第2話

『先輩、おはようございます』

昨日も遅かったのに、泉は今日もセミロングのフルユワの髪型、

頬にピンクのチークの入った可愛い系の化粧と完璧だな。

男と違い、女性は色々な準備がかかるはずなのによく時間があるな。

『おはよう、泉。昨日のログはクラウドにアップ済みか?』

『既にいつもの作業ログフォルダに格納済みです』

いつもの事だが仕事が早いな。ホント助かる。


『ありがとう。パケットロスの件は俺が確認しておくから、

次回作業の手順書を作成しておいてくれ。』

『はい。わかりました。今日は早めに上がってご飯行きましょう!』

『あー悪い。昼間は別件あるし、パケットロスの件を夜確認するから

今度の金曜日に飯行こう』

『えー、分かりました。金曜のご飯楽しみにしてます』

こんなおっさんとのご飯なんて楽しみにしていないで、泉なら引く手あまた

だと思うけどな。


『では先輩、今日はお先に失礼します。金曜のご飯楽しみにしてますからね』

『お疲れ様。昨日も遅かったから今日はユックリ休んでくれ』

『はい、ありがとうございます。先輩も無理しちゃ駄目ですよ』

というと、颯爽と帰っていく。

おっさんの心配をしてくれるとは、ホント優しい子だな。


では、昨日のパケットロスのログを確認するか。

・・・やはりL2スイッチの障害やバグではないな。

暗号化されているからキャプチャしていた生データの中身は不明だが

ある特定のパケットだけロスをしている気がする。

パケットロスの件はお客様にも伝えているから、何かしらの報告が必要だな。

よし、明日もう一度現地に入って確認しよう。

『AA社のネットワーク管理者様でしょうか、昨日作業をした立川です。

昨日ご了承の元持ち帰りましたログやキャプチャデータでは原因の特定が

できないため、明日再度御社にお伺いしてもよろしいでしょうか』

『明日なんて言わずに、今からでもいいですよ』

うーん。単独作業は禁止されているから一人では現地にいけないけど

設定変更をするわけではないから上司に相談してみるか。

『ありがとうございます。上司に確認するので少々お待ちください』

電話をいったん保留し、上司の西砂マネージャに説明すると、

『設定変更は絶対にしちゃだめだよ。調査だけなら一人だけでいいよ』

さすが、西砂マネージャは部下を信頼しているな。

『お待たせしました。上司の確認が取れましたので19時に御社に参ります』

と伝え電話切った。


現地で慌てないように調査する項目をまとめておくか。

昔から、よく感が冴えているとか言われているからこういう勘所をまとめるのは

得意なんだよな。パケットロスをする箇所は体を動かす事に関するやりとりで

発生しているように思うので、重点的に再現試験をしてみよう。

時間になったのでAA社に向けて出発した。

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