第5話 少女探偵、あなどれない
キーンコーンカーンコーン。
五時間目の合同体育は、大盛り上がりで終了した。
「神木くんたち、ありがとう!」
おれと怜音が片づけをしていると、広瀬先生がニコニコしながら近づいてきた。
「どういたしまして、先生」
「授業がどうなるかと思ったけど、めちゃくちゃ助かっちゃった」
「じゃあ先生、がんばったおれのために、六時間目は自習にしてよー」
「調子に乗らないの。六時間目は算数のテストを返却して、その答え合わせをするわよ」
「げげ!」
「じゃ、片づけお願いねー」
手のひらをひらひらさせて、先生は校舎に歩いていった。
やべー、算数のテスト返却されるのかよー。
「志音、家に帰ったらテスト見せろよ」
「ええー……」
おれ、算数苦手なんだよなー。
勉強ができる怜音には、いつもチェックされている。
「神木くんたち」
声をかけられ、片づけの手を止めた。
後ろを振り向くと、愛菜が立っていた。
「二人ですごい装置を作ったんだね。みんな、楽しそうだったね」
「おう。VRドッチボールを作ってよかったよ」
ニコニコ笑って愛菜が言うから、おれもニカっと笑顔で返した。
「VRドッチボールなんて、いつ作ってたの?」
「最近だけど。こんなのあったら面白いかなーって」
「ふーん。なんか用意周到ね」
「用意周到?」
「まるでドッチボールが盗まれることが事前に分かってて、このゲームが作られたみたい」
おれは思わず息をのんだ。まるでも何も、そういうことだ。
ズバリの指摘に冷や汗が流れる。
「……どういうことだよ」
「知ってる? うちの学校に現れた怪盗ノットって、二人組なのよ。背が低くて子供みたいな二人組。そうね、ちょうどあなたたちに似てるわ」
愛菜は鋭い視線でじっと見てきた。
まさか、コイツ、おれたちの正体に気づいてんのか……!?
バレたらマズいじゃん!
ど、どうすれば……。
「あははっ、まさか!」
おれはびくんと肩をふるわせ、急に笑いだした怜音を見た。
「怪盗ノットがオレらだって? 盗みに入るなんて、小学生のオレらができるわけねーじゃん」
怜音は飄々とした態度で言い放った。
「でも」
「さすがにちょっとリアルじゃなくね?」
「そ、そうだよなー! リアルじゃないよな! あの怪盗ノットってヤツ、頭よさそうだしなー」
「そうそう。志音のテストの点数見たら、納得の答えだと思うけど」
「なにをー!?」
怜音にくってかかると、怜音がぺしぺしとおでこをたたいてきた。
「双子でじゃれてないで、さっさと片づけして教室に戻ったら?」
悔しそうに眉をしかめた愛菜は、おれたちに背をむけると、校舎にむかって走って行った。
おれと怜音は互いに目を合わせると、ほっと息をついた。
「あぶねー。少女探偵、あなどれない!」
「ただのカマかけだろ? 全く問題ねーよ。ほら、そろそろ戻るぞ」
ドキドキしている胸をおさえつつ、怜音と一緒に片づけを終えた。
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