第6話

 何だか胸のあたりが温かく、何かにしがみ付かれている感覚で目を覚ました。見てみると可愛いルルが私に抱きついて、スヤスヤと気持ち良さそうに眠っていた。朝から可愛い寝顔が見れてしまったわ。


「んん……。ふああぁ〜」


 ルルが大きな欠伸をしながら起きた。時間的にまだ早いし、少しだけ寝てても良さそうね。


「ルル、おはよう。少し早いからまだ寝てても良いわよ?」


 まだ寝ぼけている妹の頭を撫でながら言う。


「いいえ……。おきれなくなっちゃいそうだし、お姉様とおはなしもしたいのでおきます」


 やっぱり、ルルはとても可愛くて良い子ね。異論はこの私が認めないわ!


 お互いベッドでゴロゴロしながら、最近あった嬉しかったこと、楽しかったことをルルから聞いた。親しい家柄同士、歳の近い子供たちで行われたお茶会でマナーを褒められたこと、種から花を育て咲かせたこと、その花を褒められてそのあと綺麗な栞にできたことや自身の婚約者とのお話しなど。


 フルールは確かにまだ幼いが婚約者がいる。アレ(リネルド)とは比べてはいけない、良い子でお似合いの2人である。ふたりが会って話しているのを見ると、何だかとても心が和む。


 思った以上に話し込んでいたみたいで、朝の支度を手伝ってくれる使用人が起しに来た。すでに起きていたので、支度はお互いすぐに終わった。

 今日の髪型とドレスはルルとお揃いにしてもらった。髪飾りとドレスの色を色違いにして。


 可愛いルルは頬を赤く染めて、キラキラとした目でこちらが照れてしまうほど沢山褒めてくれた。


「お姉様!おそろいです!ルル、とってもうれしいです。お姉様とってもとっても、かわいいです!いつもはきれいで、きょうはかわいいがいっぱいです!」


 とてもはしゃいだ様子で、胸のあたりで手を組んでまるで私に祈っているような姿をされてしまった。思った以上に喜んでもらえたようで何だか照れくさいわね。


「フルール、そろそろ朝食の時間よ。皆んなを待たせたらいけないわ、行きましょう?」


「はい、お姉様」


 ご機嫌なルルと手を繋いで家族と一緒に朝食を食べる部屋へと向かう。我が家では朝食は余程のことがない限り、一緒に食べる決まりだ。昼食や夕食はそれぞれが忙しかったりして集まれないことがあるので、せめて朝食だけは一緒に食べてお互いの様子を確認したりする。


 つい、面白い本を見つけて夜更かしをしてしまった日、目にうっすらとクマができてしまい、皆んなにバレてしまってちょっとだけ怒られてしまった。

 やっぱり睡眠は大事よね。ルルにも『お姉様!きちんとねてください!』と怒られてしまったわ……。



「「リア、ルルおはよう!」」

部屋に着く途中で双子のお義兄様達、つまりフルールのお兄様達にあった。


「「おはよう、お義兄様(おにいさま!)」」


「これから朝食だろ?一緒に行こうぜ!」


 双子の兄のシアンドルが元気に誘ってくる。濃い赤毛で魔法より、剣を扱うのが得意な義兄様だ。魔法も剣より苦手な意識があるだけで、使えないわけではない。


「フルール、抱っこするか?」


「だっこして、ベル兄様!」


 今フルールにベル兄様と呼ばれたのが、双子の弟のべオルドである。紫がかった青髪をしている。兄とは反対に魔法が得意で剣も苦手意識があるが、兄同様に使える。

 ベルは愛称で、シアンドル義兄様の愛称はシドである。2人とも元気な双子で、普段は騎士の寮に住んでいる。今は騎士団にある休暇中で家に帰って来ている。


 ルルはベル義兄様に抱っこされて、ご機嫌である。普段より高い目線で色々な物が見えて楽しいらしい。4人で色々とおしゃべりを楽しんでいたら、すぐに朝食の部屋へと着いてしまった。



 ――朝食後――


「ところでリア。アレは自分の両親に今回の件を伝えていると思うかい?」


 朝食を食べ終わって、ちょうど食後のお茶を楽しんでいた時にお父様に聞かれた。


「どうでしょう……。婚約を白紙や解消、破棄をするにしても、書類が必要ですからね。ですがアレの頭の出来具合的に、言ったからもう解消されていると考えている気もします」


 もし、本当にそう考えていたら流石に引くわ。とっくに引いているけれど……。きちんと婚約を結ぶ時、書面でのやり取りをしていたもの。私はキチンと内容を確認していたが、アレは終始つまらなそうにしていて、そっぽをむいていた。

《あのこと》も、書いてあったのに……。


 大事な事柄なのに確認を怠ったのは、あちらの落ち度である。知らないでは済まされないし、その後何度も《あのこと》に関する話も両家でのお茶会の時に出ていた。

 まあ、リネルドは早く帰りたそうに適当に話を聞いていたが。知る機会を無駄にしたのは自業自得ね。


 

 後で知らないと言われてもねえ?

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