第38話 ステータスとスキル
まずは、この世界で基本ステータスと呼ばれる【レベル】【体力】【魔力】【攻撃】【防御】【敏捷性】【知力】の8項目について。
項目も多い上に、こういったデータ取りを習慣としない異世界では手こずると思っていたのですけど。
ですが、訓練場で私と一緒に実践してくれたガイアス様、団員の方々と、スキル【鑑定】を持っているコンラッド様のおかげで、すぐに理解できた。
大前提として、どの項目もレベルアップをする方が、大幅なステータスの上昇が見られた。
レベルアップすれば、直前に行なっていたトレーニングによりけりだが、5〜10の幅。
トレーニングのみであれば、1〜2といったように。
【レベル】
単純な強さ。高ければ高いほど強く、魔物を倒すと上がり、レベルが高くなると上がりにくくなった。
【体力】
多いと私生活でも疲れづらく、0になると間違いなく死に至り、走り込みや心肺機能を上げる動作、鍛錬をすると上がった。
レベルアップで全快。食事、睡眠などで回復する。
【魔力】
スキルを発動する為に必要なステータス。
この世界では体力に次ぐ重要なもの。
0になっても、死に至ることはないが、倦怠感と絶望感が襲いかかり、正気を保つことは困難となる。
レベルアップにより全快。また【体力】と同じように時間経過で自然回復が可能。ただし、メカニズムは少し違う。【体力】とは違い、食事では回復することはなく、世界に漂う魔素(魔力の元)を空気から自分の体に補完するといったイメージだ。
【攻撃】
相手にどれだけのダメージを与えることができるのかを判断できるステータス。
高ければ高いほど相手にダメージを与えられる。
ステータスに表示されているのは、あくまでも最大値なので、実生活には問題は無い。
武術や剣術といった修練を積むこと、魔物との戦闘でも上がった。
【防御】
攻撃に対してどれだけのダメージを受けることが判断できるステータス。
高ければ高いほど相手の攻撃に耐えることができる。攻撃を受けると上がった。
【敏捷性】
高いと素早い動作ができ、避ける動作、短距離走などをすると上がった。
【知力】
スキルの威力と相関するステータス。
本を読んだり、新しい知識を身につけたり、新たな経験をすると上がった。
ここまでが、基本ステータスと呼ばれる8項目。
もちろん、スキルについても、色々と知ることができた。
スキルの種類。
スキルには、常時発動型・自己発動型の二種類が存在していた。
その名前の通り、常時発動型は習得した時点で影響を及ぼし、自己発動型は、自ら発動の意思を示さないといけないといった感じだった。
例を挙げるとスキル【剣術】は常時発動型。
スキル【氷魔法】は自己発動型というように。
シンプルで非常にわかりやすくて、手こずることもなかったし、コンラッド様やガイアス様、騎士団の方々の経験談により、後天的に発現、習得できるものあるということも知った。
ただ、ステータスよりもスキルの方が、遺伝的な要員が高いということも、同時にわからされてしまった。
日本で言うなら、ステータスは傾向。
スキルというのは、才能の塊といったイメージだ。
例えば、生まれた時からスキル【剣術】を保有している者がいるとしよう、その子をAさんと仮定して、あとから凄まじい鍛錬の末、スキル【剣術】を身につけた子をBさんと仮定する。
生まれた時から、【剣術】を保有しているAさんは、そのスキルを活かすべく、若い頃から適格な鍛錬を積んでいく。
一方、凄まじい鍛錬の末、【剣術】を身につけたBさんは、実力のピークに達する頃には、体はついてこず【剣術】極めるには時間が足らなくなる。
しかし、生まれた時から【剣術】を保有していたAさんは、年若くから鍛錬を積んでいたこともあり、時間に余裕が持てる。
つまり、どう足掻いても平等にはならないのだ。
「これでは……才能に努力は敵わないって証明になってしまいますよね……」
私がこの結果に訓練場で膝を抱えて落ち込んでいると、コンラッド様とガイアス様が声を重ねて、私の肩を叩いた。
「「じゃあ、最高だ」」
彼らからすると、この結果こそが民衆を励ますことになるとのことで、笑顔を弾けさせていた。
私はそんな2人と、団員の方々の一押しもあって、この結果を国王である父に報告した。
項目別にも分けた、一般民衆向けの冊子も作ってみたいという案も添えて。
あの時の父の顔は、今でも忘れもしない。
リアルあれが青天の霹靂、寝耳に水といった感じだろう。
ですが、その夜、家族のみの食事会では母と嬉しそうに談笑しており、どこか誇らしげな表情を浮かべていた。
私はここから、何か吹っ切れたように国王である父を通じて国全体に週休二日制を導入したり、曖昧かつグチャグチャになっていた国に仕える方々の雇用契約を取り纏めたり、些細な小競り合いなどへのルールを設けたりなど。
日本では当たり前に行われていたことを広めていった。
ですが、これが案外好評で父が私の成した功績だと国中に知らせ、いつの間にか私個人を担ぎ上げる方々が生まれた。
それがガイアス様のように、私を聖女と呼ぶ方々だ。
私が少し前のことを思い出していると、いつの間にかコンラッド様は近くに来ていた。
「――シャル? どうかしたの?」
心配そうに覗き込み、長い睫毛を揺らす。
「あ、いえ! 少し考え事を――」
「おいおい! 大丈夫か? 俺たちは聖女様の力がなくったって問題なく、深淵の森に辿り着けるぜ」
「うん、ガイアスの言う通りだ。君が辛い思いをしなくいい。僕らはこういう時の為に、日々精進してるんだからね」
「いえ! 大丈夫です」
「ふっ、強情だな! ったく、誰に似たんだか……なぁ、団長?」
「ふふっ、そうだね……誰に似たんだろうね……」
コンラッド様とガイアス様は、目を見合わせて首を傾げる。その後ろに控えている団員の方々も呆れているようだ。
「で、では強情ついでにお願いがあります」
私には考えがあった。
というよりは、今思いついたのだ。
それは白銀の騎士団と共に転移すること。
一緒に行ってしまえば、コンラッド様の無事を祈るだけなんて、嫌な思いをしなくて済むし、何だったら助けることもできるからだ。
「シャル――何となくわかるけど、それはだめだ」
「ああ、まぁ……口に出さないでくれるとありがたいな」
2人して、私の考えをお見通しのようだ。
なんというか、こういう時はお2人とも鋭い。
そんなに私はわかりやすいのでしょうか?
《あるじー、わかりやすいー。こんらっどとおんなじー》
あはは……私はコンラッド様に似ていたのですか……夫婦は似ると言いますもんね。
ま、まぁ……嬉しいですのけれど。
《うん、そっくりー》
「コホン、ということで、私は皆さんについていきます」
「ふぅ……言ってしまったね……君がそういうと僕らは従わざるえないからね……」
「だな。まっ! 団長もこうなるってわかってたろ?」
「ああ――これでも、常識外れな我らが聖女様の夫だからね」
息の合ったコンラッド様とガイアス様のやり取りに、強張っていた団員の方々も程よくリラックスし、穏やかな表情となっている。
「んもう! コンラッド様まで、聖女と呼ばないで下さい!」
今、思うと私がこのラングドシャ王国に転生できたのは、運が良かったかも知れない。
文化や住まう民族の違いや、スキルやステータスといったどこかの異世界ファンタジーのような設定はあれど、どこか日本を思わせるような人当たりの良さが光る。
それに建物や服装から判断すると、中世ヨーロッパやその周辺諸国に近しいはずなのに、一夫多妻制を嫌う不思議な国王と、一途な母との間に生まれたのだから。
そう、まるで何かの意思が働いているような不思議な縁。
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