おしゃぶり視点
第44話 もう1人の転生者
ふむふむ。
なんか女の子の猫? 使い魔? 精霊獣? に話し掛けているっぽい?
あれかな? 似た者同士なら会話が成立する感じなのかな?
というか、今気付いたんだけど、これって運命の分かれ道だよね……お尋ねおしゃぶりとか、ふざけてたけどさ。
下手したら、まじでなるやつじゃん。
しかも、何? 2人の後ろにいる褐色の肌をしたムキムキイケメンめっちゃこっち睨んでるやん。
奇々怪々触手おしゃぶりだけど、中身はただの陽キャオタク女子だよ? 怖いって。
なんてネガティブモードになりかけていたら、みーとんの声が頭の中ではなく、実際に聞こえた。
どうやら少し距離ができると、テレパシー? 念話? ややこしいので念話と呼び名を決めちゃうけど、使えなくなるようだ。
そんなみーとんは蹄をめいっぱい振り、こちらへと駆けてきた。
「ぷひぃー!」
可愛いな、可愛いなったら、可愛いな、和世心の一句。
《ぐふふ……》
――ニュルニュルウネウネ。
感情の昂りにつられて、万能触手ちゃんが動き出す。
って、危ない危ない! 我が使い魔へのビッグラブが漏れ出てた。
私はすぐさま万能触手ちゃんに意識を集中し、その暴走を止める。
《ふぅ……》
みーとんが、誤解を説いてくれたっぽいのに、無駄にするところだった。
おしゃぶりから、四本の触手が出て、ニュルウネさせているなんて……こんなの遠目で見ても、討伐案件になっちゃうよ。
私はふと、みーとんの後ろに視線をやる。
うん? けど、その後ろには、金髪で超絶可愛い女の子と使い魔もいるよね……なんで?
《えっ!?》
私は思わず声を漏らす。
その少し後ろには、しかめっ面をした加琉羅ルイ君(仮)もいた。
☆☆☆
しばらくして、私はみーとんを介して近くに来た2人とコミュニケーションをとっていた。
とはいえ、向こうも精霊獣のなぎちゃんという名前の白い猫さんを介しているので、ちょっとした伝言ゲームになってはいるけど。
ただ、そのお話はとても興味深かった。
まず、私のいる場所について。
ここはこの世界で一番危険とされる真理の山という場所で、先程まで生活していた森の中が深淵の森というそうだ。
2つの場所は、生息している魔物がどれも特別な個体らしく、ステータスが異常に高い。
どうりで、スキル3つ持ちとかいるわけだよねー。
てか、よくそんな場所で生き抜いたもんだ。
というか、案外スキル【鑑定】とか無くて良かったかも。
現状を知らない方がいいってこともあるもんね。
あと、彼らの素性について。
まずは、加琉羅ルイ君そっくりなイケメンさん。
彼は深淵の森から北に位置するラングドシャ王国の次期国王を約束された人で。
名をコンラッド・ロア・ラングドシャといい、白銀の騎士団という兵団の団長なようだ。
ラングドシャ王国内でも、一、二を争う実力者らしい。
顔、声もいいっていうのに、その上強いとか、どこの主人公さんだよ……全く!
こっちは奇々怪々おしゃぶりだっていうのにさ。
そして、その隣にいる金髪碧眼のグッジョブバディの女の子は現王女であり、名をシャルル・ロア・ラングドシャというらしい。
言うまでもなく、2人は夫婦だ。
もう全部が羨まし過ぎるぜ……ぐぬぬぬとなったのも言うまでもない。
そんなリア充な王族たちが、私のところに来た理由は、コンラッドさんのスキル【鑑定】で私を鑑定したら、そこに転生者と表示されていたかららしい。
ただ、ステータスが異常過ぎたってのと、触手を生やしたおしゃぶりということで、近寄ることを躊躇っていたとか。
まぁ、普通はそうなりますよねー……あはは……。
私なら、スルーするかも知れないしね。
そんな中、タイミング良くみーとんが歩いていき、なぎちゃんと会話して、それを聞いていたシャルル王女がコンラッドさんを説得したようだ。
普通じゃ考えられないけど、何やらシャルルっていう王女様も転生者なようで、どうしても話をしたかったらしい。
おしゃぶりである私と。
なんというか不思議な縁もあったもんだ。
とその話を他人事のように聞いていた。
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