第19話
週明け月曜日、普段通りに出勤すると既に泉が自席に座っていた。
泉が新人時代にOJTをしてからずっと俺の席の隣だ。
『先輩、おはようございます。昨日は邪魔な人がいましたが、
勤務時間以外に会えて嬉しかったです』
『ああ、おはよう。昨日はお父さんとの食事会を中止にしてしまい
悪かったな。お父さんは不機嫌になってなかったか?』
邪魔な人とは姫美の事だと思うがスルーしてお父さんの機嫌を聞いた。
『父は先輩のことをとても気にいっているので大丈夫ですよ』
何が大丈夫なのかわらない。あと、泉のお父さと面識が無いのに
気に入っていることも意味がわからないな。
『気にしていないようなら良かったよ。昨日姫美は普段通りに
勤務をしろって言っていたけど同時進行しているプロジェクトが
複数あるから今週も忙しいな』
『はい。ゴールデンウィークに切り替えを予定しているBB社の手順書が
国分寺さんからきているので確認を始めます』
『よろしく、俺は他のプロジェクトの調整を始めるよ。
姫美がどんな部署を作ろうとしているか分からないが、急ぎではない
プロジェクトは他のチームに任せるように西砂マネージャに話してくる』
『わかりました。それにしてもショワちゃんは大人しいですね。ずっと
先輩の頭の上にいて可愛いです』
気付いていたか。泉には見えるようにしていたからな。
『基本、用がなければ喋らないように言ってある』
『なによ、喋っていいならドンドン喋るわよ。早く情報を集めさせなさい』
『まあまて、人間社会は色々調整をしないといけないんだよ。あと、勝手に
この会社の情報を集めるなよ』
『分かってるわよ』
この会話が独り言に見えたら周りからヤバい奴認定されるな。
今回は泉と会話しているとみえるから大丈夫か。。
俺は自席を離れ西砂マネージャの前に移動した
『西砂マネージャ、急で申し訳ございませんが、ご相談したいことがあります』
『月曜日の朝一からめずらしいね。じゃあ会議室にいこう』
西砂マネージャと共に会議室に入ると、今後についての話し合いを始めた。
『本社の役員の錦CFOから新しい部署への異動の打診がありまして、
一ヵ月以内に泉と一緒に異動することになりそうです』
『え、それは突然だね。グループ間の異動だけど今抱えているプロジェクト含め
新しい部署に持っていくの?』
『一部は持っていくことになると思いますが、まだ詳細が不明です』
『分かりました。準備しておく必要があるので抱えているプロジェクトの一覧と
引継ぎ資料を作成してください。ゴールデンウィークに控えているBB社の
切り替えは対応できる?』
『BB社は既に切り替えの準備が完了しており、今から引き継ぐのは困難だと
思うので現状の体制でプロジェクトを推進します』
『よかったよ。ゴールデンウィークは他のプロジェクトの作業も沢山入っている
から、今から他のチームに引き継ぐのは難しいと思っていたよ』
通常業務+引継ぎ資料作成もあるが、引き継いでもらう人に
迷惑をかけられないようにしっかり資料を作るとしよう。
そんな事を思いながら自席に戻ったら受付嬢の瑞穂さんから内線がかかってきた。
アポイントは無いが俺に会いたいという人物が受付にきているらしい。
名前を若葉と名乗っており、制服姿のようだ。
受付嬢の声が冷めたように聞こえたのは気のせいではないと思う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます