F4FF-1-6:キャドルとフォーガス
領主会議は2度目だけれどもテロの大騒ぎでホテルの窓から見える会場は絶え間なく緊急車両や警備が行き来している。開催初日早々にテロが起きてしまい警備の都合でボクたち若手は帰還らしい。せっかくの機会に遊びに行きたかったんだけど、荷物を整理しながらポケットに入っていたビーズを見つめる。
「何それ。高価そうじゃん。」
ぬぅっと背後から真っ黒に塗られた同じ顔が並ぶ。正確には口元の牙のようなピアスが印象的だ。
「え?お前こっちについてきたのか?」
「領主会議がどういったものか気になってね。」
金髪の髪と揃いの黒い羽織で、真っ白な顔と黒塗りに牙の生えた同じ顔の双子は鏡合わせのように顔を見合わせる。白い顔の眉間に皺をよせ怪訝な様子で片割れを睨む。
「はいはい。お兄様!これでいいんだろ?」
パッと目を瞬くと、肌の色が黒から白に変わった。
「また、デバイスタトゥーの範囲を広げたのかい?」
「ああ。便利だよ。」
「なんに便利なんだか考えたくないよ。」
背後から先ほどの緊急車の音が俄かに響くがとてもじゃないが見れない。元々、肌に画像を表示させるデバイスタトゥーで肌の色を変えるのはタトゥーのデザインを好きに変えられるとボクたち第四の若者中心に人気がある。本来は所属コードを表示させたり、鉱山の労働者が坑内での目標がわりにすることが多い。タトゥーで所属管理しているような領地からは度々、議論にされているようだが岩石地帯の第四としてはデバイスタトゥーは生命線の側面もあるので慎重にして欲しいのだが双子の弟は止まる気配がない。背後から聞こえる雑踏の音が耳に突き刺さる。
「それ。どうした?」
「他の領地の人から貰ったんだ。」
薄い水色の瞳を近づけて覗き込む。
「へぇー。女?」
「いやいや!ちがうよ。」
チッ。と舌打ちをしてヘアビーズを毛先に付ける。「付けてた方が喜ぶんじゃね?」意外に器用に髪の毛を一房編み込む。
「面倒見はいいんだよな。」ぽそりと呟くと「慣れちまっただけ。お前はそーゆー方が似合ってるよ。」とソワソワと欠けた耳を撫でる。長い髪の毛を耳の上だけ掻き上げる様に編み込み見せ付ける様にしている欠けた耳を見つめながら双子であることから避けるように見た目を変えたがる弟と、唯一の肉親の何よりもの証しの同じ顔がとてつもなく遠くにいるようで寂しくなる。
「さぁ。帰るぞ。」
「へぇ会議無くなった?」
「いや。父上達は事後処理でまだ少し残るけど僕たちは帰るんだ。詳しくは戻ったら話すよ。」
鏡越しにフォーガスが冷たい瞳をゆっくり瞬いて横に目を逸らす。考えごとをしている時の癖だ。
「仲間も来てるんだろ?全員帰らせるぞ。」
ピクリと一瞬、唇の牙の様なピアスが動いてニヤリと口角が上がる。
「セキュリティで引っ掛かるぞ。出入りこそチェック厳しいだろ。」
「おい!やっぱりお前がやったのか!!」
「今更、輸血だコールドスリープユニットだと騒いでるが俺たちが何度も言っても聞く耳無かったのに、いざ自分の身に降りかかるとコレだよ。」
ジッと窓の外を見つめたまま怒りを露わにするが、この危うい弟をどうするべきか逡巡する。
「まずはお前は俺と一緒に帰ろう。双子だからセキュリティで混在したとでもなんとでもなる。」
「仲間は置いておけとでも?」
「そうじゃない。警備をスルーしてきたんだ。抜け道があるんだろ?そこから帰らせればいい。」
しどろもどろになりながら説得をする。これ以上は危ない。すでに危険なのだ。
ハッと唾棄するように、ゆっくりと長いまつ毛を瞬かせる。
ユラリユラリ……
肌の色がゆらめいたかと思うと光学迷彩で周囲の背景にドロリと溶け込んでしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます