第5話 予期せぬ展開は強引にやってくるものだ

トラさんと別れた後、店に入ろうと扉を開いたその時、背後でドサッ! と音がした。


少しビビりながら振り返ると、メイド服を着た銀髪の巨乳少女がさやの無い長い剣を太ももに挟んで横向きに倒れていた。


「え?!」


”おいおい”


恐る恐る近寄って、膝を着いて横腹を突いてみた。


「アァ」


どうやら生きているようだ。それによく見ると顔や腕、太ももにスリ傷が多数ある。


”これはどう見ても、僕が介抱する流れだよな”


・・・・・・


”運ぶか。それにしても剣を抱えたままの彼女をお姫様抱っこで運ぶのは危ないよな”


彼女から剣を剥ぎ取ろうとしたが両手両足で羽交い絞めされた剣はピクリとも動かなかった。この少女はどうやら怪力の持ち主のようだ。


”仕方ない、起こすか”

”ん?”

”・・・何だか怪しい。顔色もさほど悪くないし目元が気を失っているようには見えない”


「君、本当は起きれるよね」


彼女の頬を3回軽くビンタしたが全く起きる気配がない。

 

「起きないとパンツ見ちゃいますよ」


・・・・・・


「僕はね、こう見えても有言実行する男なのですよ。起きないと本当にスカートをめくっちゃいますよ!」


彼女の体が少しピクン!と反応した。そして太ももの間に挟んだ剣が少しだけ動いた。


やはり狸寝入りしているようだ。


「しからば、失礼して」


僕は彼女のお尻の辺りのスカートを豪快にめくった。──青のストライプだった。


”お~ いい眺めだ”


「ウウウウ~」


彼女は剣をギュッと抱きしめて瞳に涙を溜めながら僕を睨んだ。


「やはり狸寝入りでしたか」


「助けて」


「いや自分で起きれるでしょ」


「本当に動けないのよ」


「僕には、そうは見えませんよ」


「今はギリギリしゃべれるけど魔力切れで体が動かないの」


・・・・・・


「分かりました。それならば僕の店で介抱しますので剣を離してください。じゃないと抱きかかえれませんから」


彼女の腕と太ももの力が緩み剣がズレた。


「では剣を動かしますよ、──オモ!」


剣は物凄く重く、持てなかった。


「この剣、何の金属でできているんですか? 重すぎです」


彼女からの返答は返ってこない。


とりあえず剣を異空間収納BOXに入れた。因みに念じれば空間が開き勝手に収納できる仕様の様だ。


彼女を抱きかかえようとゆっくり体の下から手を回し持ち上げた。


”意外と軽い”

 

すると彼女は物凄い力で僕の首に腕を巻き付けて一方的に唇を押し当ててきた。そしてニュルリと舌を侵入させてきた。


「ヴぅヴぅ~」


いきなりの事で少し動揺したが彼女の舌の柔らかさにはあらがえずいつしかお互い濃厚な口付けに変わっていた。


 ──数分経って唇が離れた。


「これで契約成立です。ご主人様」


そう言うと彼女は意識を失って動かぬ死体のように力が抜けてしまった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ハウスキーパーは剣がお好き ダーマン歌子 @noumin777

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ