第45話 意気投合

 ハイハーイ!

 ということで、私はどこにいるでしょうか?


 察しのいい人は、わかっていますよね?


 ヒントは、フローラルでファビュラスな香りがする部屋。


 大きな窓があり、そこには朱色のカーテンが掛けられ、その手前には薄紅色の天蓋がかけられたキングサイズのベッド。


 向かいにはピンク色の姿見鏡とドレッサーがあり、左横には真っ白なワードローブ。


 扉付近には、綺麗な木目模様のテーブルに3人掛けの革張りソファーが置かれているところです。


 そう、私、加藤和世ことおしゃぶりは王宮内にいますぅぅぅぅー!


 しかも、なーんと! 王女様のお部屋ですよ!


 やばいですよね! 興奮しちゃいますよね!?


 すんすん! いい香りがしますよ!


 いや、それよりも……こんな謎クイズ。

 誰もわからへんから!


 セルフツッコミ復活だー!


 てか、さっきの会話からすると、ちょっと打ち解けるけど、バイバイする流れだったはずだもんね。


 というか、どこの世界に触手を四本生やしたおしゃぶりを招き入れる王族がいるんだっての!


 って、ここにいるんですけどね……あははー!


 あ、そうだ。

 真面目な話、何でこうなったか、説明しないと意味わからないよね?


 けど、ダラダラチュートリアルみたいな回想も飽きるよね……。


 よし! 端的にいこう! 実はあの後。


 運命的なことが起きてですね……そ・れ・は!


 みーとんを介した会話で知ったことなんだけど、な、なんとぉぉぉー!

 王女様は、日本出身の転生者でしたー!


 つまり同郷です!


 いやー、運命ですよねー。

 異世界転生して、日本出身の人に出会えるなんて。


 とにかく、それで意気投合して、王女様のスキル【転移】でブォン、王城の広場にシュタ、王女様に抱えられて、シュタタタン! こんな感じでここに連れてこられ、ご丁寧におしゃぶりである私を革張りソファーの上+宝石とか飾るような赤色の台座を置いてくれてって感じで、今に至ります。


 ただ、問題があって、王国内にはそれぞれの分野に特化した白銀の騎士団って人たちが仕えていて、今も王国内の状況を把握しているっぽいんだよ。


 少なくとも、スキル【索敵】とか、複数人と連絡できるスキル持っている人がいると思うんだよね……統率された動きを見せているし、いや、もっとやばい人たちもいるのかも、例えばスキル【攻撃魔法】に特化した人とか、【防御魔法】や【動きを封じる魔法】・【尋問】などを専門にしている人たちとか……。


 実際、私のスキル【索敵】で確認する限り、王城内だけでも、数十人が見張りとかをしているし。


 とはいえ、【種族】物である私には、その管理下から外れるらしい。


 まぁ、おしゃぶりですしね……万能触覚ちゃんすら出さなければ……。


 この話を聞いて、ふと思ったんだけど、みーとんがオークの時、すでに【種族】物である私を見つけて的確に攻撃を繰り出してきたよね。


 ということは、みーとんが持っていたスキル【索敵】は宮廷魔法士さんたちより、レベルが高いってことなのかな?


 あり得る……私のステータス然り、真理の山に住まう魔物が規格外なわけだし。


 あ、一応だけど、ステータス画面と、【索敵】画面は表示したままです。


 王女様を信じていないわけじゃないけど。


 加琉羅ルイ君似のコンラッドさんと、今も扉の外で立っている白銀の騎士団、副団長ガイアスさんっていう、褐色ムキムキイケメンが怖すぎてちょっとね……。


 まぁ皆さん、緑の点なので私より弱いんですけどね。


 ま、とにかく! まさかのここにきて、【種族】物っていう意味不明なカテゴライズが役に立っているっていうことは確かだし、私が王女様の部屋に居ようとも問題ないというわけよ。


 って? 気付いちゃいましたか?

 みーとんが居ませんよね?


 それにも理由があるんです。


 私の【種族】は物。よって宝石とか、剣とかと同じ。

 けど、残念なことみーとんの【種族】精霊獣。

 本来、精霊獣は魔物とは違い無条件で害意がないとされているんだけど。


 ただ、それは王国外でのルールがあって。


 国内となると使役する者がハッキリしていること。

 王国に登録手続きを済ませていること。


 この2つの条件をクリアしていないといけないらしいのだ。


 なので、もし使い魔であるみーとんを顕現させてしまえば、その瞬間に、王国に仕えている白銀の騎士団が察知→みーとんを捉えて隔離→今目の前にいるコンラッドさんのスキル【鑑定】で使役している人物を特定しないといけなくなる→結果、良くて私を尋問、悪くて討伐といった流れになるらしい。


 なので、みーとんを呼ぶことはできないのだ。


 あ、そうだそうだ! まーた忘れてた!

 色々とあると、話が転々としちゃうんだよねー!


 私の悪い癖だわー。


 そういや、ルーミーにもよく注意されたっけ?

「会話が転々してて、たまに何を言っているかわからないよw」って、まぁそれでも笑いながら会話をしてくれてたんだけどね!


 ルーミー、私。

 おしゃぶりに転生しても、ぜんぜーん直んないや。


 じゃなくて! コホン、コホン! では説明を!


 えーっと、これは道中で王女様に教えてもらったんだけど、使い魔となった魔物や、聖獣は異空間にその姿を隠すことができて。


 姿が消える時は無音、顕現する時はコミカルなポン! っていう、ポップコーンが弾ける音より、少し大きめな音が鳴るのよ!


 いかにも異世界ファンタジーって感じだし、ご都合感が増した能力だよねー!


 けど、ワクワクするし、色んな可能性をイマジナリーしちゃうしで、オタクとしてはたまらんです!


 たまらんのですけど、みーとんを介しての伝言ゲームが、唯一のコミュニケーション方法だったからさ困ったもんだよー。


 口もない、異世界の言葉も理解できない、おしゃぶりにどうしろって言うんだ。


 まぁ、王城なんだからそれくらいのセキュリティあって然るべきなんだけど。


 というかさ、何で魔物の言葉は理解できて、人間の言葉はわからないんだろうね……その辺にリアリティーを求めてはいなんですけど……。


 だけども! ふふーん、何か忘れていませんか?

 そう、私はただのおしゃぶりではないのです。


 私には、手足の代わりになる万能触手ちゃんがいるんですよー!


 ということで、金髪碧眼の作画完璧美少女、物腰柔らか、グッジョブバディの王女様は日本語で喋って、私は日本語で筆談を楽しんでいます。


 これなら、王女様の横で睨みを利かせているコンラッドさんにもバレないしね。


 まぁ、怖いって言いながらも、扉の前のガイアスさんと違って、推しの顔ですからね! 眼福ちゃ眼福だなとも思っています。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る