レギュラ『イ』レギュラ
スライム系おじ
人形劇的ノスタルジック
第1話
人生とは、時に異常で、変則的である。
これまでこうであったものが突然変異して姿を変えたり、あーなるであろうものがそうなってしまったりと、人間の予測や経験などを超越した事象は、いかなる時も起こり得るのだ。
そういった事実にぶつかって、人は追求してきた。その原因と根拠を、何処までも突き詰めて解明してきたのである。
しかしながら。それらが全てを解明できたとは、到底言えるはずもないだろう。
だから人は、解明できなかった不可思議なものに、取り繕ったかの如く理由をつけた。妖怪だったり幽霊だったり。はたまた、宇宙人だったりユーマだったり。
まあ、それがこの僕、
僕は至って正常で品行方正な男子高校生なのである。そりゃあ、思春期特有のものは持ち合わせているけれど、それも人として至って通常運転と言えるだろう。
もし、上記の事柄が何か関係があるのだとしたらそれはきっと、僕の幼いころからの友人である、
奴との交友関係はもう十年を超えているけれど、それでも未だに不明瞭な点がある。どれだけ凝視しても、どれだけスカートをめくり下着の中を覗こうとしても、まるで分からないのだ(まあ、後者はそもそも成功していないが)。
褐色の肌はきめ細かく、身体はアスリートのように引き締まっている。見せる笑顔はいたずらっ子のようで、元気一杯な少年を想起させる。短い黒髪と、天真爛漫の語が良く似合う人物だ。
「どうしたどうした、未錐? そんなに俺のことを見つめて、好きになったのか? いやぁ、しょうがないな。未錐なら俺も、まんざらではないぞ」
「いや、まあ、普通にお前のことは好きではあるんだが。なあ、貢。何度も聞いていると思うけれど、お前は一体、何者なんだ?」
「おいおい。幼馴染の俺にひどい言い草だな。俺が何者かだなんて、お前が知らなかったら誰が知ってるって言うんだよ。俺以上に、未錐の方が知っているだろ? 一緒にお風呂に入っ……てはいないけど、寝たりはしたじゃん」
「そうだよな。やっぱり、一緒にお風呂には入っていないんだ。よし、貢。今日は一緒にお風呂に入ろう。幼馴染同士、裸の付き合いをしようぜ」
「俺とお前が恋人同士になって、色々の後、裸を見せ合うのは分かるけど、まさかのいきなり裸を見せろってこと? いくら未錐の頼みとはいえ、さすがに引かざるを得ないんだが」
「じゃあ、分かった。確認したいことがあるんだ、その学生ズボンと下に履いているであろうパンツを脱いでくれないか?」
「引き過ぎて地球を一周してしまいそうな勢いだが? どうした、発情期か? 発情することを悪いとは思わないけど、少しは隠した方がいいぞ。あ、もしかして、俺の身体だけが目当てなのか!?」
「その通りだ!」
「はっきり言いやがった!?」
そう。高校三年の春を迎えて、いつも側にいてくれた貢に対しての違和感が、何故か今更になって異常であると気が付いた。
いや別に、そういう趣味だとか思考だとかと言うのであれば、僕としては全然受けいれるつもりなのだけれど、しかしながら、もし本当にそうなのだとしたら、何故これまで一緒にいた僕が知らずにいるのだろうか。
僕以外の学校に所属している人は、皆全員、貢の異様さを歯牙にもかけていないのだ。
日によって男子の制服だったり女子の制服だったりしている貢を、誰も不思議に思っていないのである。
「なあ、貢。単刀直入に聞く。お前は、男なのか、女なのか?」
問われた貢は。放課後の教室の中で無邪気な笑顔を見せた。
そして奴は、僕に言った。
「未錐は、どっちが嬉しい?」
正直なところ。男の娘もまあ、うん、といった感じなので。
どっちも嬉しい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます