第18話
――メイプリル視点2――
「今日は楽しかったよ。今日プレゼントしたアクセサリーは君によく似合っていたから、それを身に着けた姿が見たいな。もしよければ今度一緒に食事でもどうだい?」
「はいっ! 嬉しいです!」
その日から私とリネ様は何度か一緒に食事をするようになったの。彼が連れて行ってくれるお店はドレスコードが決められている所もあって、そのお店に行く時には新しくドレスを買ってくれるの!
彼の家は子爵家。私の家の男爵家よりは上の爵位だけれど、貴族家全体でみればそれほど高くない爵位のはず。それなのに高級なレストランやドレスのプレゼント、初めて貰った宝石の付いたアクセサリーなど。もしかしてリネ様のお家ってお金持ちなの? 子爵家だけれど……。
子爵家と男爵家。身分的にも釣り合いが取れているわ。リネ様はもう何度も私のことを食事に誘ってくれているし……。これってデートよね?
「うふふ、可愛い私にかっこよくてお金持ちで優しい婚約者。完璧ね!」
正確にいえばまだ婚約者じゃないけれど、時間の問題よね?
「あの女、邪魔ね。リネ様の隣に相応しいのは私なのに! 無理矢理婚約を結ばれたなんて、酷い話だわ!」
何度目かの食事の時に、彼に婚約者がいることを知らされた。好きって告白をされたわけではないけれど、彼の恋人になったと思っていたからとてもショックだったわ。未婚の男女が何度も一緒に出かけて食事や買い物をする。さらにプレゼントを贈られていたら、私じゃなくても勘違いしちゃうでしょう?
婚約者がいると言われた時に私のことは遊びなの? って聞いたの。
「リネルド様。リネルド様に婚約者がいるのは分かったわ。だとしたら貴方にとってこの食事はただの食事で、私のことは遊び相手のひとりというわけですね?」
「違う! この婚約は相手に一方的に結ばれたものなんだ! 俺は可愛い君のことが好きだよ。アイツとは必ず婚約破棄をしてみせるから、待っててくれ。俺が好きなのはメリル、君だけだよ」
「――っ!!」
初めて愛称で呼ばれたわ。後、さっきのセリフを私の手の甲にキスをしながら言われたの。今思い出しても照れちゃうわ! 好きなのは私だけって! もう私の機嫌はすぐに治っちゃったわ!
それから彼に婚約者がどんな人なのかを聞いたの。
「派手だけれど地味な女だよ。メリルと違って可愛さのかけらもないんだ。俺の家の領地のことにまで勝手に口出ししてくるんだよ? 大変だよ。俺の両親たちは見る目がないのか、アイツのことを気に入っているみたいなんだけれどな」
家の者は婚約者の味方だとリネルド様は言った。婚約者とはいえ、勝手に他の家の領地にまで口出しするなんて……。リネルド様から聞いた話だと相手は伯爵家の娘。私たちより上の身分の人。
可哀想にリネルド様。相手の爵位が上だから我慢をしているのね! 身分を盾にして脅すなんて酷すぎるわ!
「リネルド様、お可哀想に。ご家族までもがその婚約者さんの味方だなんて……。お家に味方がいなくてお辛かったことでしょう」
両手で彼の手をとりそっと胸元で握りしめる。こんな素敵な人を苦しめるなんて最低ね!
「ありがとう。やっぱり君は優しいね、そして可愛い。せっかくだから俺のことも愛称で呼んでくれないか?」
「いいんですか!」
「ああ。はやく君に愛称で呼ばれてみたいな」
「はい……。えっと……り、リネ様?」
「ああ! メリル!」
「うふふっ! リネ様!」
愛称を呼べるのが嬉しくって、しばらくの間お互いに名前を言いあっちゃったわ。もちろん、名前の愛称呼びでね! 彼が教えてくれたんだけれど、婚約者さんには名前の愛称呼びを許してはいないんですって!
婚約者さんには許していなくて私には呼んでほしいと言ってくれた……。ああもうっ! 私って本当に罪な女だわ。婚約者の人よりも彼に愛されちゃうなんて! どうして彼に愛されていないあの女が婚約者の座にいるの? 私の方が彼に愛されているし、彼のことを愛しているのに!
「あの女、きっとリネ様のお家のお金が目当てなんだわ! 彼ってあんなにお金持ちなんですもの。結婚して豪遊するつもりなんだわ!」
伯爵家は彼の家の身分と1つしか違わない。いくら彼の家より家格が上だろうとあんなに大金を持っているとは考えられないわ。勝手に婚約を結ばれたと言っていたし、相手はきっと傲慢なわがまま女よ! リネ様はかっこいいし家はお金持ちだから、親にでも頼んで無理矢理婚約をするようにしたんだわ!
――そして、数年後私の願いは叶ったの!
「ああ、はやく彼に会いたいわ」
我慢を重ねてやっと彼が婚約破棄をしてくれたわ。その現場を見られて本当に嬉しかった! 近くで彼の婚約者さんを見たけれど、大したことはないわね。貴族らしく綺麗なドレスを着ていたけれど、どうせリネ様のお家のお金で買ったのでしょう?
「それにしても……。あんなにキッチリした巻き髪なんて作るのが大変そうね。リネ様が婚約者はいつも同じ髪型で変わり映えしないと言っていたし」
そう。彼の婚約者……今は婚約破棄をしたから元婚約者さんだったわね。彼女、どんな髪型だったと思う? クルックルの巻き髪よ。クルックルの! それも一切崩れることを知らないほどに固められていたわ。
もしかして髪を整えてくれる人がその髪型しかできない人なのかしら? まあ、私には関係ないわね。
「次のデートが待ち遠しいですわ、リネルド様」
ああっ! はやくデートの日にならないかしら? リネ様が婚約破棄をして初めてのデート……。もしかしたらプロポーズをされてしまうんじゃないかしら?! もちろん私の返事は決まっているわ!
「貴方の妻になる準備はできていますわ。リネ様、はやく会いたいわ!」
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