第17話
――メイプリル視点――
自室にある綺麗なドレスや靴、宝石が付いたアクセサリー。これらは全てリネ様が“私”の為に買ってくれたもの。婚約者の女には買ってあげる気が湧かないからと言って、私にはたくさんの贈り物をしてくれるの。
デートをする度に美味しいご飯をご馳走してくれて、欲しい物もなんでも買ってくれる。そしてリネ様は私に毎回欠かさずに愛を囁いてくれる。あの澄まし顔の気に入らない婚約者さんは受けたことのない待遇よね?
「うーん、次は何をおねだりしようかなぁ?」
新しいドレスも欲しいしそれに合わせる靴も欲しい。ドレスと靴を合わせたら、アクセサリーも合わせたいわ。キラキラと輝く宝石のね!
「せっかく可愛く生まれたんだから着飾らないと! 古臭くて地味な格好なんて恥ずかしくてできないわ」
私の実家の男爵家は貧しくはないけれど裕福ではない。綺麗で高価なものはなかなか買ってはもらえなかった。そんな時、リネ様と私は出会ったの。
数年前のある有名宝石店の前。ショーウィンドウに綺麗な宝石が飾られていて、でも買うお金がなくて見ていることしかできなかったの。他の貴族たちはお店の中に入って宝石を選んでいたわ。買う人の中には売っている物より高額になるのにオーダーメイドを頼む人もいたの。
「私だって貴族の一員なのに……」
神様は不公平だわ、と未練を残しながらその宝石店の前を後にしようとしたわ。その時、ちょうど私の側を通り過ぎようとしたリネ様とぶつかってしまったのが私たちの初めての出会いだったのよ。
ぶつかった時に、うっかり転んでしまいそうなのを咄嗟に手を引かれてリネ様に助けられたの。一目惚れだったわ。後から聞いたらリネ様も私に一目惚れをしたそうなの!
助けてもらったお礼を言ったら、ぶつかってしまったお詫びにと有名なスイーツのお店でのお茶を誘われたの。もちろん、即OKしたわ! それから色々な話をしたの。
「みんなケチくさいのよ。可愛い娘と妹の為に綺麗な宝石を買ってくれないなんて!」
宝石を買いたいのに買えない不満をリネ様に言ったの。そうしたら、宝石店の前で私がショーウィンドウの宝石を見ていたのを見られていたみたいなの! 恥ずかしいな!
「可哀想に。あんなに切ないほどの眼差しで飾られた宝石を見ているから、どうしたんだろうと思っていたんだ。もし君がよければ宝石をプレゼントさせてくれないか?」
「いいんですかっ?」
「もちろん。可愛いレディが宝石を買えなくて悲しそうな顔をしているなんて、男として買わない訳にはいかないよ!」
お茶をした後リネ様と一緒にあの宝石店に行き、綺麗な赤色をしたルビーの髪飾りとイヤリング、ネックレスを買ってもらったの。会ったばかりなのに3つもいいの? って聞いたら、
「いいんだよ。可愛い君にとても似合っているからプレゼントをさせてくれないか?」
「ありがとう! そういうことならありがたく受け取らさせてもらいますね!」
ですって! 可愛くて似合うからプレゼントをさせてくれなんて、生まれて初めて言われたわ。リネ様ってとっても紳士なのね。
彼は私のことをたくさん可愛いって褒めてくれるの! 嬉しかったな。家族以外は滅多に言ってくれないんだもの。可愛い私がさらに可愛くしているのに気付いてくれるなんて、ますます彼のことを好きになっちゃった!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。