第21話

『それでは若葉さん、私に話とはどんな要件でしょうか?』

緊張しているのか震えている若葉さんにやさしく声をかけた。

『あの、その、忙しい中アポイントも取らずに申し訳ございませんでした』

なぜか泉の方を気にしながら謝罪をしてきた。

『いいですよ。話があれば会社ですると私が言ったのですから』

なるべくやさしく答えた。

『本日は確認したいことがありまして参りました。

立川さんは先日倒したコウモリ以外も神威を倒したことがありますか?』

『はい、あります。ウサギモドキと呼んでますが、頭に角を生やした

ウサギみたいな生物を先週倒してます。倒すとコウモリのように

消えてしまいました』

姫美が新しく作ろうとしている部署は神伐と連携すると聞いているので

嘘をつかず正直に答えた。

『やはりそうですがか。立川さんは明らかに普通の人とは違うようです。

そのため、私が所属している神威討伐組織に入っていただけないでしょうか』

『私は普通のサラリーマンですよ。先週はたまたま運がよく神威を

倒しただけです。そのため神威討伐組織への参加は断らせていただきます』

『そうですか、とても残念です。立川さんは神威に触れても平気だし、

神威もなぜか立川さんに引き寄せられたように感じたので何かあると

思いましたが、、残念ですが今回はここまでとさせていただきます』

なんかまた来そうな言い方をしているが、一旦は終わってよかった。

『先輩はとても忙しい方です。あまりにもしつこいようでしたら私が

相手をさせていただきます』

泉が俺のフォローをしてくれている。ホント優秀だな泉は。

『いえ、結構です。ではこれで失礼します』

最後は震えながら帰っていった。やはり空調が寒かったようだ。


『レセプションルーム3での打合せ終わりました』

俺は受付嬢の瑞穂さんに報告した。

『立川さん、流石に女子高生を会社に呼ぶのは問題ですよ。

今回は取り次ぎましたが、今後は取り次ぎません』

瑞穂さんは大きくカールするリラックスウェーブパーマが小顔を引き立てる

美人さんでとても愛想がよく、不機嫌なところなんて見たことがないが

今はかなり怒っている。

『大丈夫ですよ。瑞穂さん。先程の子は二度と来ないです。

来たとしても今度は私に取り次いでください』

なぜか泉が瑞穂さんに答えている。

『あら、なぜ泉さんが対応するのかしら。立川さんの秘書みたいな

言い方ですね』

『秘書ではありませんがこれ以上先輩の手を煩わせる必要が無いと言ってます』

お互い語気が強くなってきたのでまずいと思い間に入る。

『瑞穂さん、今日は本当にありがとうございました。今度埋め合わせを

しますね。ほら、泉も行くぞ』

『埋め合わせなんていいですよ。今度一緒にお食事に行きましょう』

我社の社員や、訪問するお客様から散々誘われているが

一度も誘いに乗った事がない瑞穂さんが社交辞令をしてくれた。

どうやら機嫌がよくなったようで良かった。

代わりに何故か泉の機嫌が悪くなっている。


頭の上からは『やはりいつか刺される』という声が聞こえてきた。

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