第9話
俺が頭の中に表示されている数字の羅列を確認していると
女子高生が話しかけてきた。
なんで初対面の女の子を女子高生だと判断したかというと、
その子が着ている制服が英華蘭美女子高等学校(通称:英蘭)の物であり
昔姫美も着ていたので知っていたからである。
確かかなりのお嬢様学校で学費も高額だけど偏差値もかなり高かったと記憶している。
『先程、コウモリみたいな生き物を素手で倒したようだけれど
手にケガなどはしていませんか?』
そう言うと、いきなり手首を握り手のひらを見ようとする。
『こらー、いきなり現れて、いきなり先輩に触るなー。
そもそもあなたは誰ですか?』
泉が女子高生と俺の間に割って入ってきた。
『少し気が動転してしまい、自己紹介もなくいきなりすいませんでした。私は
そういうと、俺以外の4人が緊張するのを感じた。
『そう、あなたは若葉家の人ですが』
姫美がつぶやくと、八王子と青梅が若葉と名乗った女子高生から守るように
姫美と泉の前に立った。
『で、その若葉さんが俺の手をなんでそんなに心配してくれてるんだ?』
『先程の化け物は、神威といって素手で触れると火傷をしたように皮膚が爛れます
まして、潰すなんてよほど力が無いと不可能です』
そう言った、若葉さんは改めて俺の手を見てきた。
『何ともない。そんなことは無いはずなのに』
何か信じられないような物を見るかのように、俺の手を見つめている。
そんなに見つめてもネットワーク機器に高速でコマンド投入できるように
タイピングに特化した綺麗な手しか無い。
『先程お話したとおり神威は素手はおろか、武器での攻撃もこのような神木や神鉄
で作られたものでないと倒せません。あなたのご職業はなんですか?』
そういって訝しがる目で俺を見つめてくる。
『俺はしがないインフラ系のSEだ』
『SEってシステムエンジニアですよね。パソコンを使って仕事をする。それは表の顔であって、組織に所属していたりしないのですか?』
組織ってこの子中二病かな。
『裏も表もない。俺はBrocadeネットワーク株式会社で働くサラリーマンだ。これは
俺の名刺だ』
社畜の鏡である俺は一分の隙もない所作で名刺を取り出すと若葉さんに渡した。
名刺の受け取り方も知らない女子高生は片手で受け取るとまじまじと見つめている。
『とにかく、これ以上ここにいても仕方がないわ。引き上げましょう』
姫美はそう言うと、八王子を連れてお店の責任者と思われる人と会話を始めた。
しばらく会話をした後に、黒いカードをお店の責任者に渡し決済をしている。
『今日は突然お邪魔してしまったし、トラブルもあったので私の方で
支払いを済ませておいたわ』
『悪いな、今度この穴埋めはするよ』
姫美は普段から高級なものを渡され慣れているはずなのに
俺の出張のお土産や、花とかを渡すととても喜ぶ。
『先輩、私も改めて二人でご飯に行ってください』
負けじと泉がそんな事をいってきた。
『そんなことなら、何時でもいいぞ』
店から出ようとすると若葉さんが話しかけてきた。
『すいません。改めてご連絡するのでまた会ってください』
そんなことを言い出すので、近くにお巡りさんがいないか確認してしまう。
『こんなオッサンと気軽に会いたいなんて言ってはだめですよ。
何かあったら、名刺の連絡先に電話していただければ会社内で
会話させていただきます』
真摯な俺はそういって、その場を後にした。
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