第14話
「あ、お久しぶりです。なんだかよく分かりませんが、お茶はありがとうございます」
何様のつもりかしらね? アレは。
「やっぱりやらかしたわね」
新しい姿(元の姿)をお披露目するために、お茶会の場所から離れた所で待機している。話をしている最中に割り込むのはいけないので、タイミングを見て顔を出す予定だった。
その間に、どんな話がされていたのかをメイドや護衛役(さり気なく入れ替わりをしている)に聞いた。リネルド……お茶会が始まる前に、やらかしているのね。いえ、彼のことだからこれくらいのことは想像はしていた。していたけれど、実際には想像をしていたことよりも酷かったわ。
まるで自分が、上の立場にいるかのような発言。実際には1番下にいるのにね? 可愛いけれど、まだ幼いフルールに喧嘩を売って負けているのは面白かったけれどね。
「お姉様、まだいかないのですか?」
「まだ待ってみましょう」
一緒に待ってくれているフルールには申し訳ないが、まだまだ様子を見ていたい。
「わかりました!」
「ありがとう、ルル」
優しい妹の頭をなでる。にっこりと笑顔で可愛いけれど、ドレスをつかんでシワにしないように両手を広げて抱きつきたいのを抑えているのが見て分かる。
ルルのその姿を見ると早く終わらせてあげたい気持ちも、もちろんある。けれどまだ私が出るには、早い気がしてしまうのだ。
「こっちでも、お茶を軽く用意してもらいましょう」
使用人に合図を送り、呼ぶ。そしてお茶の用意を頼んだ。ついでにお菓子も……。ほら、腹が減っては戦はできぬってね?
「ふふっ! ふたりだけの、おちゃかいですね?」
「ええ、そうね。向こうに人はいるけれど、ここにいるのは私たちだけだしね?」
向こうに行けば、忙しくなってしまうもの。少しくらいゆっくりとしていても、いいわよね? そう思って少しだけお茶会場所に行くのに、時間をかけている。
「「お嬢様」」
「あら、お帰りなさい。どうだったかしら?」
給仕と護衛役に混じって話を少し聞いてきてと頼んでいた私の専属侍女のシェイと、専属執事のアレンが戻ってきた。
ふたり以外にも話を聞いてはいたけれど、離れた配置にいたから聞き取れないところもあったみたいで。今回は内密の話らしく人を離してお茶会をしているから、限られた者たち以外はあまり話の聞こえない場所で待機をしている。
だから頻繁に人が入れ替わっていても、気付かれないのだけれど。限られた者として、近くにいて話を聞いてきたふたりから、より詳しい内容を聞かなくては。
「どんなかんじでしたか?」
ルルも向こうのことが気になっていたみたいでふたりに聞く。するとふたりは顔を見合わせると、なんともいえない苦い表情をした。
「「酷いです」」
……。
「ごめんなさい。もう一度、言ってちょうだい」
思わず聞き返してしまった。ルルもポカーンとした表情をしているわ。
「最悪です」
穏やかに笑いながらアレンが言う。だが、気配が黒い。怒っているの?
「最低です」
キッパリと冷たくシェイが言う。気配が黒いのはアレンと同じね!
「話してちょうだい」
ふたりの機嫌が悪いわ。元々、リネルドのことは嫌いだったけれど今度はなにをやらかしたのかしら?
――数分後――
「ひどい/酷すぎるわね」
私たちも姉妹も同じ気持ちになった。
「ヘルミーネ様がアレにキツイ物言いになるのも仕方がないわね。公私を分けて考えて下さるから」
普段から自分に甘いヘルミーネ様に冷たくされて驚いたでしょうね。でも、彼女は決して甘いだけの人ではない。それを息子が知らないなんて……。感情を抑えて言動をするのは紳士淑女の嗜みであるし基本中の基本なのにね?
「アレとはおはなしをするだけムダなのではありませんか?」
「「確かに……」」
ルル、なかなかキツイことを言うわね。私たちも思わず同意をしてしまったけれど。
「仕方がないわね。アレと話をするだけムダなら、さっさと終わらせてしまいましょう。終わったらリネルド抜きの用事もあることだし」
「「はい」」
いつまでもここでゆっくりと過ごしていられないので移動をすることにした。もちろん、ルルたちも一緒にね。ルルはアレに会うのが本当に嫌そうだわ。ここに来るまでのアレの非礼を見てきて、グラン夫妻とグリンゼ夫妻胃が痛くなったんじゃないかしら? 本当に失礼な男なんだから!
そう、内心思っていると……。
“婚約なら、もう破棄しましたよ?”
一応、私の婚約者の空気を読まないお馬鹿な声が聞こえた。やっぱり、言っただけで破棄した気になっていたわね。
「愚かね。言っただけでは婚約は破棄されていないのにね?」
「馬鹿なんですよ」
「アホなんですよ」
「マヌケなんですよ!」
私も入れて、みんな酷い。
「事実です/じじつです」
あれ?
「こえにでていましたよ? お姉様」
「あらら。うっかりしていたわ」
リネルドに対して声に出せないことを心の中で言いまくっているので、向こうで実際に声を出して言わないように気を付けないと!
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