満月の夜君で八回シコった

@soranin-

満月の夜君で八回シコった

 満月の夜。それは男たちの闘い。長野県伊那市、春の陽気も辺り一面に広がり始めた。動植物のほとんどが眠りから覚め、虫はささやき、草は茂り、風はさざめく。こんな陽気に誘われて動き出すのは何も動植物だけではない。伊那市の男たちはこの日を待ち望みにしていた。猛り、昂り、熱をあげる。この話の主人公陰毛太郎もその一人である。昨日の晩は勢力をつけるため豚の丸焼きに、すっぽん、「宝仙堂の凄汁 Max Energy」を実に三本は飲み干している。ここまで言えば勘のいい読者ならばこれが何の祭りであるかわかったであろう。だがここはあえて言わせてもらう。長野県伊那市「チンポバトル大会」について!

 この祭りの起源は実に鎌倉時代まで遡る。当時この地を支配していた武士は自分の一物にたいそうな自信を持っていた。湯浴みに向かえば民衆に対しイチモツを見せつけ「どうだ俺のもんは。これならば馬にも負けまい。」と息巻いていたそうだ。

 そしてその当時に大変な飢饉が起こり民衆は飢餓にくるしんでいた。この武士さんはこの状態を何とかしたいとは思っていたものの、大変プライドが高かったものだからタダで自分の家の家財を村に与えるということはできなかったのだ。そこにある村人がこう言ったそう。「おい武士さんよ。あんたはいちもつに大層な誇りを持ってらっしゃる。それを俺らで打ち砕くことができれば家財なんてちゃちなものあたえることは簡単なんじゃいか?」「はっはっはっ!いいぞ確かにそうだ!この我にイチモツで勝てるというのならよろこんでこの地位肥溜めにすてようぞ!」このようにして始まった「チンポバトル大会」は当初より名前は大きく変えたものの歴々と受け継がれてきた。

 「チンポバトル大会」の会場には続々と伊那市中の屈強な男どもが集まっている。山地の多いこの地域で育った市民たちは並大抵のイチモツはもちあわせていないことはこの会場に来れば十分に理解できるだろう。


「今年の優勝は田所さんで決まりだな。銭湯で見たがあれは圧巻されたわ。」

「誰が優勝確定だって?優勝するのはこの俺だ。」

「突然出てきてなんだお前」

「よく覚えておけ。俺は陰毛太郎。この大会で覇者となるものだ!!!」

「お前面白すぎるだろ。まあがんばれや。まあ?お前のちゃちなイチモツじゃあ優勝するどころか。一回戦も勝ち上がれねえだろうがな。」

「てめえもういっぺん言ってみろ!」


 陰毛はその男に殴りかかろうとするが、周りの男たちが面白そうにしながら止める。


「やめとけよ兄ちゃん。ここは腕っぷしじゃなくて、股間で勝負するんだぜ?まぁお前のそんなちっこいジョニーじゃあ?腕っぷしの強さもたかが知れてるだろうがな!」

 会場がどっと笑う。どこを見て笑っているかはお分かりだろう。もちろんイチモツだ。大勢の笑いものになった陰毛は下を向いていたため、多くの人は落ち込んでいるだとか恥ずかしがって上を向けないのだと思っていただろう。だが、陰毛は決してそんなことはなかった。彼は笑っていた。



 会場のものは唖然としていた。いまのこの状況を全く理解できていなかった。なぜあの小さいかような青年が各部門を総なめしているのか。なぜあそこまで巨大化することができるのか。そんな彼の情報を聞きつけ見に行く人は大勢いた。そして、彼の巨大化したイチモツを初めて見たものはみな口をそろえてこう言ったという。「バンブーディック」竹のようなイチモツだと。

 だが怯えるものというのは弱者であるというのはこの世の常であり、こんな状況になったとしても全く動じていないものが存在した。それが田所その人である。

「いまどきの若いやつはすごいの。ほとんど総なめしおったわ。ただ、持続力の面ではさすがに負けるわけにはいかないの。」と小さい声ではあったが腹の奥にずんとくるように言う。それを陰毛が聞き逃すわけもなく「おい爺さん。確かにあんたは昔すごかったようだが、今は年だ。潔く俺に冠譲りやがれ。」こう強くは言っているものの陰毛は少し畏怖していた。確かに目の前にいるのは遠目でみればただの老人に過ぎない。だが近くで見ると妙に貫禄があり、眼光も鋭く、そしてなにより彼のイチモツは全く年齢にそぐわないものであった。

 数分間互いににらみを利かせていると、だんだん人が周りに集まっていた。がやがやとでかいだとか、大根がぶら下がっているだとか、あれを人間につけていいものでないだろうとかという声が聞こえてくる。そうして少し経つと会場にいるほとんどの人が集まっていた。こんな良い場が整っているのにここで勝負をしないのは何事か。場の空気がそう叫んでいる。よって例外的にこの場で勝負を執り行うこととなった。会場の高ぶりは最高潮に達しついに最後の勝負である持続力部門の戦いの火ぶたが切って落とされた。

「さあ、両者わかっているとは思いますが、形式上説明をさせていただきます。勝負は持続力勝負で、時間内に連続でどれだけ射精ができるかで勝敗を決します。さぁ両者準備はよろしいでしょうか」

「あぁ。」

「ビンビンじゃよ。」

「では試合スタートです!!」

両者のイチモツへの情熱のかけ方は半端なものではなかった。こする速さは音を置き去りにし、赤子を触るかのように繊細な刺激を続けている。これを見るだけで漢ならばこの行為にどれだけの時間と研鑽を積んできたかがわかってしまう。どちらも天上の実力、だが。

「若造よ、もう疲れておるのか?わしにはわかるぞ。こする周期がコンマ数秒ではあるが遅くなっておる。儂もお主と同じならそうなっていたかもしれんな。」

 刹那、こする手が右手から左手に代わる。漢たちは毎回やる手が固定されているのが普通だ。その理由はシンプルで慣れ親しんだ手の方が気持ちがよい。つまり、ここで田所が選択した手というのは通常ならば絶頂までの速さを抑えてしまう。だが、ここでそんな選択をするぐらいならコンマ数秒を犠牲にし、右手を使い続けるのが得策である。つまり何が言えるのか。これは田所がこのコンマ数秒を優に上回るほど左手を使いこなしているという証拠であった。

「さぁ若造!!!この儂をどう超える!!」

「だまれ!お前のしおれた声なんて聞きたくねえんだよ!」

残る試合時間は約20秒。両者六回絶頂を迎え、勝負は佳境に入った。ここで田所と陰毛が七回目の絶頂をするがここで一秒の差が生まれた。田所が積み重ねた時間が徐々に効果を生み出す。ここにきての一秒差、状況は絶望的である。

「やはりお主では儂に勝つことはできない。年季が違うんじゃよ。」

「くっっっ!」

「おとなしく負けを認めよ。その手を下ろせ。そうすれば楽になれるぞ。」

「なんてな。俺は自分のために戦ってないんだよ。だから、まだ戦える!!」

陰毛の右手は加速する。先ほどの疲れが嘘のような加速を続ける。血管は浮き出た。股間ははち切れそうであった。だが、陰毛は加速した。何かにとりつかれたように。

「なぜじゃ。なぜ加速できる。おぬしはもう限界のはず。」

「限界を、超える。そこからが本当の勝負だ。うっ、、」

ここで陰毛が7回目の、、

「まだだ!まだ終わってない!八回めえええええええええ!!!!」

陰毛魂の二連発射精。そして、丁度旗が上がった。勝負は終わったのだ。

「すげえ勝負だったな。」

「こんな勝負この先みれることは絶対にないだろうよ。」

会場がこの戦いに賛美を送っている。本当に素晴らしい戦いであった。陰毛はその場に倒れ満足そうな顔をしている。そうしていると、陰毛のもとへと田所が向かっていた。

「最後の瞬間なぜあんな力を出せたのじゃ。お主は限界だったはず。なにがお主をそこまでさせるのじゃ。」

 陰毛は少し悩んだ後、ゆっくりと口を開けた。

「俺には昔彼女がいた。初恋の人だった。」

 周囲はシンとなり、陰毛の方を向く。先ほどまでとは違う神妙な雰囲気が出ていた。

「幼馴染だったんだ。でもあの娘はこの地域の地主の娘で俺にはかなう相手ではなかった。だから俺は必死に頑張った。あの娘に振り向いてもらうために。」

「それでどうなったのじゃ。」

「あぁ、結ばれたさ。そのあとは本当に幸せだった。俺はここで死ぬんじゃないか。いや死んでもいいとすら思ったね。」

「、、、、」

「そうして幸せな日が続いた。付き合い始めて三か月、俺らはセックスすることになったんだ。そのとき俺はやってしまった。」

「なにをしたんじゃ?」

「いや何もできなかった。勃たなかった。全く勃たなかったんだ。彼女はショックを受けて逃げてしまった。情けねえよなあ。惨めで泣きたくなったよ。だから俺はあの時の無念を晴らすためここまで頑張ったんだ。」

「そうだったのね。」

そこに可憐で澄み渡る声が響いた。

「君は。なんで君がここにいるんだ。だって君は。」

そこには昔より一段ときれいになった彼女がいた。実に10年ぶりの再会であった。

「あなたのことずっと見てた。あなたのことずっと思ってた。でもあの時逃げてしまったからあなたは私に幻滅してしまったと思ったの。でも、あなたも私のこと思ってくれていたのね。」

「、、、、、、あぁ。俺は、いや僕は君に告白した満月の夜に君のことを考えながらしこっていたよ。」

「太郎!」

月の光が二人を照らしていた。その光は再会を祝っているのか。それともこの先を思っているのか。でもこれだけは言える。二人の愛は決して消えることはないだろう。そう満月に誓った。それはかぐや姫を思わせた。


Fin

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