第3話 力を取り戻すとき

  まずは、呼吸法は私の知っている一番大気のエネルギーを取り込みやすいものに変えよう。だがこの呼吸法は体になじむまでは、取り込むエネルギーが大きすぎて体に激痛が走ったりする。だがこれを乗り越えることで力を取り戻す大きな一歩となる。この呼吸は体の中でエネルギーを循環させるもののため、一回この呼吸を始めてしまえば永久に取り込み続け、無限に力が高まっていくというものだ。まあその力を十全に振るうにはある程度の肉体が伴っていなくてはならないが。ちなみにこのエネルギーは取り込んだ後に功力というものに変化し、この功力を用いて功法を展開することができる。そしてこの功法というのは、前前世の世界での修行の根幹となるものだ。

ここまでくれば私の前前世がどんな存在だったかわかる者もいるだろう。そう、私は仙人だったのだ。それもただの仙人というわけではない、諸天万界、所謂上界というところを統べる天帝の一人だったのだ。かつての世界では数人の強者が力で支配しており、その者たちは気まぐれで人を殺すことは日常であり、悪行に悪行を重ねていた世界だった。そこで私を含む反感を持っていた10人で反旗を翻し、その強者たちを殺していった。そうしてその強者たちを一掃した後、その10人で世界を秩序や倫理を保ちながら統治した。我々はその間も修為を上昇させていき、数千年、数万年と時間がたち、神にも匹敵、いや神をも超えた存在として古来より存在する者、古代十大天帝と呼ばれるようになった。その後我々10人で世界を維持するために…いや、この話は後でいいだろう。

 (とりあえずは私の知る最強の功法を混合させてそれをもとに修行をしていくか…。ふっ!)

 「ハアアアアア…」

 ぐ…、ものすごく痛いが功力の高まりを感じる。それに…このおそらく魔力であろうものも、ある程度は動かすことができるようになってきた。それに、この功法で取り込んだエネルギーを功力だけじゃなく魔力に変換するようにした。おおよそ割合は1:1といったところか…。

 バタンッ!「アドリウスー!元気してるかー!」

 アリアだ…。金髪がまぶしいや。よくよく考えたら両親が金髪と白髪だと…、私の髪色はどうなるんだろうか。それにアリアからはなにか…、魔力とも異なる何かを感じる。前世の小説なんかでは魔力のほかにはオーラだとかいう設定が多かった気がするが…。見た目からしてセシリアは魔法使いだし、アリアは剣士だ。オーラ、かはわからないがそのような力もあるならぜひとも使いたいな。

 「セシーからは言葉がわかるような気がする、なんて言われたけど…、本当かな?アドリウス、もし言葉がわかるなら返事をしてくれよ。剣士になりたいか?私の子供なんだから県の才能があるだろうし!ん?セシーの子供でもあるから魔法の才能も…?まあいいや。とにかく!剣を私から教わりたいよな?!」

 「だう!」

 「よしよし!お前が3歳ぐらいになったら教えてあげるからな!楽しみにしているんだぞ!ハハハ!」

 バタンッ!

 行ってしまった…。気のいい母親だな。この世界の剣術も気になるし、有用であれば、私の知っている功法とまぜてみるのもありかもしれないな。さて、することもないし、3歳まではこの呼吸法を続けるとしよう…。




 「言葉も流ちょうに話せるようになったな…、それに功力も魔力もかなり多い。今の私の実力はおおよそ築基境といったところか。だがまだまだだ。私の目指しているのは至尊級や渡劫境、玄境といったよく聞くすさまじい仙人のレベルどころではないからな…。」

 もうすでに6歳になった。アリア母様からは剣を教わり、セシリア母様からは魔法を教わっている。魔法や結局はオーラというものだったものも、地道に鍛えるしかないといわれたからな、ゆっくり学んでいるところだ。それでも母様方からは天才だとか神童だなんて言われているがね。それと髪の毛の色は金と白がうまい具合に混ざったような感じになった。

 「それにそろそろパーティーに出なくてはいけない時期か…」

 どうやら家は侯爵家だったらしく、かなり地位が高いようだった。だが私の力は見せないらしい。男が暴力的で自己中心的だというイメージが根強く、何の力もない怠惰な存在だという認識だからだ。そんな存在が魔法も剣も使えるとなれば、恐怖の対象になってしまうかもしれないからだ。だが力は見せずとも、怠惰で自己中心的というイメージは、男全体は無理かもしれないがアドリウス、という個人単位ならなくすことができるだろう。

「力は見せちゃいけないけど、決して侮られないように、そして人には優しくするのよ。」

「そうだぞ、アドリウス。男というだけで目を付けられる可能性があるから、優しく接するんだぞ。けどそれでもいじめられたりなんかしたら、我慢はしないで。毅然とした態度で接して、反抗するんだ。」

「わかった!母様たち!」

 だいたいこの世界のことも把握したし、体も整ってきたからな、そろそろあれをするか…。

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