこのギルドのギルドマスター、クラウディアだ。」
「よろしくお願いするよクラウディアギルドマスターさん。」
「よしてくれ、君の実力は低くない。君の力の隠し方からそれは一目瞭然だ。呼び捨てで構わないよ。」
「ん…、わかったよクラウディア」
なんだか勢いで呼び捨てすることになったけど…これいいのか?クラウディアの見た目はとても若く見えるし、おそらく20代前半で、娘さんと同じきれいな黒髪だ。相手は俺のことを、女で実力が未知数だから呼び捨てにして、へりくだらなくていいと言ったんだと思うが…、俺は男だし若い女性を呼び捨てにするというのもなあ。まあ仮に男だと分かったとしても俺は6歳だからな…、別に男女の関係にはならないとは思うし、そもそも6歳じゃ性に関することはほぼほぼ反応しないしな。だがそれはそれとして、本当にキレイ顔だな。天帝だったころ何十万年と生きていたから異性に関することは興味がなくなったはずなんだが、やはり生まれ変わると戻るのか。天帝だったころは修為が高ければ若いままの姿を保っていられたが、この世界でもオーラか魔力が優れていれば同じことができるようだ。俺がもう少し早く生まれていれば好きになっていたかもな。…?なんでこんな考えが出てきた?雑念は振り払わねば。
「ところでクラウディア、君はとても若く見えるが娘さんのことはずいぶん早くに産んだのか?」
「ああ、あの子は…、私の実の娘ではないんだ。私はまだ21だし、あの子も大人びているがまだ8歳なんだ。あの子は捨て子でな、私と同じ黒髪だったから引き取ったんだ。でもギルドマスターの仕事が忙しくてな、かまってあげられずにいたらママの仕事を手伝うといって仕事をするようになってね、そうしていたらギルドがどうすれば繁盛するかをよく考えるようになってな。おそらく君のことを止めた理由は、君のような前途が有望な子はもっと大人になってから冒険者になったほうがより活躍できる、と子供ながらに考えたんだろう。」
そういうことね…。にしても独り身か…、考えもまともだし好感が持てるな。いやいや!何を考えてる?!ほんとにおかしいぞ?!
「そうか、いい娘さんだな。…まあこの話はおいておいて、さっそく本題に入ってくれないか?わざわざ部屋にまでついてこさせるくらいなんだ。何か用があるのだろう?」
「ああ、君の実力を目にしてぜひ頼みたいことができたんだ。この頼みを聞いてくれれば冒険者ランクに関して優遇も図ることができる。君にとってはメリットしかない話だ。どうだい?」
俺としては早くこの場を離れて彼女のことを考えるのをやめたいのだが、人からの頼みを無下にするわけにはいかないな。決して距離を近づけたいというわけでは…ない、はず。
「内容を聞いてからだな。」
「ハハ、聞いてくれるだけでありがたいよ。」
話を聞き終え、宿を取りもう寝るというところまできた。結論から言うと、クラウディアの頼みは聞くことにした。内容は彼女の娘とパーティを組んでほしいということだった。なんでも娘さんはギルドに貢献するために、冒険者になりたがっているようだ。そこで指導者を探していたが適任がおらず、そこで現れたのが同年代である俺、というわけだ。さらにその子を上手く指導できれば、教える側としても問題ないという認定がされ、冒険者のランクを最低のFからDランクまでは上げてくれるそうだ。まあ冒険者のランク云々よりも、この世界で初めての弟子、のようなものに心が踊っている自分がいる。天帝だったころにとった弟子もそこまで数が多かったわけでもないし、久しぶりの弟子だから、優しく指導してあげよう。師父!とかつての弟子に懐かれていたのを思うと気分が上がってしまうな。その感覚を今世も味わえるなんて、本当に楽しみだ。
さて、それよりも今最も重要なのは、なぜかクラウディアに意識を多く持っていかれていることだ。細かく分析してみたが、やはり二度目の人生の感性に染まっていることと、天帝だったころの精神が今世の6歳の精神と打ち合ってかなり、精神面が幼くなっているという結果だった。だが改めて考えると、異性に関心を寄せることは悪いことではない。たしかに雑念というとらえ方もできるが、今の俺はもう天帝としての力を取り戻しているために、修練に集中するために雑念を断ち切る必要もない。むしろ男女の交わりを禁ずることを主とする童子功よりも、男女の絡み(必ずしも肉体的な関係に限るということではない)を主とし陰陽の循環をより多くしたほうがいいと考えた。かつてはかつてでしかない、重要なのは今の現状をありのまま受け入れることだ。フッ…6歳にして悟ってしまうとは、将来有望だな。………若者特有のこの調子に乗ってしまう面も受け入れよう。今の俺は天帝でもなけば社畜でもない、アドリウスという全く新しい人間なのだ。アドリウスとして新しい人生の歩み方をしよう。たとえ俺の道が白く染まろうが黒く染まろうが、異性と多く絡んだり、ないとは思うが同性とそういった関係を結ぶような情欲にまみれた道であろうが、なんであろうと受け入れる。それが私の、いや俺のこれから歩む道だ。
…頭がすっきりしたな。修為も上がった気がする。精神面の調整はばっちり、とりあえず今日は寝るか。冒険者として明日から早速弟子と活動開始、だな。
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