第13話 色々あるけど、楽しんでいこー!

 ということで、スキル【寄生】を発動して触手を出してみた。



 ――ニュル。



 よ・ゆ・う! うん、余裕だ!


 一度触手を出したことで、スムーズに触手を出せるようになっている感じだ。


 これは自転車を漕ぐ感覚に似ているのかもね。


 出すまではなんの問題もないし、自然に行える。


 出た触手を伸ばしてみる。



 ――ニュルニュルルルル。



 伸びる伸びるぅぅぅー!


 ○○○○のピストルゥゥゥゥー!


 っていうのも想像してたけど、ちょっと手を伸ばす感覚とは少し違うんだよねー。


 例えると亀が甲羅から頭を出し入れする動きのような感じかな?


 独特のぬっ! ってやつ。


 体から出るのはともかく、そこから伸ばすと速度も遅いしね。


 てか、亀って可愛いよねー! 兎と亀の話とかも好きだし。何事も諦めず挑戦しないとだよね。


 ということで、どんどんチャレンジあるのみだー!


 私は伸び続けている触手に意識を向ける。



 ――ニュルニュルルルル。



 ほうほう、結構伸びるんだ。



 ――ニュル。



 あ、止まった。


 目測でしかないけど、大体、転生する前の私くらいの長さかな?


 って、ことは170cmくらいか。


 あ、そうそう! 実は私、転生する前は高身長だったりする。


 それもあってバスケットボール部に入部したんだけどね。


 いや、嘘です。初めに言った通り推しが所属していたからです。


 何度聞いても意味がわからないだって?

 チッ、チッ、チッ!


 全てはDon’tThink,Feelさ。


 まっ、他人から見たら意味のわからない理由でも、めっちゃ練習しまくり、推しパワーのおかげもあって地区大会優勝しちゃったりもした。


 しかも、ポジションはなんとスモールフォワード! 2次元の推しである加琉羅かるらルイ君と同じポジションだ。


 加琉羅ルイ君はねー、高身長&細マッチョ+エメラルドグリーンの切れ長の目に、銀髪サラサラヘアのイケメンなんだよー!


 あと、寡黙なのも私的にはポイント高かったりする。時代は一周回って情熱を内に秘めた寡黙キャラが流行るべきだよね!


 そういえば、私ってさ。


 高校デビュー推し熱語りオタクなのに、案外にモテたりもしてたんだよねー。


 まぁ、モテたっていっても、友達が多かったともいうかな……。


 えっ? それはモテてるって言わない?


 うん、そこはわかってますよー。


 ふと、周囲を見渡す。


《誰もいないよねー、当たり前だけどさ》


 こんな冗談を言うと、お母さんには馬鹿ウケたのにな。


 けど、お父さんってば、私がモテてる話を真に受けちゃって、高校卒業するまで送り迎えしてくれたんだよねー。


 まさか、まさかのルーミーまで送迎しちゃうんだから!


 お母さんも、大会や遠征がある度に嫌な顔1つせず、弁当とか作ってくれたんだよなー。


 色々あったけどさ、恵まれてたんだね、私。


 ルーミーは、今頃どうしているんだろう。


 先に就職決めてから、引っ越しちゃってからあんまり連絡できてなかったな。


 忙しそうだったから、無意識の内に遠慮しちゃってたんだろうねー。


 学生の頃は、そんな気遣いとかしなかったのに……。


 もう一度、会って話したいなー、しょーもないオタク話をさ。


 って、会えるわけないかー……私は死んじゃったし、ここ異世界だし? おしゃぶりだし?


 ま、でも、私が早く亡くなった分、ルーミーには幸せな人生を歩んで欲しいな!

 ちゃんと就職して素敵な旦那さんを見つけて、子宝にも恵まれちゃって、最後はその家族に見送られてって感じのやつ!


 さて、私もおしゃぶりとしてめいっぱい楽しむぞぉぉぉー!


《おー!》


 って、おしゃぶりとして、楽しむってなによ!


 私の脳裏には、このくだらない独り言を聞いて笑い転げる両親とルーミーの姿が浮かんだ。


《ふふっ! 楽しんでいこ♪》

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