第6話 誰もが羨む良妻
翌日。
俺は体を揺すられたりすることなく起きた。
なぜ起きたのかは直ぐに分かることになった。
「とても、いいにおいがする」
布団からは直ぐに出ることができた。
俺は服を着替えるのも忘れて、匂いに釣られて階下に向かっていった。
キッチンに向かうとそこには料理をするスイちゃんの姿!
「スイちゃん……」
「おはようございます♡朝食ができておりますよ」
机の上を見ると、ハンバーグが置かれてあった。
(朝からヘビーだな……。しかしスイちゃんのハンバーグなら300グラムくらいはいけるか)
席に座ってハンバーグを食べた。
パクっ。
「あー、うまい……」
言葉はいらなかった。
俺は無心で朝食を食べた。
朝食を食べたのは数年ぶりのことだった。
ご飯が終わるとスイちゃんに服を着せてもらっていた。
「よし、これで大丈夫。あとは寝癖を取りましょうか」
シュッシュ。
寝癖を直してくれるスイちゃん。
俺はまた涙を流してしまった。
家庭的過ぎる……俺の家に小さな天使様がいるよぉ。
俺の手を取ってくるスイちゃん。
「そろそろ学園に行きましょう。遅れてしまいますよ」
いつのまにかスイちゃんも学園の制服に着替えていた。
俺たちは学園に向かうことになった。
◇
教室に入るとやはり視線が向けられた。
「また違う女の子連れてやがる」
「今日で3人目か?」
「胸はそこそこだが、なんだあの溢れ出る母性は」
男子たちがめっちゃ羨ましいみたいな目で見てくる。
俺は席に向かった。
席に座ると田中が走ってやってきた。
「ほんとにどうしちまったんだ?来夢。寝癖まで直しちまって、制服もアイロンかけてるよな?」
「田中。聞いて驚けウチに天使が降臨したんだ」
「降臨術式を教えろぉぉぉぉぉ!!!」
「俺にもわからん。気付いたら降臨していたからな」
スイちゃんは「?」みたいな顔をしていた。
無自覚天使なのか。
最高すぎるな。
「てかお前キャラ変わったな?もっと、暗くて周り全員馬鹿ですみたいな喋り方してたのに」
「俺は天使ちゃんにキャラを変えられてしまった」
「天使ちゃん、そんなにすごいのかよ。くっ」
そのとき、チャイムが鳴った。
田中は席に戻って行った。
昼休みになった。
「スイちゃん、ごはん食べよ」
「食べさせてさしあげますよ」
俺は椅子をスイちゃんの机に移動させた。
今度は白石委員長がやってきた。
「また、違う女の子連れてる」
「委員長。聞いてくれ」
「また言い訳?」
「俺は今から不純異性交遊をしたいと思う」
あんぐり口を開けてた。
「え?今なんて?」
「認めるよ。俺は今から不純異性交遊をする」
相変わらずスイちゃんは「?」っていう顔をしていた。
「スイちゃん、食べさせてお腹減った」
「はい。召し上がれ」
スプーンでご飯をすくって俺の口に運んでくれるスイちゃん。
ぱくっ。
「あうぅぅぅ……うまい……」
「それはよかったです♡」
白石が会話に入り込んでくる。
「えっと、来夢くん。この子とはどういう、関係?」
関係か……そうだな。ここは白黒はっきり付けよう。
俺はこの子を自分のものにしたいと思う。
俺はスイちゃんの顔を見て言った。
「スイちゃん頼む。結婚を前提に俺と付き合ってくれ。必ず君を幸せにしてみせる」
ポッと頬を赤らめたスイちゃん。
「不束者ですが、よろしくお願いします」
委員長に目をやった。
「紹介するよ委員長。俺の彼女……いや、もう、俺の妻だな。名前はスイちゃん」
ポカーンと口を開けてた。
委員長の目を見て言った。
「これでもう、不純じゃない。純愛異性交遊と呼んでくれ」
◇
放課後。
いつものように爆速で帰ろうとしてると、俺のスピードに合わせて委員長もやってきた。
「どこいくの?」
「帰るんだよ。これからスイちゃんと純愛異性交遊するって言ってるだろ」
「その先はまだだめだよ」
「なんで?」
そう聞くと委員長はカバンからとある物を取り出した。
なにかの紙だった。
「ここに映画のチケットがあるの。一緒に行かない?」
「委員長、妻がいる男を不倫に誘うのか?見損なったぞ」
「お願い。私と見に行って欲しい」
「なにが目的なんだ?」
そう聞くと委員長はめっちゃ恥ずかしそうにしてからこう呟いた。
「私と……不純異性交遊してくださぃ……」
「なるほど委員長も不純異性交遊がしたかったんだな」
スイちゃんに目をやった。
スイちゃんはニコッと笑っていた。
「私は構いませんよ」
「委員長、行こうか」
俺は委員長を連れて教室を出ていくことにした。
そのとき……
(ん?)
クラス内カースト上位グループの女子に見られているような気がした。
でも、気のせいだろう。
俺みたいな陰キャに用があるようにも思えないし。
電車に乗ってから俺は念の為周りに視線をやっていた。
(さっきの女子たちがいる様子は見えないな)
あいつらが委員長の不純異性交遊をカメラで撮影してるかもしれないし、その辺も考えて警戒していたんだけど、そんなことはないみたいだ。
ということは、尾行はないと考えていいかな?
そのあと映画館まで俺は警戒を続けていたが、やはり特に尾行はなかった。
「ところで委員長その映画のチケットどうしたの?」
「もらったものだよ」
「ふーん、そんな漫画みたいなことあるんだな」
「ぎくっ」
「ぎくっ?」
「ほんとは来夢くんと見たくて買いました」
「ふーんなんで俺?」
「私ずーっと前に来夢くんに助けて貰ったことあるからその時のお礼も兼ねて」
「ふーん(なんにも覚えてないけど)。俺スプラッター見たい」
「そんな趣味だったの?!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます