第13話 会えて良かった。

 はい! 

 へっぽこ介護士の月猫です。


 少し頑固で意志の強い、金さん。

 施設に入所したばかりで慣れない生活ではありますが、自分の気持ちはハッキリと職員に言える方です。えぇ、遠慮なく言えちゃう方です(笑)


 初日は、月猫もギブ気味でした。頻繁にコールが鳴って、えらいこっちゃと思いましたね。ところが、数日するとお互いに慣れてきます。すると、呼吸が合って来るので楽しい会話が増えます。


 そして金さんは、私のこと「あんた、気持ちのいい人だな」と褒めてくれます。介護技術はへっぽこですが、私の言葉のかけ方を褒めてくれるんです。


 そんな金さんですが、時に気持ちが落ちるんでしょうね。先日弱音を吐いていました。

「あ~、なしてまだ生きてるんだがな。もう、死んでもいいのにな」


 介護の仕事をしてから、こんな言葉をよく聞きます。

 目の前でこう言われると、なんて言葉をかけたらいいものか……


「金さん、私は金さんに会えて嬉しいよ。だから生きてくれていて良かった。まだまだ元気でいて下さい」

 そう言った私に、金さんは笑顔で

「あぁ。私もあんださ会えて良かった」

 と返してくれました。


 介護の仕事ってね、つい、何もできない高齢者のお世話をしてあげている気になるんだけど、こんな感じでね介護士は『でっかい愛』をもらってるんです。


 金さんに「あんだのごと、好きだ」と言われて、私の心がどれだけ救われたか。


 肉体的にはキツイ仕事。

 泣きたくなるし、辞めたくなるし、でもね、おじいちゃまやおばあちゃまがくれる愛情に癒されます。


 そんな介護士さん、結構いるんじゃないかな?

 



 


 




 

 

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