29話・王宮騎士団の紋章の秘密
「フィルマンさま。こちらの女性とはどのようなご関係で?」
「ああ。紹介がまだだったね。彼女はサクラ。僕の大事な人だよ。訳あって今はミュゲを名乗っている」
フィルマンはわたしへの好意を隠しもしなかった。騎士団長はそういう意味では無くて、わたしとはどこで会ったのかとか、知りたがっているような気がしないでもなかったが、問いかけられたのはフィルマンなので黙っている事にした。
「そうでしたか。今後、ミュゲさんはどう致しますか?」
「僕の所に今すぐ引き取りたいところだが……」
と、フィルマンが話しているところに、急にノルベールが姿を見せた。鎖のようなものに繋がれた騎士らがドサッと床に転がる。
「ノルベールさん?」
「捕獲してきた。悪い。魔術師の方は取り逃がした」
あいつ、逃げ足が速くてさ。と、言いながらノルベールはわたしと目が合うと、「安心しろ」と声をかけてきた。
「ヴィオラさまは無事だ。屋敷の皆も怪我一つない」
「良かった……」
「騎士団長。詳しい取り調べを頼む」
「勿論です。私の名を利用した不届き者達ですから、ゆっくり絞り上げてやりましょう」
丁寧な言い方だが、深緑色の瞳には凄みがあった。
「アガリー魔術師長。愚息はあなたの足を引っ張ることはなかったでしょうか?」
「いやあ、さすがは騎士団長の息子さまだな。的確に動いてヴィオラさまを守り通し、捕獲にも手を貸してくれた」
その言葉でピンときた。
「もしかしてロータスさんは、騎士団長さまの息子さん?」
「そうだよ。彼は寡黙だけど、腕は一流だ。それで異例の鷹の羽0枚所属となっている。彼で3代目だ」
「鷹の羽の枚数に意味があるの?」
良く気が付いたねとフィルマンは言いながら、教えてくれた。
「この国の騎士団は鷹の紋章を持っている。鷹の羽の枚数はそれぞれ所属先が決まっていて、一枚は陛下所属。二枚は王妃所属。三枚はその子供である王子や王女達。四枚は王太后陛下となっている」
「じゃあ、0枚と言うのは?」
「何だと思う?」
フィルマンに教えてもらおうとしたら、逆に訊ねられた。一枚は陛下、二枚は王妃、三枚はその子供達。四枚は夫を亡くした王太后陛下。その流れでいくと王家には関係ない者? でも、ロータスは異例の0枚所属だとフィルマンは言った。
サクラメントの領主はヴィオラ夫人となっている。彼女の出生に何かある? それとも立場?
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