第37話 前世の知識を生かして
王城の広場にて。
――ブォン。
「ふぅ……着いたー」
胃の辺りがムカムカする。
転移の感覚は何度経験してもなれない。
なんというか乗り物酔いに近い感覚だ。
《ついたねー。けど、あるじー? だいじょうぶ? かおいろわるいよー?》
私の顔色が優れないようで、なぎは心配そうに顔を見上げてくる。
「う、うん……もう、大丈夫!」
私は酔いを覚ます為、その場で数回深呼吸をし、腕になぎを抱えたまま、ピリついた雰囲気を醸し出している騎士団の元へと駆け寄る。
そこでは全員がコンラッド様の前に隊列を組み、その象徴ともいえる腰に携えた白銀のサーベルを掲げていた。
けど、その表情はどこか硬い。
「「「王国の為に!」」」
「シャル――来てくれたんだ! あ、なぎも来てくれたんだね!」
私の気配に気が付いたようで、コンラッド様はすぐさま振り返り柔らかな表情を浮かべる。
それより、過剰にピリついていた騎士団全員の表情が少し明るくなっていく。
「おお! 我らが聖女様のご登場だな」
その後ろから人一倍大きな声を上げるのは、褐色の肌に印象的な男性。
彼の名は、ガイアス・クライド。
白銀の騎士団、副団長でラングドシャ王国に連なるクライド男爵家の嫡男。
レベル上げの為に私、コンラッド様、なぎと共に冒険した気心の知れた仲であり、コンラッド様の親友でもある。
また、私のことを聖女と呼んでくる人物の1人だ。
この王国では、私のことをスキル【光魔法】と【聖獣遣い】を習得していることから、聖女と呼ぶ方も少なくはない。
とはいえ、スキルだけではなくて、日本で住んでいた頃の知識をちょろっと出したのも原因なのかもしれないのですが。
私は異世界でコンラッド様という、心強い理解者を得たことで日本での知識を生かし、色々なことに挑戦した。
例えば、ステータスやスキルについて。
この世界でステータス・スキルといえば、優秀な親から、その子へと受け継がれるといった遺伝的要素の印象が強かったのだが。
私はそれに異議を唱えた。
これは、教育制度が平等ではないと嘆いていたコンラッド様の考えも影響していたのだろうと今になって思う。
まぁ、どこの世界に何百年も続いてきた慣習を否定する王女様がいるの? って感じなのですけども。
だが、当時の私は必死だった。
私達、人族のステータスには上限がなく、研鑽さえ積めば誰もが強くなることができると。
スキルに関しても、生来保有している物を極めると別のスキルが発現し、複数のスキルをある程度のレベルまで上げると、新たなスキルを習得可能だと言うことを。
もしかしたら、コンラッド様だけではなく、いつも明るく頑張っていたかずっちの姿が頭の片隅にあったのかもしれない。
いえ、やっぱり性格は違えど、推しの顔をした最愛の人が言ってたからでしょうか?
などと、言うとかずっちに怒られてしまいそうですね。
「推しと私を比べるんじゃない」とか「そこは私の影響と答えて欲しい」とか?
どちらにせよ、私はこれらを証明する為に、半年前の今頃、スキル【鑑定】を保有しているコンラッド様とガイアス様、白銀の騎士団の方々の手を借りた。
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