第4話 ごめん、委員長


ほむらの剣は適当なカバーをかけさせてパッと見では真剣と分からないようにしてある。


それから家を出て歩いていたのだが


「腹減ったな」


珍しく朝から腹が減った。


「朝飯抜いておったでござったな」

「いつも食べないんだよ」


そう言いながら俺はコンビニに寄った。


肉まんを2つ買うことにした。


「ほらっ」


片方はほむらに渡す。


「おおっ、くれるのでござるか?かたじけないでござる。パクパク」


俺は静かに食べながら歩いてた。


歩き食べはマナーが悪いだろうが、この場合はしかたない。


「ごくっ。おいしいでござる」


(食べるの早いなこいつ)


俺はまだ1/4も食べ終わってないのに。


「拙者の好物になったでござる。肉まんでござったっけ?」


「肉まんだね」


「とってもおいしいでござるぅ」



学園に着くと教室に入った。


今日もクラスメイトの視線が俺たちの方に。


というより今日は珍しく俺の方に視線が向けられていた。


「あいつ、昨日とは別の子連れてるぞ」

「昨日の子も可愛かったのに、今日の子はレベル高いな」

「今日の子は胸デカイな」


そんな下系の話が聞こえていた。


当の本人は気にしていない様子である。


俺は自分の席に向かってった。


「らいとから聞いたでござる、この席に座ればいいんでござったっけ?」


隣の席に座るほむら。


「あぁ」


「よっこらしょでござる」


(おっさんかよ)


俺がそんなこと思っていた時だった。


ズカズカズカズカ。


足音。


どうやらこっちに向かってきているようだった。


顔を上げて足音の方を見ると案の定委員長だった。


顔をピクピクさせながら俺のことを見ている。


「ちょっと、どういうこと?来夢くぅん」


「俺に聞かれても困る」


「異性交友は禁止されてるって言ったわよね?」


それから委員長はほむらに目をやった。


「あなたは来夢くんとどういう関係なの?」


ポッと頬を赤らめたほむら。


「ただの主従関係でござるよ……//////」


最悪なタイミングで頬を赤らめたなこいつ。


「一応聞いておくわ。どっちが上?」

「主殿でござる」

「主くぅん?」


顔をピキピキさせながら俺を見てくる委員長。


「私こう見えて風紀のことは任されてるんだよね。あんまり問題起こさないでくれる?」

「分かってるよ」


「そう、なら良かった。ほんとに問題だけは起こさないように、ね」


そう言うと自分の席に戻っていった。


(でも、明日はたぶんまた別のやつが来るんだよな)


これは今は言わない方がいい気がする。



放課後。


さっそく帰ることにした。


いつも通りの日々である。


学校に来て、授業を受けて、チャイムが鳴れば誰よりも速く速攻帰る。


俺の生活パターンは基本的にこれだ。


机の上を片して俺はカバンを手に持つと帰り始めた。


「これからどこ行くでござる?」

「かえるんだよ」


廊下に出ようとしていると、案の定委員長に止められた。


「待って、来夢くん」

「なにさ?」

「今日は私も一緒に帰るわ」

「なぜ?」

「あなたが異性交友してないことを確認するためよ」


ほむらはそれを聞いて笑っていた。


「うぷぷっ」

「な、なにを笑っているのかしら?」

「まるで主殿と帰りたくて必死に理由探ししたみたいだと思ったでござる」

「そ、そんなんじゃないわよ。私はただ異性交友の有無を」

「ツンデレは今どき流行らんでござる。とっとと素直になるでござる」


俺はそのまま廊下を歩き始めた。


ふたりももちろん着いてきた。


「ところでどこからどこまでが異性交遊でござるか?」


「それは私が見極めます」


「今朝2人で肉まんを分けて食べたでござる」


「半分異性交遊ですっ」


俺は会話に加わることなく電車に乗りこんだ。


そして、そのまま一駅だけ乗ると直ぐに下車した。


「あれ?思ってたのと違う」


委員長がそんなことを呟いてた。


俺はそのまま家まで直帰した。


家の門を開けると委員長を見た。


「帰らないのか?委員長。ここは俺の家だが。言ったろう?俺の毎日なんて学校と家を往復するだけの下らないものだって」


「うぐっ……」


「そうでござる。暗くならないうちに早く帰るでござる」


俺の腕に手を回してくるほむら。


「はやく拙者とゲームをやるでござる、主殿〜」


そのまま家の中に連れていかれようとする俺。


「ま、待ちなさい」


ビシッ!


指を突きつけてくる委員長。


「まだ信じられません。私も中に入ります」


「それこそ不純異性交友では?(正論)」


ぐうの音も出ないほどの正論だったと思う。


「うぐっ……」


「まぁいいよ。いつまでも付き纏われるのも面倒だし、入れば?」


そう言うと委員長は頷いた。


「あなたが、ちゃんと不純してないか確認させてもらいます」


門を閉めて敷地内に入ってきた。


俺はそのまま家の中に入っていった。


リビングに向かうと置き手紙。


"今日は両親共に帰れない"


という置き手紙があった。


それを確認して俺は2階に上がることにした。


部屋の中に委員長を上げる。


「部屋の中ちょっと探してみてもいい?」


「なにをさがすの?」


「え、エロ本っ」


「直球だね。探してみれば?そんなもの見つからないけど」


元々ないものなんて出てくるわけない。


「ん〜」


委員長は俺の部屋を隅々まで探し始めた。


「主殿、はやく配管工のおっさんのげーむで遊ぶでござるっ!」

「あぁ、あれね」


俺はゲームの準備をしていた。

その間も委員長は必死にないものを探していた。


「ないわね」

「確認できたら帰れば?まさか18時以降も男の部屋にいるなんてそれこそやばいだろ?」


委員長は頷いた。


「今日のところは帰らせてもらうわ。部屋に怪しいものもないし」


「ばいばーい、委員長」


そう言うと委員長は俺の前に来た。


「ちゃんと白石っていう名前があるんだけど」

「じゃあね、白石委員長」

「うん」


にっこり笑って委員長は部屋を出ていった。

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