第2話
結局、貢が性別についてはっきりと答えることはなかった。まあ、ジェンダーレスを推奨しているこの時代だ、わざわざ言及する必要もないのかもしれない。制服に関しても、どうやらジェンダーレス制服なるものが導入され始めてもいるらしいし(僕の通う学校ではまだ導入されていないけれど)、貢が男女両方の制服を着ているのも、別段おかしな話ではないのかもしれない。
しかしながら。社会がそう変化しているとはいえ、やはり性別というものは存在している。動物というカテゴリの中に存在している限り、人間から性別が消え去ることなど決してないろう。個人の思想がどうであれ、身体の仕組み上、性別の差は絶対にあるのだ。
そう。人間である限り。
「未錐、久しぶりに河川敷に寄って行かないか? どうせ帰っても暇だろ?」
「どうせ帰っても暇だし久しぶりに寄ってもいいけれど、不思議だな、暇である事実を他人に決めつけられると少し悲しくなってくる。まあ、僕と同じ時間を共有しようとしているんだ、貢、お前もどうせ暇なんだろ」
「この後、絶対に外せない用事がある。だから、超忙しい」
「だったらそっちを優先しろよ。なんで、わざわざ僕と河川敷に行こうとしているんだ。僕とあそこに寄るなんて、優先度最低レベルだろう。いつでも行けるじゃないか」
「どうしていつでも行けるんだ? 未錐はこの数秒後、絶対に死なない自信でもあるのか? 突然車がぶつかってきたり、突発的な病気で心臓が停止したり、空から巨大な星が落ちてきたり。それらが起こらないという保証を、お前は出来るのか?」
そう言われると、即座に首を縦に振るのは難しいが。
「そんなこと言い出したらきりがないだろ。次の瞬間に死んでるかもしれない、なんてことを考えてたら、一瞬たりとも気が抜けないじゃないか」
「そうだとも。だから、自分のしたいことを真っ先にやっていく必要がある。今の俺の場合、未錐と河川敷に行ってノスタルジックに浸るのがそれだな」
「……そうか。お前の外せない用事とやらが何かは知らないけれど、それよりも僕と一緒にいることを大切に思ってくれていることに素直に感謝するよ。よし、じゃあ僕もやりたいことをやるとしよう。貢、結婚て何歳から出来るんだっけ?」
僕の真っ先の優先事項。僕と貢の繋がりを更に強固にすること。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます