第7話 親に認められる



映画が終わった。


その後もずっと気にしてたけど尾行はいない。

もちろん委員長の不純異性交遊が見られた様子は無いということである。


(あの女子なんで俺たちの方を見てたんだ?)


そう考えていると白石が話しかけてきた。


「来夢くん。今日はありがとう」

「え、うん。俺も面白かったよ。ゾンビが出てきてビックリした」

「ゾンビ出てないよ、途中から寝てたよね?」

「ごめん、つい、ね。もしあれならまた今度埋め合わせするよ」

「ほんとに?」


俺は頷いた。


「委員長、帰り道気をつけてね。不純異性交遊してたもんね?」

「大丈夫だよ。心配してくれてありがとうね、私そういう来夢くんの優しいところ好き」


そう言って帰っていった委員長。


「俺達も帰ろっかスイちゃん」

「はい」


家に帰ってきた。


玄関の扉を開けようとしたら……


「ん?鍵開いてるなこれ」


普段かかっているはずの鍵が空いてる。


扉を開けるとすんなり開いた。


もちろん俺は鍵を閉めて家を出ていくので、俺よりも前に鍵を開けた人間がいるということだ。


「父さんか母さんか」


そう思いながら家の中に入るとリビングに両親がいた。

で、リビングに入った俺と目が合った。


「来夢、お前この家に誰か上げたのか?」


「クラスの委員長を上げた、くらいかな」


そう言うと母さんはスっと手を突き出してきた。


親指と人差し指でなにかを摘むように持っていた。


目を凝らしてみるとそれは……髪の毛。


「この髪の長さ、女の子よね?」


「青い髪はスイちゃんの髪だ、これ」


そのとき、スイちゃんが姿を見せた。


「呼びましたか?」


両親の目がスイちゃんに向いた。


「来夢、その子は?」

「ちょっと、いろいろあって」

「ひょっとして彼女なのか?」


そう聞いてくるのは父さんだった。


「いえいえ、義父サマ」


スイちゃんが俺の手を握ってきた。


「この方は私の夫ですよ」


ちゅっ。


俺の頬にキスしてきた。


一瞬の静寂。


それから両親は声を合わせて……


「「ほげぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!」」


叫んだ。


しばらく両親は動揺していたが、父さんは親指を立てた。


「お前が選んだ子なら父さんはそれでいいと思う。かわいいしなっ!羨ましすぎるぞ来夢」


パーン!


母さんに叩かれていた。

それから母さんは聞いていた。


「スイちゃん?もしかしてキッチンにあった洗い物をしてくれたのも、洗濯をしてくれたのも全部あなた?」


「そうですが、ご迷惑だったでしょうか?」


母さんは頭を下げた。


「ありがとうございました。来夢をよろしくお願いします」


スイちゃんも頭を下げた。


「いえいえ、こちらこそよろしくお願いします。義母サマ」


「いえいえ、こんなにできるお嬢さんが息子のお嫁さんになってくれるなんて……」


「こんなに、素晴らしい方のお嫁さんになれるなんて、私こそ光栄でございます」


2人は頭のさげあいをしていた。


話を切り上げたのはスイちゃんだった。


「そうだ。お風呂をそろそろ洗いましょうか?」

「洗ってくれるの?じゃあお願いしようかしら」

「喜んで」


ニコッと笑ってスイちゃんはお風呂を洗いに行った。


父さんは立ち上がって俺の肩に手を置いてきた。


「あんなにいい子なかなかおらんぞ。捨てられないようにしろよ、来夢。応援してるぞ」

「分かってるよ父さん。俺絶対に捨てられないようにするよ。だから手伝ってくるよ、父さん」


俺もスイちゃんの後を追いかけることにした。


「スイちゃん、手伝うよ」

「え?手伝ってくれるのですか?」

「もちろんだよ」


俺は風呂洗いを手伝うことにした。


2人でやったら倍くらい早く終わった。

そしてお湯を貼る。


「ふぅ、これで終わりだな」


そのとき、外から母さんの声が聞こえた。


「スイちゃん、家に帰らなくていいの?」

「後で帰るので大丈夫ですよ?」

「そう。あんまり遅くならないようにね」


それから母さんは俺に話を振ってきた。


「そろそろお湯はりも終わるし来夢はそのままお風呂入っちゃいなさい。来夢はいつも入浴が遅いからね。たまには早めに入っちゃいなさい」

「分かった」


そう答えるとスイちゃんが俺の服に手をかけ始めた。


「お脱がせしますね」

「え?」

「ご主人様の体を洗うのも私の仕事ですので」


俺の服を脱がせたスイちゃん。

そのあと自分も服を脱ぎ始める。


「えーっと、スイちゃんまで脱ぐ必要ないのでは?」

「メイドのルールとして、ご主人様の体は自分の体で洗えというものがございます。まずは自分の体を清めてから来夢様の体を洗わせていただきます」


(スイちゃぁぁん……そこまでしてくれるのぉ?)


ここは天国なのだろうか?


椅子に座ると後ろからスイちゃんが体を洗ってくれる。


「男の人の背中っておっきぃですよね」

「そうかな?俺なんかは細いと思うけど」

「そんなことありませんよ、来夢様もおっきいですよ」


ヌルヌル。


スイちゃんは自分の体に石鹸を付けて泡立ててから俺の背中を洗ってくれる。


「ゴクリ……」


「ご主人様……?」


俺は顔を横に振った。


「こんなときに何を考えてるんだ俺はスイちゃんは真面目に洗ってくれてるだけっていうのに」


ビンビン。


く、くやちぃよ。


体は正直だもん。


スイちゃんも察したようだった。


「ご主人様。お体を洗えましたらそちらも行いましょうか?メイドの体で良ければいくらでもいたしますよ」


「スイちゃん、いいの?」


「もちろんですよご主人様♡」


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