第24話 かつての禍根と再戦を
セクレトは、目の前の『黒』をじっと見る。
その魔法構造を、読み解こうとする。
それが魔法である以上、解析さえ成功すれば反魔法で消し去ることも可能なはずだ。
だが、しかし。
「チッ……なんだ、この構造は……」
読みきれない。
あまりに複雑怪奇で、見ただけで全て読み取るのは不可能と判断。
セクレトは、ゆっくりと『黒』へと近づいていく。
「すぅ……はぁ……」
深呼吸一つ。
覚悟を決めて、『黒』へと手を伸ばす。
触れることで直接その魔力を感じ取れば、より詳細な解析が可能となるから。
セクレトの手が、『黒』に触れて。
セクレトは、死んだ。
「……っ!? っ、はぁ……はぁ……!」
『奪死奪生』によって生き返ったセクレトは、大きく息を吐いてドッと汗を流した。
「触れるだけで、死ぬのかよ……」
魔王死亡時、セクレトは『黒』に接触した部分全てを消滅させられた。
それでも、その瞬間に命を失うようなことはなかった。
やはり、あの時の魔法は魔王によって抑えられたものだったのかもしれない。
「つまりは、これが本来の形ってわけか……?」
予測を口にしながら、セクレトは顎に伝ってきた汗を手で拭う。
それから
「……ひひっ」
笑った。
少なくとも、国の危機。
もしかしたら、世界の危機。
そして何より、家族の危機。
そんな状況にも関わらず、笑わずにはいられなかった。
恐怖に引き攣った笑みではない。
喜びと、闘争心に満ちた笑みである。
「ご機嫌麗しゅう、魔王陛下」
恭しく、『黒』に向けて頭を下げる。
そして、膨張し続けるそれを見上げた。
「嗚呼。貴女は相変わらず、本当に……」
セクレト・エネーヴは、かつて天才と呼ばれた魔法師である。
自ら魔法を使えなくなった今とて、その魔法理論は頭の中に全て残っている。
否。
魔法を使えなくなってからも、研鑽を欠かしたことはなかった。
その魔法理論は、今も進化を続けている。
それは新たに出来た家族に教えるためでもあったが、しかし。
セクレトの中に常に在り続けたのは、かつて見た忌まわしき魔法の記憶だ。
一瞬、垣間見ただけ。
けれど、頭から離れたことはない。
あの、とんでもなく危険で。
とんでもなく、禍々しくて。
それから。
「美しい」
自分の想像を何段階も超え、考えた者の正気と疑うような複雑さ。
そこに、セクレトは確かに美しさを感じていた。
「感謝致しますよ、魔王陛下」
かつて為す術なく蹂躙されるしかなかった魔法に、自分はどこまで近づけているのか。
考えることがないと言えば、嘘になる。
それどころか、毎日毎時毎秒のように考えてすらいる。
「まさか、再戦の機会をくれるたぁよぉ……!」
ゆえに、セクレトは笑うのである。
笑って、セクレトは『黒』に触れた。
笑って、セクレトは死んだ。
問題はない。
ほんの少しではあるが、死ぬ直前に読み取れた。
後は、全て読み解けるまで。
繰り返す、だけだ。
触れる、読む、死ぬ。
触れる、読む、死ぬ。
触れる、読む、死ぬ。
触れる読む死ぬ。触れる読む死ぬ。触れる読む死ぬ。触れる読む死ぬ。
触れる読む死ぬ。触れる読む死ぬ。触れる読む死ぬ。触れる読む死ぬ。
触れる読む死ぬ。触れる読む死ぬ。触れる読む死ぬ。触れる読む死ぬ。
触れる読む死ぬ。触れる読む死ぬ。触れる読む死ぬ。触れる読む死ぬ。
触読死。触読死。触読死。触読死。触読死。触読死。触読死。触読死。触読死。
触読死。触読死。触読死。触読死。触読死。触読死。触読死。触読死。触読死。
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触れて
読んで
死ぬ
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