第3話

 「……ま、リア様。着きましたよ」


 優しく声をかけられて、目が覚めた。

どうやら思っていた以上に寝ていたらしい。


 「シェイ、起こしてくれてありがとう」


 「いいえ。では、わたしはお茶の準備をして参ります」


 ああ、リラックス効果のあるお茶を淹れてくれるのを覚えてくれてたのね。


 「お嬢様、お手をどうぞ」


 アレンは私が馬車から降りるのを手伝ってくれた。婚約者(仮)は破棄を宣言する前にあった社交の場で、一度もしてくれたことがない。

……。仮にも、貴族の男として終わっていない?


 「ありがとう。シェイの入れてくれたお茶を飲んだら、やることを考えないと」


 あいつらから、貰えるものはきちんと貰わなければ。こちらに非は一切ないのだから。そう考えながら、家に戻ると……。


 「お帰り、リア。随分と早かったね?気に食わないけど、一応婚約者のアイツからの初めてのデートの誘いだったと記憶しているけど?」


 少しだけ驚いた様子の、私と同腹の兄妹である、フルードリヒがいた。濃いオレンジの髪に涼しげな青い瞳が特徴の、穏やかな性格の我がチェルニ家の長男である。


 「ただいま、フルード兄様。ええ、デートというにはちょっと……」


 アレは絶対にデートではない。絶対に!

そう言うと、優秀なフルード兄様は何かを察したらしい。お綺麗なお顔が怖いことに…。


 「なるほど。あの馬鹿が何か、やらかしたらしいな。話を聞かせてもらおうか?」


 我が家では、私の婚約者(仮)のことを馬鹿やアレで通じてしまう。だって、クズだから!もちろん、家の中でしか言わないが。


 「お話はお父様たちがいらっしゃるところで。ゆっくりと話し合いをしたいですわ」


 「なるほど。父上関係ということは、このチェルニ家にも関係がある話だと……」


 さすがお兄様。時期チェルニ家当主、察しが早い。どこかのお馬鹿な誰かも、頭の良さを見習えば良いのに。


 「お嬢様。お茶の支度が整いました」


 お茶の支度のために離れていたシェイが戻って来た。早く美味しいお茶が飲みたいわ。


 「お茶か、僕もいっしょにいいかな?」


 「勿論ですわ。疲れてしまったので、シェイにリラックス効果のあるお茶を用意してもらったんですの」


 「ああ、心中察するよ。ゆっくりお茶を飲もうか」


 そう言ってフルード兄様は、優しく私の頭を撫でてくれた。何だかとても安心した。

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