第7話 母たちの実力と息子の実力
「第7位階魔法、サンフレア」
!第7位階だと?!母様はすでに大賢者に足をかけているのか?!発動させるわけにはいかない!
「天家式神通!破眼拘神!!」
2人には見えない巨大な目が空に浮かび、セシリアを視た。
「う、動けない?!?アリア!」
さすがというべきか、セシリアの穴を埋めるようにアリアがすぐさま急接近してきた。
「アルゴン流剣技、瞬降一刀!」
「華剣功、第三訣、乱千色花!」
アリアは居合切りに似た技を、アドリウスはどこからか剣を取り出し、視界いっぱいの景色が花に染まるような剣技を繰り出した。そしてアドリウスは続けざま剣を持たない手をアリアに向けた。
「大手印!」
「防御魔法!」
アリアへの追撃は防がれてしまった。もう神通から抜け出したのか?!いや、そんなはずはない!
「サンフレア、ダブル!」
まずい!詠唱が終わった上に二発重ねて撃ってきた!
「防御功法!上古天凱戸!」
アドリウスの目の前に扉が現れ、セシリアの魔力によって作られた光線が吸い込まれた。すると光線は戸を通り過ぎた瞬間消え去り、光線に含まれていた魔力の残滓がうっすらとアドリウス体に当たった。
「やっぱりやるね、2人とも。」
「アドリウスも私が教えたことのない、それどころか今まで見たこともないような剣術に…だい、しゅいん?とか言う技ですごい強いじゃないか。」
「それに私のまだ見せたことのない7位階の魔法も消失させられちゃったし…。初見で対応されるのは結構悲しいのよ?」
「それを言うなら僕の剣術を受けきったアリア母様も、拘束を抜け出したセシリア母様のほうがすごいでしょ。アリア母様は打ち合ってたからわかるけど、セシリア母様はどうやって抜け出したの?」
「まだ教えてなかったかしら?転移魔法よ。貴方の実力はすごいよくわかったけど、まだ魔法に対する理解が浅かったりするから、未知の何かには対応が後手に回っている。これじゃあまだ許可はだせないわよ?」
言ってくれるな…。確かに天帝だったという事実から、驕っていて勉強不足だったかもしれないな…。反省しなくては。でも母様、それは間違いだ。未知なものに対する対処?そんなことは天帝時代に死ぬほどやってきているんだよ。
「母様たち、少しレベルを上げるよ?」
二度目の人生の時、いろいろな小説やアニメを見た。もちろん二次創作なわけだから、その中で繰り出される技はほとんどが想像や妄想からできたものだ。だが、今の私ならほとんどの技を論理は異なったりもするが繰り出すことができる。例えば…こんなふうに。
「天魔君臨歩」
訓練所の地面が崩壊し、がれきの山となっていく。それでもアドリウスは手を止めなかった。
「天魔剣法・天滅魔剣」
一瞬の剣法でアリアの装備すべてが一瞬で壊れ、
「魔羅口訣・天道欲界、暗天にすべく悪神が手を下す!」
続けざまにアドリウスがそう叫んだ直後、セシリアの防御魔法が砕けた。
「「?!」」
「万流剣術…天外剣」
そうして放った最後の剣は、アリアとアリアとセシリアの間を一筋の剣撃が抜けていき、かつて作った渓谷よりも深い、深さ1kmは優にあるだろうという新たな渓谷が現れた。それも見渡す限りの距離まで続き、途中にある山も一刀両断され、山肌、いや山の核ともいえる部分がむき出しとなっていた。
「ふう…。どうかな、2人とも。これで…力の証明になったかな。」
「これが…剣術…?ありえない…これほどの技なんて、精霊王並み?いや、そ、それよりも上…?」
「わ、私の防御魔法にスキはなかったはず…。それをアドリウスが何かを唱えた瞬間、完璧に壊された…?」
二人とも放心状態になっていた。二人が正気を取り戻すまで待つか…。それにしてもこの渓谷、我ながらすごく広いな。こちら側に人や建物がないか神通を通して見渡しておいたから、間違って人に当たったとかはあり得ない。力を示すためとはいえ、2%も力を出す必要なかったな。それに力を2%解放してわかったが、この世界、というか星の大きさは少なくとも地球の数十倍はあるな。それに一瞬だったが1kmを超えるであろう生命体が数体見えた。前前世の世界では麒麟だとかの神獣があれくらいだったか…?天帝だったころによく暇つぶしとして戦ってみたものだ。おそらくあれらに劣らないだろうから、冒険者になったら挑んでみるのもありだな。天帝としての実力で、この世界の頂点に立つのかが十分かを判断するいい試金石となるだろう。それに加えて…いくつかの方向からとてつもない圧力が私にのみ飛んできているのがわかる。
アドリウスが感じているのは歓喜だった。絶対強者としての力を取り戻し、取り戻してから一番大きく力を使ってその熱が冷めていない中、自身へと敵対心を向けてきているものがいたからだ。天帝だったころは、対等に戦える相手は数少なく、その上ほかの古代十大天帝とは、世の安寧のために戦うことなどできなかった。しかし、ここでは世界を治める天帝の一人ではなく、アドリウスという個人で戦える。その事実が大きくアドリウスを喜ばせたのであった。
「あ、アドリウス…。お前は一体、こんな力をどこで手に入れたんだ?」
「そ、それは…」
「言いづらいことなの…?」
「うん…」
「そう…じゃあこれだけは聞かせて。なにか危険なことだったり、あなたの命にかかわるようなことは…してないかしら。」
「うん!天地神明にかけて誓うよ。そんなことはしていないって。」
「そう…、天地神明というのはよくわからないけど、あなたの態度から嘘を言ってないのは伝わってくるわ…。そうね…、アドリウス、冒険者になるのを許可します。アリアも…それでいいかしら?」
「あ、ああ!これだけの力があれば間違いなくSランク、いやSランクなんてくくりじゃ足りないくらいの冒険者になれる!」
「母様たち…ありがとう!」
「命を最優先に、それと学園に通う12歳までの6年がたったらかえってくる、それと少なくとも三か月に一回は顔をだして、二週間に一回は手紙を書くこと!これらを約束できる?」
「うん!手紙は一週間に一回書くよ!」
「よし!約束をちゃんと守れるなら、私は言うことがないわ。でもやるからには冒険者業、ちゃんと全力でやるのよ!それと!女の子と恋仲になってもいいけど!結婚だとか!そういったことはお母さんたちに会わせてからじゃないと絶対に納得しないからね!」
「き、気が早いよ…?まだ僕は6歳だし、帰ってくる頃でも12歳なんだよ?」
「いまでこそ魔法で女性同士で子供をつくれるからあれだけど、それ以前はもう5,6歳で婚約、なんてことも多かったのよ?!」
「わかった、わかったから母様。万が一だけど、そんな子ができたら連れてくるから!」
「よし!それなら大丈夫よ!」
「うん!じゃあさっそくだけど2、3日後には出発しようかな。」
「アドリウス、冒険者をやることは許したけど…その前に!やってもらうことがあります。」
「…あ、あー…ハイやります…。」
冒険者をやることは母様たちに許されたが、貴族としての基礎知識やマナーなどを徹底的に教えこんでから、という条件付きだった。これのせいで2、3日後を予定した出発が3か月後になったアドリウスであった…。
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