洗濯物とアザフチ

午後。外ではシトシトと雨が降っている。

今日は小粋の家で作業する事になっており、小粋は原稿を、アザフチは編集(隠れながらウマ娘)をしていた。

すると遠くの方でピーッと音が鳴るのを聞こえる。アザフチが来る前に洗濯機を回してたんだろうか。しかも雨の日に。


「ア、ちょっと片してきますね」

「雨の日に回すんじゃねえよ部屋がじっとりするだろうが」

「溜めてたんで」

「十分でやれよ」

「短すぎますって」


小粋は笑って脱衣所の方に向かっていった。あ、しまった。行かせる前に珈琲のおかわりを頼んでおけばよかったなと、アザフチは口に煙草を咥えながらぼんやりと思った。

すると、脱衣所の方から大きな声がした。

何やってんだと内心思いながら、どうせ大した事じゃないとアザフチは放置していた。が、一向に戻ってくる気配がなく、不安になって足を脱衣所の方に向けて歩き出した。

「何やってんだよ」

そこでは小粋が肩を震わせながら蹲っていた。何かを抱えているように見える。

ドン引きしながらソッと近付いてみると、何やら胸の方で服を抱えているようであった。

ぶんどるようにそれを取って広げてみる。と

「ワ……ァァ……」

「あ」

服が縮んでいた。

緑色のかわゆいトップスがアホほど縮んでいた。これは確か先日買ったから見てと言われたのが記憶に新しい。しかも、今度ダチ公と会う時に来てくんだいと満面の笑みで(聞いてもいないのに勝手に)教えてきたヤツだ。

服は愛情を持って一枚一枚丁寧にアイロンをかけ、時たまクリーニングに出すぐらいに、ファッションにプライドのあるアザフチはこんな馬鹿な事をした小粋を許せなかった。

小粋な馬鹿だけにっつってね。

「服に失礼なことするなこのド腐れ」

「ハヒ……」

「ショート丈超えてるだろこれ」

「ハヒヒ……」

小粋はみるみるうちに萎んでいく。正論という名の言葉の羅列で負うダメージほど大きいものはないのだ。

アザフチはふぅと一息ついて、また更にスっと息を吸って


「原稿終わったらゾゾ見てやるからはよやれ゛!!!!」

「ハ゛イ!!!!!!!!」


両者共々鼓膜を破りかねない大声で叫んだ。

これが新生飴と鞭・改というヤツである。

しかし結局、アザフチがそんな事言うなんてと宇宙猫状態になった小粋に原稿なんてものを出来るわけが無かった。

それを見たアザフチが熱々の珈琲を小粋の頭にかけるのは、また別の話である。

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