コヨリちゃんとアザフチ
「アザフチくーん!アザフチくんいますか〜〜〜〜〜!!!!」
「うるさいうるさい何何何何ホントに何」
会社の激狭トイレの一室でアザフチは仕事をサボって煙草を優雅に吸っていた。……のを、コヨリちゃんが豪快にぶち壊してきた。
トイレの扉を最初はコンコンだったのをドンドンに変えて、もしかしたら外す気なんじゃあないかしらと思い始め、アザフチは身を震わせた。
此処をハッテン場にするつもりなのか……!?自分の会社だからって好き勝手やりすぎるだろ!と、上司が自分のケツを狙ってる上にパワハラ・セクハラをしてきます。どうしたらいいですか?とY○hoo知恵袋に投稿しようとした。
けどY○hoo知恵袋にはロクな人間がいないので、どうせどシコリハメ太郎とか言うふざけたアンサーが飛び交うに決まってるな、とアザフチは勢い良くスマホを投げ捨てて足で踏んで壊した。もうコヨリちゃんへの恐怖心で正常でいられないのだ。
アザフチが何故、こんなにY○hoo知恵袋を毛嫌うのかというと、昔まだ自分が高校生の頃にコンドームをつけた後の処理を質問したところで、飲ませましょう!と返ってきたのでそれをそっくりそのままやってみると泣く程怒られた挙句別れたのだ。
ろくな思い出がない。(これに関してはアザフチが悪いようにも思えるのだが)
「クソ。これだったらいのちの電話に」
「アザフチくんったら〜〜〜〜!!!!」
「ア、なんか泣きそう。帰りたい」
このクソガキすぎる上司を殺したすぎる。でも田口を未亡人にするには申し訳ないし、なんだかんだクレカ丸々奪っても許してくれるコヨリちゃんを手放したくはない。
観念して出るしかないかもしれない。
嗚呼、こんな時に丁度タイミングよく小粋から電話がかかって来ないかな。と心の中で思っていたが、そういえばさっき自分でカチ割ったんだったわと自分自身を殴った。
「金払うから!アザフチくん金好きでしょ?ボクも好きなんだよね。これって相思相愛?」
「俺と相思相愛していいのは金だけです。帰って下さい。帰って」
「なんでそんなボクの事嫌うの?ちょっと自分の胸に手ぇ当てて聞いてみな?」
「どくどく言ってます。ドの音します」
「絶対音感持ち?」
コヨリちゃんは扉を叩くのに疲れたのか、手を下ろして煙草を吸い始めた。
今更ではあるがここのトイレは禁煙である。ヤニカス二人には其れが見えてないし見てない振りを続けて管理人のオバチャンに怒られ続けている。
「もうさ、いい加減出てきてよ。ボクの何が嫌なのさ」
「ハ!?この前作家の取材で訳分からん村に行けって言われてなんか人肉食べさせられてよく分からん神様崇めて、帰りたいって言ったら殺されそうになったからやり返して村人皆殺しにしてきたの忘れたンかお前ーーーーッッッ!!」
「取材行ってこいって言ったは言ったけどそんな感じだったの?あの時手赤かったのって血だったんだ。気づかなかったな」
いや絶対それより気が付くことあるだろ。とアザフチは咄嗟に思ったが声に出さないでいた。警察に突き出されても困るので。
「わかった、わかりました。聞くだけ。聞くだけ聞きます。耳だけ貸します」
「やっと決心着いた!遅ッ!」
「あーーーもう嫌になる前に早く」
「よし来た!あのさ、アザフチくん」
死なば諸共。今度また何処かに行けと言われたら小粋も道連れにしてやろう。
ハァハァと荒れる呼吸を正しながら、コヨリちゃんから発される言葉を待った。
早く殺せ!早く!刺せよ!と願いながら。
「えとね。たぐっちゃんがね、顔シューティングにアザフチくんの顔登録したいから写真撮らせて欲しいんだって」
「他所でやれ」
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