第13話

『休みの日に悪いな。今時間大丈夫か?』

俺は協力者の一人に電話をかけた。

『ええ、丁度今手が空いたところよ』

錦CFO、この決算書に至急判をお願いします。

なんて声がスマホの先から聞こえてくるが、まあ手が空いたということなら

会話を続けさせていただこう。やはり4月は年度初めで

色々な計画や6月の株主総会に向けて忙しいのだろう。

『実は相談があって、会って話がしたいだよ。急で申し訳ないけど

明日13時に、昭和記念公園のこもれびの里に来てくれるか』

『え、達人からのお誘いなんて。しかも昔よく一緒に遊んだ穴場の

こもれびの里に集合なんて。絶対に行くわ』

前半部分はよく聞こえなかったが、絶対にきてくれるらしい。

『ありがとう。実は泉も呼ぶ予定だ』

『なんで泥棒猫がくるの!』

『猫なんていないぞ。泉がくるかもって言ったんだ』

忙しいからか、聞き間違いがひどいな。

『泉さんも一緒なのね。電話でできない相談なのね

分かったわ、先程言ったとおり必ず行くわ』

『ホント忙しい中すまん。直接見てもらった方が早いというか

電話じゃ信じられないことなんだ』

『分かったわ、あなたがそこまで言うのだから。

では明日13時に二人の思い出のこもれびの里ね』

最後の方は少し機嫌が悪かったようだが、来てくれるということで安心した。


『休みの日に悪いな。今時間大丈夫か?』

俺はもう一人の協力者に電話をかけた

『先輩、お仕事以外で休みの日に電話をくれるって初めてですね!』

今日もテンションが高いな。ホントいつも元気だな。

『ああ、悪い。チョット相談したいことがあってね。会社では

言えない事なんだけど、明日空いてないか?』

休みの日にこんなオッサンから会おうなんて言われたら一歩間違えば

セクハラで訴えられるな。言葉を選びながら伝えたけど大丈夫か。

『え、先輩からのお誘い。しかも会社で言えない話をしたい。

もちろん空いてます。父がご飯を食べたいなんて言っていた気がしますが

問題ありません』

お父さんすみません。心の中で見たことも無い泉のお父さんに謝りながら

『では明日13時に昭和記念公園のこもれびの里にきてくれ。

こもれびの里は穴場の砂川口から近くて駐車場も空いている』

『分かりました。車でもいけるんですね。それは便利ですね』

『ありがとう。そうそう、実は金曜日に一緒に飲んだ錦姫美も呼んでいるだ』

『なんで女狐が一緒なんですか!』

『うん?狐じゃなくて錦姫美って言ったんた』

姫美も聞き間違いが酷かったが、泉も酷いな。

『なぜ大事な話に錦さんが一緒なんですか』

『実は直接見てもらった方が早いというか電話じゃ信じられないことなんだ』

『分かりました。絶対に行きます。ホントは二人っきりがいいのに』

と電話を切られた。最後の方は聞き取れなかったが絶対に来てくれるからいいか。


スピーカーモードで電話していたのだが、それを聞いていたショワが一言。

『あなたいつか刺されるわよ』

何を言っているいるのか不明だ。

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