第3話

AA社に到着すると、ネットワーク管理者の港様が出迎えてくれた。

この業界はホント3Kだな。

『立川さん、二日も連続で訪問いただきありがとうございます』

『いえ、こちらこそ二日連続で作業に立ち会っていただきありがとうございます』

社交辞令を交わした後に、問題が発生しているL2スイッチの前に案内される。


『今日はネットワーク経由でログを採取するのではなく、L2スイッチに直接シリアルでアクセスして状態を確認させていただきます』

いつもはネットワーク経由でログを採取しているが、今回はシリアルケーブルを

使用し物理的にアクセスして状態を確認することにした。

ログを採取するスピードは落ちるが、他のネットワーク経由でなく生のデータを直接

確認することができる。


『準備が完了しました。港様には再現試験を手伝っていただきたいのですが、

よろしいでしょうか』

『はい。私としてもパケットロスの原因を特定したいので問題ありません』

港様は発注先の丁寧な物腰で本当に仕事がしやすい。こんな人ばかりだったら

どんなによいか。

『では、御社が公開サイトで発表している運動に関する情報のメールを御社内の

誰かに送信していただけないでしょうか』

『公開サイトの情報のやりとりなら問題ありません。では送りますね』

そういうと、港様は自席のパソコンに戻ってしまったため、L2スイッチがある

ネットワークラックの前は俺が一人になってしまった。

タイミングは伝えてないけど、ずっとL2スイッチの状態を見ていれば問題ないな。

そんな事を思って、シリアル経由で接続されたパソコンを見ていたらそれは

突然発生した。




バチバチという音とともに、俺のパソコンの前には中型犬ぐらいのウサギがいた。

しかもそのウサギの頭には一本の角があった。パニックになった俺は

『港様、変な動物がいます。これは御社で飼っている生き物でしょうか』

パニックになっても報連相は重要である。咄嗟に報連相ができるとは

社畜の鏡である。俺の声を聞いた港様が駆けつけてくれた。

『なんですか、この生き物は』

俺以上に混乱している港様がいた。人間は自分以上にパニックになっている人が

近くにいると冷静になるって言うけど本当だな。

少し冷静になった俺は、港様に

『あの生き物は、御社で飼っている生き物ではないのですね?』

そう言った瞬間、そのウサギモドキは突然俺に向けて飛び掛かってきた。

『うお、やばい』

咄嗟に避けることはできた。

ただしウサギモドキがぶつかった壁には角がささった箇所に穴が開いていた。

これ心臓に刺さったら即死では?と恐怖にかられた。

ウサギモドキは振り返りまた飛び掛かる体制になっている。

『港様、何か武器はありあすか?』

『え、武器なんてないですよ。。。あ、今日帰りにバッティングセンターに寄ろうと

思って自前の金蔵バットを持ってきてます。取ってくるので頑張って避けてください』

逃げたな、なんて思ったがなぜかウサギモドキは俺をターゲットにしている。

高校までは野球をしていたので、150kmの速球に比べたら遅いウサギモドキの

攻撃を躱していたら、港様が金属バット持って戻ってきた。

『立川さん、武器です』

なんて言いながら金属バットを放ってきた。

そりゃウサギモドキに近づきたくないからって、ウサギモドキの攻撃を避けている

人に対して、バットを放るなんて。と思ったが、

野球経験者ならバットをブラバンのバトンのようにクルクル回して

キャッチする遊びをして監督に怒られる。なんて事をしていたが、

その経験がこんなところで役にたつとは。

港様からのキラーパスを空中でキャッチした瞬間、飛び込んできた

ウサギモドキの顔面にフルスイングをくらわせた。

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