第7話 突然の別れと、転生
通勤電車の中。
――ブブッ。
スーツの内ポケットに入れていたスマホから、振動が伝わる。
留実は何気なく手に取り、画面を確認した。
「あ、かずっちじゃん」
通知画面には、親友の登録名が表示されている。
この呼び名は、高校時代からの物だ。
留実はいつからか、親友を和世という呼び名をから、親しみやすいかずっちと呼ぶようになっており、対する和世も留実のことをルーミーと呼んでいた。
留実は、突然きた親友からの連絡に嬉しくなり、フリック入力でパスワードを打ち込んでいき、画面を確認した。
(えーっと、なになに?)
その文字を目にした瞬間、頭が真っ白になり、思わず声を上げた。
「えっ――!?」
(どういうこと? な、なんで!?)
時が止まるというのは、こういう瞬間のことを言うのだろう。
周囲の音が聞こえなくなり、今までの色々な事が頭に浮かんでいた。
――すぅ……はぁ……すぅ……。
必死に呼吸を整えようとする。
だが、何も理解できないでいた。
いや、理解することを拒んでいたのだ。
そこには、親友のかずっちではなく、その母親からのメッセージがあった。
「留実ちゃん、元気にしていますか? 私たち家族は、和世と留実ちゃんが一緒に騒いでいた日を昨日のように感じています。ですが――」
そこからは、虫の知らせというやつだろうか、読まなくてもわかってしまった。
親友、加藤和世は亡くなったのだ。
呼吸もままならない中、一言だけ口にした。
「なんで……?」
その後の記憶は、とても朧げだった。
電車の中で膝から崩れ落ち、周囲の人から声を掛けられて駅員の声が聞こえて……そこから、気が付けば実家にいた。
あとから聞いたことだが、通勤途中、横断歩道を渡っていたところ信号無視をした車が突っ込んできて即死だったらしい。
そう、鈴木留実はかつての私。
ただ、親友を見送った私は、至極真っ当で幸せな人生を歩むことができた。
それはきっと身近な人が突然亡くなる経験をしたからこそのものだったと、今になって思う。
二十代では、自立したいが為に遠ざけていた家族とも、積極的にコミュニケーションを取るようになり、就職した会社で素敵な男性と出会った。そして恋をし愛を知り結婚。私のことを実の娘のように接してくれたかずっちの両親にも見届けてもらった。
三十代、四十代では子供も3人授かり、育児に仕事、節目で子供達の成長していく姿を目にしては、その度に自分と夫を労う日々。
満ち足りていたからこそ、四十代から、六十代まではあっという間に通り過ぎていった。
七十代、愛する子供達が成人し立派になった姿を目にして夫と2人で語らい合う日々。
八十八歳、私は眠るように息を引き取ったのだ。
愛する人とその家族に見送られて。
最後の記憶は、自分の手を握ってくれる家族のぬくもりと、霞んではっきりと見えなかったが、皆の笑顔と「ありがとう」という言葉。
これが大まかな私の前世の記憶。
今の私は、ラングドシャ王国の第一王女。
名をシャルル・ロア・ラングドシャという。
年齢は十八歳で、外見は父譲りの金髪碧眼をしており、スタイルは母譲りのメリハリボディでもある。
自分で言うものなんだが、かなりの美少女だと思う。
父はこの国、ラングドシャ王国の第十六代国王ダルマカス・ロア・ラングドシャであり、母はシャーロット・ロア・ラングドシャ。
父である国王の寵愛を一身に受ける正妻だ。
昔のことを思い出すなど、幼少期以外なかったというのに、何故か急に思い出した。
夜空に浮かぶ2つの月を見たのが原因なのでしょうか?
この世界で塞ぎ込み孤独を感じていた時のように。
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