百合と薔薇

「ギャアッ」

開店直後で客が入り切っていないバー・五臓六腐内に、首を切り落とされた猫の絶叫のような声が響き渡った。

声の主は従業員のギギくんである。

どうせ後で押し付けられるんだから、今のうちにVIPルームの清掃しに行こ🎶と思った矢先に、部屋にはも一人の従業員のロクリュとあの〝ホワイトルーム〟の女王と名高い艶花ナユがいたからだ。

上等なベルベットソファーで裸になって横たわり、ロクリュの背中には痛々しい鞭の後が見える。

どうやらイイコトをしていたらしい。

「な、なンでここにいるんですか」

「ナユちゃんがここでしたいって言うから」

「なんでェ……」

「いいじゃない。お金は払ってるんだから」

ね、とナユがロクリュに顔を近付けると、んちゅ。とやわやわとしたリップ音が響くと共に二人はキスをした。

混じりあった香水の香りが段々ギギくんの脳ミソを侵食して、ぐらんと重く感じるようになる。目の前にいるあの二人が悪魔に見えるくらいに。

「女王の御前で、あたしの裸も見れてるのに感謝も無し?教育がなってないわね」

「おれ寧ろ被害者じゃないかな」

「ナユちゃんが美しすぎて何も言えないんだよ。美女の裸が見たいと思ってるくせに、いざ見ても何も手出しできない男と同じだね」

「ふふ、無様」

くすくす、ふふふ。と笑い声が微かに響き、もうどうでも良くなったギギくんは、これ百合判定なのかなとほろりと涙を流した。

何故ならついこの前に、百合の間に立ち入ったという重罪を背負い、タイまで飛んでチンコをもぎ取られたからだ。

ぷるぷるとチワワのように震えだし、遂には

「オヨヨヨ………」

と泣き出してしまった。

あう、えう、と酸素不足かってぐらいに泣き出した。ナユとロクリュはそれを見てギョッとしたが、気にせず交合う事にした。

自分達のことをガラガラだと思ってるんだろうか。申し訳ないけどそんな事ない。

誰かたしけて……とギギくんが心の中で思っていると、VIPルームの重たい扉が開いた。

やって来たのは銀髪の髪を靡かせたアザフチである。

「ちわーッス!百合園ってココ?」

「アザフチさん帰ってーッ!ちんこ取られちゃうよーーッ!!」


※ギギくんのちんこ取られちゃうよ発言は、青木書房様に寄稿した【青木書房/vol.2精神的百合SFアンソロジー】内【あるいは新たな人類の一歩】読んでいただくと理解出来ます。

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