第15話

『ショワ、まずは警戒を解いてもらうためにも挨拶を頼む』

フラフラ飛んでいるショワに俺の肩にのってもらい挨拶を依頼した。

『ショワよ、よろしく』

ぜんぜんよろしくない挨拶をした

『おまえ、そんなんじゃ余計警戒心を高めるだろ。もう少し説明しろって』

『おまえって呼ばないでよ。ショワって名前を付けてくたでしょ。

もう一度言うわ。昨日タツが名前をつけてくれたの。その時に契約を結んだの。

なのでうちのことをショワって呼んでね』

先程より幾分ましな挨拶になったな。

『達人、質問いいかしら』

手を挙げながら質問してくるなんて、学校でもないのに相変わらずまじめだな。

『いいよ姫美。答えられる内容であれば答えるよ』

『まずそれは生き物なの?なんでフワフワ浮いているの?なんで日本語を

話しているの?なんで先程まで見えなかったの?・・』

『おい、落ち着けって。いつも冷静沈着な姫美はどうした。1個1個答えて

いくから一旦質問を止めてくれ』

『先輩、私も混乱してます。錦さんが質問を言いたい気持ちが分かります』

二人ともかなり混乱しているな。昨日の俺もこんな感じだったのかな。

『じゃあ、姫美の質問に順番に答えていくぞ。昨日1日過ごしてみて

食事は不要みたいだ。人間基準で考えると生き物の定義から当てはまらない

かもしれないけど妖精って考えると少しは納得できると思う』

少し納得してくれたようだ。

『浮いている理由は先程話したとおり、人間基準に考えるのでなく妖精って

考えると納得できると思う。日本語を話している理由はわからん。俺の時も

いきなり日本語で話しかけてきた。最後に突然見えたのは今日会った時から

ずっと俺の傍にそばにいたが、俺が許可した人じゃないと見えないからだ』

黙って聞いていてショワはフォローするように付け加えた。

『うちのことは情報の集合体と思って。なので情報の妖精かな?

日本語を話すのも日本語を情報として入手したから。

うちもよく覚えていないだけど、情報を入手しないと大変なことが

発生するみたい。うちは情報からある程度の物事の流れを

予測できるけど、今から3年後より先が全く見えない状態なの』

また姫美が手を挙げている。誰かが話しているときに遮らず

手を挙げているのは偉いな。

『大変な事って人類滅亡みたいなことなのかしら?』

『それはうちにも分からない。もしかしたら星自体が無くなるのかもしれない』

『それで具体的にわたしや泉さんに何を協力して欲しいのかしら』

さすが姫美、普段から大企業のさまざまな問題を処理しているだけあって、

すでに前向きな検討に入っているな。泉の方は少し可哀そうだ。

優秀だけどまだ場数が足りてない。

『ここからは俺から説明させてくれ。昨日ショワと話した今後の方針は大きく2点。

1点目は、ショワが欲しいと思う上位層?富裕層?が管理している情報の入手。

2点目は、情報を食らう化け物がいてこれを放置するとまずい状況になるようなので、

俺が先日倒した神威という化け物を積極的に駆除する』

『方針は理解したわ。ここにわたしを呼んだのは1点目を手伝って欲しいと理解

できるのだけど、泉さんを呼んだ理由は何?』

うん?姫美が何を言いたいのか分からないな。

『泉には俺と組んで、2点目を対応してもらいたいと考えている。

危険が伴うから事前に説明をしたつもりだ』

やはり理解していない。そんな顔を姫美は俺に向けてきた。

『泉さん。あなたの口からチャント説明しなさい』

そう言って、姫美は泉に説明を促した。

『先輩、隠していたわけではないのですが、私は泉財閥の一人娘です。

そのため、1点目の方が協力できると思います。2点目ですがこの話を父が聞いたら

絶対に先輩と仕事をさせてもらえなくなります』

泉は悲しそうな顔を俺に向けてきた。

『泉ごめん。全然知らなかったよ。確かに女の子に頼む事ではなかったな。

泉は優秀だから頼ってしまった俺が悪い』

『先輩は謝らないでください。私も先輩をそんな危険な場所に向かわせたくないです』

泉は今にも泣き出しそうな顔をしている。

『初めは危険かもしれないけど、数をこなせば危険が減っていくと思うんだ。

昭和記念公園に集まってもらったもう一つの理由を今から説明するよ』

泣きそうな泉の顔をこれ以上見ていられないため、俺は話題を変えた。

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