第13話
「さて、では話を始めよう。今回は話し合いがメインだからな、今はお茶だけを出しているんだ。我が家の自慢のケーキ類は、話が終わるまで我慢してくれ」
レオルドが言う通り、テーブルの上にはお茶しか用意がされていなかった。話し合いには不要と判断されたからだ。お茶は少しでも喉を潤すといいから、と出された。
「まずは、急なお願いにもかかわらず、この場を用意してくださりありがとうございます」
「「「「本当にありがとうございます」」」」
リネルド以外が言う。リネルドは何がなんだか分からないので、自分の両親たちとレイリーアの両親を見る。
「リネルド。何をしているの? きちんとご挨拶なさい」
いつもより冷えた声音でヘルミーネが言う。その通りだという目線が、複数リネルドを貫く。
「あ……。お久しぶりです、なんだかよく分かりませんが、お茶はありがとうございます」
「「……」」
「えっと……」
再び複数の鋭い視線が彼を貫くのは当たり前だろう。お茶はありがとう。とは、自分がこの場で1番偉い立場だと言っている様なものだ。
「お前は……」
頭が痛いとばかりに、エドモンドが額を抑える。グリンゼ夫妻も何をやっているんだと、肩を落とす。
「リネルド、貴方は許可を出すまで話さないで。貴方が話すと、皆さんが不快になるだけよ」
ヘルミーネがぴしゃりと言う。それに同意する様に、エドモンドとグリンゼ夫妻が頷く。レオルドたちも同じ気持ちだったから、うっかり頷きそうになる。
言われた当の本人は、最初は困惑していたが、言われたことを理解すると自分の方が不快だとばかりに不満そうな顔をする。
「母さん!? 不快なのは俺の方ですよ! 話すなと言うならなぜ俺を連れてきたんですか!」
「「うるさい!黙っていろ(て)!!」」
「なっ、なんだよ……」
当事者であるから連れてはきたが、こんな醜態を晒すならば連れてこない方がよかったとグラン夫妻は思う。
「気にしていたらキリがないわよ? 放っておいて、話を始めましょう」
フランネが手を叩き、皆の視線を集める。
「そうだな、さっそく始めようか。何やら急ぎの話がある、ということだったが……」
レオルドがフランネに同意して、話しを始める。グラン夫妻やグリンゼ夫妻は居住まいを正す。
「その通りです。最近囁かれている、馬鹿息子についてです」
「とうっ……」
「リネルド。私たちは話していいと許可を出していないわよ?」
「……っ!」
馬鹿と言われたことに、文句を言おうとしてヘルミーネに怒られる。いつも自分を可愛がってくれた母親が、今までに見たこともない、冷たい目で見てきて言葉を失う。
「その噂は、どういうものか聞いても?」
ミラベルが聞く。自分たちも噂話は知っているが、グラン夫妻から直接話が聞きたいと思って。
「恥ずかしながら噂は噂と思い、部外者が好き勝手に言っているだけだと、思っていたんです。ですが、火のないところに煙は立たない。息子と男爵令嬢の関係について。噂が本当ならば、この婚約について話をしなければと思いまして。……ここに来るまでの息子の言動を見て、本当のことかもしれないと思いました」
苦しげに、エドモンドは話し始めた。ここに来る前にハンゼットのことを、レイリーアの新しい婚約者か? と聞いてきたことにも理解できなかったが、噂も本当だとしたら……。
「婚約なら、もう破棄しましたよ?」
母親であるヘルミーネから、話すことを許可されていないはずのリネルドが、空気を読まずにそう言った。
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