第39話 深淵の森という場所
スキル【転移】により、深淵の森の入口に着いた私たちはいきなり、魔物たちの歓迎を受けていた。
前衛はスキル【剣術】と【氷魔法】を使えるコンラッド様と【剣術】と【風魔法】を習得しているガイアス様の従える近距離戦が得意な団員の方々が受け持ち。
後衛は、遠距離攻撃が適したスキルを保有した団員の方々。
遊撃士兼、指示役として、スキル【光魔法】と【索敵】と【精霊獣使い】を使える私という陣を敷いていた。
「右前方、茂みから10匹、左前方の茂みからも5匹来ます!」
「ありがとう! シャル! 皆も聞いたな? 前方から来るぞ!」
「「「おぉー!」」」
――ザシュッ!
コンラッド様がスキル【氷魔法】を纏わせたサーベルでスライムを突き刺し、それを団員の方々が二人一組となってトドメを刺した。
「ふぅ……何とか1匹」
「だな、こんな手こずるとは思ってなかった……」
トドメ刺した団員2人が額から汗を垂らしながら言う。
その表情からは終わりの見えない戦いの疲れと、手こずっていたスライムを1匹倒せたという油断が垣間見えた。
その間も、コンラッド様は次々と押し寄せてくるスライムたちを迎え撃っている。
「そこ! まだまだ来るぞ! 油断しない!」
「「は、はい!」」
コンラッド様の言葉を受けて、団員2人は気合いを入れ直し、他の団員の方々もそれに引っ張られる形で精悍な顔つきに戻る。
だが、スライムもスキル【氷魔法】を有している上に、ステータスが高いせいで、なかなか倒し切ることができずにいた。
「ああ! くそっ! これじゃ埒があかねぇ! 団長! 早くケリをつけないとまずいぞこりゃ! 消耗戦になったら俺たちが不利だ」
ガイアス様が、左手でスキル【風魔法】を右手でサーベルを使い、スライムを蹴散らしながら言う。
ガイアス様の言う通り、これでは消耗戦になるし、そうなると私たちは、今より苦戦を強いられることになるのは間違いない。
実際、100人いた団員の内、約半数はスライムの酸攻撃と氷魔法を受けてしまい、身動きがとれない状態となっている。
しかも、ここは深淵の森、こうしてスライムたちに手間取っている間に高ステータスの、別の魔物が襲い掛かってくるかもしれないのだ。
「皆さん、横に避けて下さい! 私がなぎと同調して、全力の魔法を放ちます!」
スキル【精霊獣遣いレベル5】が使える詠唱を必要とするスキル【光魔法】の行使。
その威力は普通の魔法の数倍にもなる。
「「「はい!」」」
「なぎ、いくよ!」
《わかったー、まかしてー》
「我が身に宿る魔力よ、収束し――」
私の詠唱と共に合わせて、なぎが空中にスキル【光魔法】を発動し、私もそこに魔法を重ねる。
「――数多なる光の槍よ! 顕現し、我が敵を穿てホーリーランス!」
詠唱を終えた瞬間。
空中に無数の光の槍が瞬時に形成され、スライムの大群に炸裂する。
団員の方々に群がっていたスライムは徐々に数を減らしていく。
「よし! 今が好機だ! 押し切るぞー!」
コンラッド様の掛け声に続き、他の団員の方々も声を上げて、魔法をくらい弱ったスライムたちにトドメをさしていく。
「「「おぉー!」」」
「おっしゃ! 俺にも任せろ! オラッ!」
ガイアス様の声に呼応するように、風の刃が生まれて、スライムたちを切り刻んだ。
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