第23話
「プレゼントを買っている?」
「「婚約者であるレイリーア以外に?」」
「その通りです。まとめた資料をご覧下さい」
全く、お父様から支援されたお金はとても魅力的だったでしょうね。1度も私には使ってなんていないでしょうけれど。
「これは……。ああ、例の男爵令嬢との記録だね」
「良くもまあ、こんなに堂々と浮気している姿を見せられますね。恥ずかしい! 私の娘には何もせずにその小娘には随分と甘いこと!」
「メリルのことを悪く言わないで下さい!」
「まあ! 愛称で呼んでいるなんて……。いつどこで小娘にあったかは知りませんが、婚約者を蔑ろにして良いとでも?」
「メリルは立派な男爵令嬢ですよっ? 貴族です! 小娘なんて言わないでもらいたい!」
「では、メイプリル嬢よりも家格が上の私に対して、"アイツ“と呼ぶのをやめてもらっても? 何度かお店で一緒になった時に私の話をする度に、悪口を言いながら私のことをアイツって言っていたわよね?」
もう、本当に頭に来たんだから! 私たちも家では好き放題言っているけれど、外ではちゃんとしているわよ! それにリネルドがメイプリルを連れてきたあのお店は絶対! リネルドの持っているお金では買えない物ばかりの高級品店よ。どこからか借りたかもと思っていたけれど、お父様からもらった私の為のお金を使ったのね。
「店で一緒になったことなんて1度もないだろう! そ、それに仮にも婚約者なんだから好きに呼んで良いだろう!?」
「良い訳ないでしょう。婚約者は尊重しなさい。それと、悪口を言っていたのは否定しないのね?」
「悪口なんて言っていないぞっ! 大体、嘘をついているのはお前だ! メリルとのデート中にお前の姿なんて見ていないぞ!」
「「デートだと?/ですって?」」
その場の温度がさらに低くなった様に感じるわ。自分で証言してくれるなんて助かるわ。本人が浮気をしているという事実を認めたのだから。
「え、えっと……。そうだ! 友人同士で出かけただけですよ! メリルはレイリーアと同性なので、色々と教えてもらっていたんです!」
「呼び捨てにしないで頂戴。メイプリル嬢に教えてもらったと言うのに、1回もプレゼントがなかったのは?」
ない知恵を絞って出た言い訳がアレとは。散々メイプリルのことを恋人だと言いながら今更友人だなんて……。恥の上塗り以外ないわね。嘘を重ねすぎて言葉に説得力なんて皆無だわ。
「それは……、良いものがありすぎて選べなくて!」
「メイプリル嬢にはたくさん買い与えていたのに?」
「ただの友人に贈るにしてはやりすぎではないかな?」
「そうね。ただの友人なのにプレゼントをあんなに貰うなんて……図々しいこと」
ミラベル様、お父様、お母様が一気に攻め立ててるわ。娘よりぽっと出の女に現を抜かすなんてあり得ないものね。
「ただの友人とは何ですか! メリルとは特別な関係です! 俺が贈りたくて送っているんですから、どうしてこんなにも責められないといけないんですか?!」
「「「「はあぁ〜っ」」」」
これにはリネルド以外大きなため息が出たわ。自分でメイプリルとは友人と言っておいて、さっきは特別な関係。自分が何を話していたかまさか、覚えていないってことはないわよね? あり得そうで頭が痛いわね。
「こんなに馬鹿息子だったとは!」
「こんなに馬鹿に育っていたなんて……。どうして気づかなかったんでしょう?」
「おふたりのせいではありませんわ! 私がもっと早くリネルドの本性をお話しできていたら、矯正できたかもしれません……」
これには私も反省しているわ。早く夫妻に猫を被ってふたりの前では良い子ぶっているリネルドの本性を話していれば、どうにかなったかもしれないもの。ふたりは確かに子供に甘いけれど、必要な時には厳しく教えることができるから。話していたらきっと私情を挟まないでリネルドを教育しなおしていたはずよ。
「まぁ、リネルドはもう救いようがない奴ってことで」
「そうね。分かりきっていたことだけれどこれ以上話させたら更に墓穴を掘るでしょうし。彼の発言は無視するのが良いんじゃないかしら?」
「分家の奴が偉そうにしやがって!」
うるさい犬が吠えてて耳障りね。躾のなっていない犬だから仕方ないわね。
「それでは、本格的にこれからのことについて話し合おうではないか!」
「そうですね。馬鹿息子の勝手に使用した金額も計算しなければ」
「あの馬鹿が男爵令嬢と何をしていたか事細かに調べよう。そこで使われた費用なども確認しないとな」
「私たちも手伝いますわ」
「ありがとうございます。助かりますわ!」
紙とペン、資料を用意して話し合いが再開した。すでにテーブルの上の物は使用人にさり気なく全て下げられていた。チェルニ家の使用人はとても優秀なのである。
ひとりを除いて話し合いは続いた。
良くあるよね? 婚約破棄 エミリー @onemuna-usagi
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