第6話 異世界に来たならば

 「ふう…。だんだんこの体で功法を使うのにも慣れてきたな。さっきの邪霊功法も普通の功法ともまた違った形だが、問題ないな。」

 邪霊功の本質は呪い…、霊力を媒介に様々な呪いをかけること。しかし人を呪わば穴二つ、というように何かしら問題が生じれば自身に帰ってくるからな。実際かつて大聖者と呼ばれるほどの強者でも、呪いを基本とする功法により反坐を食らい、体がよじれて死んだ。まあそいつは輪廻に関する功法を修練していたために、輪廻に入る前に別の体で復活していたが。

 「む、そう考えると私も何かしらの復活する手段を持っておくべきか…。また一から人生を始めるのにも時間がかかるしな。しかし復活のために媒介とするものがないな…。」

 復活媒体に分魂をもたせる、この方法が一番手っ取り早いが私の魂を持っても形を保てるほどのものとなると、そうそうないというのが現状だ。

「ならばやることは一つ!冒険者になることだ!」

年甲斐もなくワクワクするな!おそらく前世の影響と今の私の年齢が6歳ということが大きいと思うが。

「冒険者となって分魂を入れられるものを探す、そして冒険者として名を上げつつ僕の世間のイメージをよくする。そうときまればさっそく両親に言わないとね。」

帰ったらさっそくアリアとセシリアに言おう。二人とも元冒険者だし、きっと応援してくれるはずだよ…きっとね?


「だめです」

「お願い…」

「だめです」

「少しくらい男の子は冒険しないと…」

「許可できません」

「まあまあいいんじゃないか?アドリウスは私とセシーから魔法も剣もどっちも教わっているし、最低限の実力はあると思うし。」

「だとしても…アドリウスは男の子なのよ?いくらいつも依頼をしててそこまで男と関わっていた人たちが少なかったとしても、高位の冒険者なんかは貴族の男に依頼されたこともあったはずよ。」

「なあセシリア、セシリアも前侯爵のお義母様に反対されてただろ?それでもセシリアは私と冒険に出るんだって、許可されるまでずっと言い続けてたじゃないか。」

「それはそうだけど…」

「だから…、アドリウスに実力を示してもらえばいいじゃないか。私たち二人と同時に戦って、ある程度戦えれば許可を出す…それでいいんじゃないか?」

そういいながらアリア母様がこちらに鋭い視線を送ってきた。応援していると思ったがアリア母様も反対だったか。普通に考えて、6歳の子供がAランクの上澄み二人を同時に相手をして善戦できるはずがないからな。まあそれはあくまで‘普通の‘子供の場合だがね。

「そうね、分かったわ。私たち二人に力を示せれば!許可をします。」

「わかりました…。力を示すどころか二人を倒して見せますよ。そうすれば安心でしょ?」

「ハハハ、そうだな。ほんとにそんな実力があるなら…安心して送り出せるよ。」

 「期待してください!お二人の息子の力に!」


 二人の先導のもと、訓練所にやってきた。いつも渓谷で訓練してたからあんまり気にしてなかったけど…侯爵家なんだなあ、と感慨深げに今更ながらなっていた。普通に家に訓練所が併設されてるってとんでもないからね。だけどやっぱり、天帝だったころを思いだすと見劣り…どころではないな、んんっ!まあ昔は昔、今は今だからね!気にしない気にしない。

 「さあ、アドリウス、力を示せ!」

 「アリア…、それ昔のダンジョンの守護者の真似してるでしょ。」

 「よくない?私たちにっとてあいつは超えなくちゃならない壁だった、そして今のアドリウスにとっては私たちが超えなくちゃならない壁なんだしさ。」

 「えー、あの守護者結構私にとってトラウマなんだけど…。でもアドリウスにとって超えなくちゃならない壁、っていうのは間違ってないわね。」

 「でしょ?よし、そろそろアドリウスも準備できたみたいだし、始めようか。」

 「うん、アリア母様。準備はばっちりだよ。」

 「それと…アドリウス、お前が隠している力を母様たちに見せてくれるとありがたいんだけどな?」

 「…なんのことかわからない…かな?」

 「2年前にできたあの渓谷、アドリウスが何かしたんでしょう?私は魔力を感じなかったし…」

 「私もオーラは感じなかったけど…、間違いなくあれはアドリウスがなにかしたはず…だよなアドリウス。魔法もオーラも天才的、私たちに迫る…もしくはもう超えているかもしれない。けど…私たち2人を同時に相手にするのはさすがに不可能だ。それじゃあ私たちは超えられない。」

 「だけどアドリウス、その不思議な力を見せてくれるなら、そしてその強さが確かなものなら、母さんたちは安心できるのよ。」

 バレていたか…。さすがに渓谷なんてつくってしまったら誤魔化せなかったか~…。でも二人とも…、なにかしら魔法とオーラ以外の力だろうと推察していたのに問い詰めたりしてこなかったな。いい両親に恵まれてよかった…。それにアリア母様も冒険者になるのを反対しているというわけではなかったんだな。

 「わかったよ二人とも…。だけど2人とも、全力を出したほうがいい。この力を出せば、必ず二人を超えられる、それどころか…2人になにもさせないまま決着がつくかもしれないからね。」

 「わかった、私たちは最初から全力を出そう。」

 「よし、それじゃあ…始めようか!」

 2人は魔力とオーラを、私は功力を解放した。

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