クッキーと拳銃④ / 分割Ver.

エムラッヒの首相と秘書が話す。

「テロは今どんな状態だ?」

 「初めのミサイルで、議事堂や庁舎が破壊され、現在も30人程度のテロリストが戦車などを使って街を破壊しています」

 「民間人への被害は?」

 「最初の爆発でいくらか巻き込まれましたが、早急に地下鉄への避難を始めたので、戦車の砲撃からは逃れられています」

 「陸軍と警察は?」

 「テロ開始後、3分以内に鎮圧を目指して活動を開始しましたが、15分経過した今でも、戦力と士気不足で全く対応できていません」

 「そうかそうか、、、俺の、避難を促すVTRは流れてっか?」

 「街のアラート音が大きいので被害地域では聞いている人はいませんが、他地域での放送では見ている人が多いでしょう」

 「そうかそうか、、、」




「オルターちゃん!あれが戦車だ!」

「も、もっとゆっくりはしらないと見られない!」

「何言ってんだ!あぶねっ!!これ以上ゆっくりは走れない!」

「あ!見えた!かっっけぇぇぇ!」

エトウは少女を抱きかかえ、片手で拳銃を使いテロリストの攻撃を避けながら猛ダッシュで駅へ向かう。エトウの戦闘スキルは衰えていなかった。

 「見えた?あと少しだ!飛ばすぞ?」

 「あ~~!ゆ、揺れるぅぅぅぅぅ!!」

エトウと少女はついに、階段を駆け下り地下鉄へ着いた。避難所となっている地下鉄には、大勢の人々がいる。頭をかかえて絶望に瀕したり、抱きしめあって生きていることに感謝したり、惨憺としていて地獄絵図だ。スーツ、部屋着、パジャマ、下着姿の人もいる。ある日突然、日常は崩れさり、もう二度と、かつての平穏には戻れない。この苦しみを生き残った者が、新たな平穏を作る。それ以外の他に道はない。生き残らなくてはならないのだ。

 「どう?オルターちゃん!パパとママは居る?」

 「ううん、ここには居ないかなぁ?」

 「え?どうしてわかるの?いっぱい人が居るよ、この中に居るって!」

「パパとママ、今はお家にいるもん」

「お家?でもテロが起こったから避難しているんじゃない?」

「お家、この辺じゃないもん。もっと草がいっぱいで、、、」

「冗談言っている場合じゃないよ、お家の人も心配しているよ?すみません、この子の親は知りませんか?」

エトウは隣の男性に声をかけた。

「え?どの子ですか?」

「この子です!あ、、、あれ?どこ行った?」

「え、はぐれちゃいました?探しましょうか?」

「ありがとうございます、お面をかぶった女の子です。もともと迷子の子だったんですけど、訳あって、、、」

エトウは探し始めた。人ごみの中をかき分けて、探した。

「オルターちゃん?どこー?」

「なにー?ここだよー!」

すぐ後ろにオルターちゃんがいた。

「あれ?オルターちゃん?」

「ずっと、すぐうしろにいたのに、どこにいくのかと思ったよ?」

「あ、えぇ?そうだったの?それより、いい加減にお面を取ろう?」

隣に居た軍服姿の奴に急に声をかけられ、知らない少女を探すのを手伝った男性が声をかける。

 「居ましたか?お面の女の子?」

 「はい。本当にありがとうございます!この子なんですが、顔に見覚えとかありませんか?」

 エトウはそういって、オルターちゃんの顔に手を伸ばして、お面をはがした。そして、その顔を覗き込んで、、、

 「え!?これ、私だ!」

 「あの、、、」

 「これ、私の小さい頃の顔そっくり!」

 「あの、、、あなたは何が見えているんですか?僕にはどこに少女がいるのか分からないんですけど?」

 「え?―――」

 エトウは驚いた顔のまま止まっている。だが状況は、夢から覚める時のように事実へ戻される

「軍人さん!すっごくたのしかった!パパとママにも伝えるね!軍人さん、戦車をみるおねがい、かなえてくれてありがとう!もうひとつおねがい、この街の人を守ってあげてね!軍人さん!」

エトウは戦地から帰ったときから、戦後のPTSDを患い、時には幻覚が見える時があった。人間の防衛本能が精神と肉体に影響を及ぼした結果である。

「私の幼い頃だったのか、、、。ありがとう、私も戦車見れて楽しかったよ」

オルターちゃんは、次の瞬きで消えるような気がした。だから、目を閉じないようにする。自分自身の好きな生き方を思い出してくれた、少女に感謝したかった。あるいは、この状態に、この状態を生み出した自分自身の幻覚に感謝したかった。自然と涙があふれ、目を閉じて涙が零れると、少女は消えていた。

「本当に、ありがとう、、、この街の人を守るよ、、、」

「誰かと話しているんですか?」

「あぁ、自分自身と話していたんだ。さて、と」

 エトウは小銃を肩から降ろして、じっくりと見つめて握りしめ、先に駆け下りた階段へ向かった。逃げる人々を避けて、階段を駆け上がり、銃を構えて飛び出す。にやける自分を誇りに感じてテロへ立ち向かうのであった。




 「ツェビィ総合商社は、ルゼナ運輸の株を完全に手放すそうです。表向きには、銀行事業の方を本格化させていくのだとか」

 「確かにな、FOEツェビィ銀行は安定してきた。だが、このタイミングでルゼナ運輸の株を売却するのは、この国にとって、あまりよくない流れだな。我が国の運輸業はルゼナ一強ではないか?」

 「広告業に手を出すとか。実はその資金繰りかもしれません」

 「広告業?EJ社か?」

 「EJ社です」

 「そうか、、、。火山と、鉄鉱石しかない我が国で、ツェビィの働きは大きい。確かに、文化産業に力を入れて、数少ない観光産業を強化するためにも、大きな資本を広告会社につぎ込むのは良い。だが、ルゼナ運輸を手放さなくてはならないのかね?」

 コンコンとドアが叩かれ、一人の男が入ってくる。

 「失礼します。先ほどから行われているテロの話ですが、、、」

 「その話はもうよい。テロが起こることは知っていた、だからテロの日に合わせてポダートとの内密な交渉をしに来た。知っているだろう?」

 「テロが想定よりも速いスピードで、、、」

 「それがどうした?『テロのスピードが想定より速く、国民の被害が甚大です』か?知ったこっちゃない。2年も続いた悪しき慣習を街ごと消し飛ばすためだ。犠牲は仕方ないだろう」

 「テロが、鎮圧されています」

 「なぁにィ?どうしてそうなった!?」

 「軍服を着た女性が、テロを1人で鎮圧しています」

 「はぁ?軍はどうなっている?」

 「陸軍と警察は想定通りの戦力で、テロに全く影響を与えていませんが、、、」

 「それもそれで残念だが、それよりも、その軍服の女はなんだ?」

 「分かりません、、、今、防犯カメラの画像で調査中です」

 「うーん、テロリスト達の装備は、こちらで良いものを提供したはずだが?」

 「テロリストは25人が負傷、全体の8割です。」

 「はぇぇー!もう終わってしまうではないか!それでは困る。街が壊されて作り変えることで新たな街になるのだ!新たな都市と国ができるのだ!」

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