第4話 VRドッチボール大会
広瀬先生が不思議そうに、俺のとなりでタブレットを操作している怜音に聞いた。
「広瀬先生、これからするのは、パソコンクラブで作ったVRドッチボールです」
「え、パソコンクラブで!? ⅤRを開発!?」
冷静に話す怜音とは対照的に、広瀬先生はびっくりして、おおげさなジャスチャーをした。
「い、いつの間にそんなの作ってたの? 先生、パソコンクラブの担当なのに、そんなの知らなかった」
「先生、基本パソコンに興味ないもんね」
「だって、パソコンなんてよくわかってないのに、若手ってだけで決められたんだから」
「小学生にグチんなよ、先生」
おれのツッコミに、神木さんだからグチれるの、と言ってきた。
まあ、それもそのはずで。
おれたち双子は、学校のクラブ活動でパソコンクラブに入っている。
クラブの担当の先生は広瀬先生。
だけど、実際クラブ活動を進めているのは、デジタルが得意なおれたち双子だ。
ジュニアスパイはデジタル技術が必要なんだよー、と五朗のおじさんに言われ、日々トレーニングを積んでいる。
VRドッチボールは、ドッチボールを盗んでしまうから、先に作っておいたんだ。
五朗のおじさんにチェックをしてもらいながら作ったけど……。
おじさん、スパルタなんだよなー。
歯を食いしばって作ったので、かなりの自信作だ。
「志音、設定終わった」
「怜音、ありがと」
顔を見合わせると、ニッと笑った。
さーてと、みんなを驚かせますか!
きっと大興奮して、大盛り上がりだ。
おれは息をすーっと目一杯吸い込んだ。
「みなさーん、ゴーグルにあるスイッチを押してくださーい!」
大声で叫ぶと、みんなが一斉にスイッチを押した。
「うわあ! ドッチのコートが出てきた!」
映像が見えたらしい誰かが叫んだ。
「すげー! なにこれ!?」
「どうなってんだ!?」
ふふん、みんな驚いてる、驚いてる。
おれもゴーグルを着けて、スイッチを押した。
すると、ブワーン、と目の前に映像が広がる。
近未来的なスタジアムの中に、ドッチのコートが生まれた。
このゴーグルはシステムを組み込んで、VR用のゴーグルに作り変えたんだ。
自分で言うのもなんだけど……、やっぱカッコイイ!
燃えるぜ!
「広瀬先生、怜音が持ってるタブレットのスタートボタンをタップして!」
「わかったわ。まかせて!」
「怜音、行こう!」
怜音が先生にタブレットを渡すと、おれは怜音をひっぱって、コートに向かった。
「それでは、一組対二組のVRドッチボール対決を行います!」
広瀬先生の声と同時に、ピコンと音が鳴る。
それと同時に『START』の文字が現れ、軽快にファンファーレが鳴った。
「わわわ、ボールが現れた! か、感触があるぞ」
声を上げたのは、同じクラスの
がっちり体型の手島は、おれと一、二を争うくらい、ドッチボールが得意なヤツだ。
ランダム設定にしている開始時のボールは、どうやら手島に渡ったようだ。
「手島! そのボール投げろ!」
「な、投げれんのか!?」
おれが声をかけると、手島はびっくりしながらも、思いっきり腕を振った。
ビュン、とスピードの乗ったボールが、相手コートの一組の男子にヒットした。
すると、『HIT!』の文字が現れ、勝利のファンファーレが鳴った。
「すっげ! めちゃくちゃ面白いじゃんか!」
手島はフンフンと鼻息を荒げ、叫んだ。
そうだろう、そうだろう!
おれたち双子の自信作だからな!
今度は一組から放たれたボールが、うちのクラスメイトに当たる。
すると、今度は『OUT!』の文字が現れる。
音楽と映像が、気分をを最高に盛り上げる。
「いっけーっ」
「やった!」
みんなが声を出し、のめりこむようにドッチボールに集中した。
その時、
「あっ」
青い顔をした体の小さな高野に、ビュン、と勢いよくボールが飛んだ。
あっ、アイツ、ドッチボールが苦手なんだった。
おれはすぐに高野の前に躍り出た。
球威のあるボールが、おれに牙をむく。
ドンッ、と鈍い音がした。
体全体で包み込むように受けたボールは、すっぽりとおれにキャッチされていた。
「高野、大丈夫か!?」
振り向けば、高野がほっとした表情をしていた。
「う、うん。ありがとう! さすが運動神経バツグンの神木くんだね」
「いやー、まーそれほどでも~」
「高野! 男ならボールくらい、しっかり受け止めろよ!」
少し離れたところにいた手島が、ドッチが苦手な高野を責めた。
「ご、ごめ……」
「手島っ、仲間責めてる場合かよ。一組撃破だぞ!」
「神木に言われなくたって!」
おれは手島に負けないくらい声を張り、意識を一組に集中させる。
「志音! オレら、そうカンタンにやられねーけど」
一組のコートにいる怜音が、口角を上げて煽ってくる。
おれたち二組は負けないぞ!
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