第5話 配信者めぐりん!(めぐるさんのキャラ作りし過ぎな配信を見てみよう)

「歓迎会は楽しかったな~……」


 その後も人生ゲームだの、ス○ブラだのと、パーティーゲームをたくさん遊びまくって楽しい時間だった。

 ツンデレのアリナは乗り気ではなかったが、クロードに説得されると渋々と言った様子で参加していた。


 彼女は孤独を好む人間のようだが、どうやらクロードの言うことは素直に聞くらしい。

 ただ者じゃ無いんだろう。クロードという、歴戦の死神だという老人は。



「……歓迎会、誰が言い出したんだろうな」



 言動からして恐らく引きこもりであろう深白みしろ。こちらに興味がなさそうな十日崎。

 孤独を好むツンデレ気質のアリナ。クールで毒舌なめぐる。

 そして、物腰柔らかで落ち着いた老人であるクロード……。


 ユウイチにしてみれば、自分の歓迎会をやろうなんて言い出しそうな陽気なメンバーは、誰もいないように思える。



「……いっぱい楽しんで体力使ったし、今日はもう寝ちまおう」



 見れば時計は夜の10時。夕御飯の時間から、結構長いこと遊んでいたらしい。

 スマホを充電器につないでベッドに入り、明かりを消して寝ようとしていた、その時だった。



 ピロリン♪



 いわゆるメッセージアプリ……PINEの通知音が鳴ったのだ。



「ん……。誰からだろ?」



 もう寝ようと思ってたところだが、一言くらいは返事をしてから寝るのも良いだろう。そう思いながら、通知を確認する。



「めぐりん☆?」



 見覚えの無いアカウントに友達登録をされていて、しかもメッセージまで送られて来ていた。問題なのは、そのメッセージ内容。



『可愛い可愛いメイドさん、螺旋乃宮めぐるのPINEアカウントです』

『これ、わたくしがやってるムーチューブのアカウントです。良かったら、配信見てね♥️』



 と、この二つのメッセージと共に、配信のリンクらしきモノが貼られていたのだ。



「……え? なんで俺のPINEアカウント知ってるの? この人……」



 気になったので、早速だが返事を送ってみる。



『めぐるさん、なんで俺のアカウントがわかったんですか?』



 すると、即座に返事が返ってきた。



『そりゃあれですよ。わたくし、電波や電気信号も操作できますからね。スマホのハッキングくらいはお手のものです』



 なにそれ怖い。ユウイチは震え上がりながら、さらに返事を返していく。



『つまり、超能力で俺のアカウントを探ったってことっすよね?

 ハッキングまでできるなんて、めぐるさんの超能力ってなんでもアリっすね』

『地球の単純なソフトウェアくらい、乗っ取れてもなんの自慢にもなりませんよ』

『そんなこと言ってたら、超能力そのものが自慢にならないっすよ。

 どんな才能でも、人に誇れるかどうかって、結局は使い道で決まると思うっす』

『……そういうものですか?』

『そうっすよ。「何ができるかより、何をするか」っす』

『分かりました。では、今後は無許可でのハッキングは控えさせていただきます』

『そうしてください(笑)』



 会話は一区切り付いたので、ユウイチはさっそく、めぐるのムーチューブアカウントをチェックする。

 すると、ちょうどそのときに配信が始まっていたのか、相変わらずメイド姿のめぐるが、開始の挨拶をしていた。



「みなさん、こんばんわ~♪ めぐりんです☆ 趣味はメイド、本業は配信者! 地元は一億光年先にある宇宙人ですっ♡」

「いや、テンションがリアルと……かなり違うな! 明らかにキャラを作ってる……! いや、けど童顔だし、可愛いし、見た目とは噛み合ってるな……」



 画面の隅っこには、明らかにリアルとは言動が違う、異様にキャピキャピした、アニメの美少女めいた喋り方をするめぐるが映し出されていた。

 配信にはリアルタイムで、内容に対するコメントがされているわけだが、その内容はと言うとーー



『うわきつ』

『素晴らしい提案をしよう。お前はVにならないか?』

『※彼女は42歳です』

『ファ!? 』四十二歳!? どう見てもJK美少女メイドやんけ!』

『アンチエイジングのちからってすげー!』

『信じられるか? 活動期間でいえばピカキン以上のベテランなんだぜこの人』

『ピコ生時代からこのキャラ貫いてるのはホントに尊敬する』



「いや、コメントもなんか、めぐるさんのキャラを楽しんでるっぽいな……。ちょいちょい意味の分からない単語はあるけど……」



 配信の内容は、視聴者参加型の麻雀配信だった。オンラインで麻雀ができるゲームがあるらしく、ファンと対戦するというのが配信の企画のようだった。


 自分のファンと戦うなんて、手加減されるのがオチなのでは……。ユウイチはそう思ったが、別にそうはならなかった。

 とにかく、めぐるが強すぎるのだ。ユウイチは母に仕込まれたので麻雀はそこそこ打てるが、めぐるはとにかく試合の流れを読むのが上手い。


 捨てる牌の選び方も、戦況を判断する力も、全てが完璧だ。



「すげぇな……。宇宙人って麻雀も強いのか……。いや、単純にめぐるさんがスゴいだけなのかもな」



 それに、配信はほぼ常に、和やかな空気で進んでいた。めぐるが勝つと分かりきってる配信なんて、見ていて楽しいのかと思うくらい、めぐるは強い。


 だが、ファンたちは自分の『推し』をラスボスに見立てて、今日こそ勝つぞと言う意気込みで挑み、共に遊ぶ時間を楽しむ。


 めぐるもそれを理解してか、時として明らかに『苦戦を演出して』勝っている。

 視聴者に見抜かれないように、かなり工夫しているようだがユウイチにはそれが分かった。

 運の要素もつい麻雀でそれができるなんて、彼女はただ者ではない。

 だから誰も気付かないんだろう。やるともできるとも思ってないから。



「あっ、国士無双ですね~☆ わたしの勝ち♪ 配信で出るのはホントにレアなんですよ~♡」



『おめでとう!』

『すっげぇええええ!』

『一発逆転!』

『かっこ良かったぞババァ!』

『処女ですか?』



 ――ん? 今、変なコメントあったな。



 投げ銭でのお祝いコメントに混じって、しれっととんでもないセクハラが混ざっていたような……。

 ユウイチは、そのあまりの気持ち悪さに悪寒を感じていた。

 その時だった。めぐるの顔から、すーっと表情が消えたのは。



「いつもはスルーさせて頂いていますが……。今、処女ですか? などと、セクハラコメントをしたお方はブロック致しますが……。まったく、気持ちの悪いゴミもいたものですね。穢らわしい。死んで欲しいモノです」



 心底、見下げ果てたという表情のめぐる。ファンたちも同じように怒っていたが……。



『セクハラ野郎の分際でめぐるちゃんに罵倒して貰えるの腹立つな。黙ってブロックが最適解やこういうのは』

『俺も罵倒されてる気分になってきたよ……。まあ興奮するからいいけど』



 なんか喜んでる人達がいた。けど、大半の視聴者は、めぐる本人が怒るまで、スルーするようにしていたようなので、基本的には良いファンが付いているようだ。

 初めて見ためぐるの配信は、ユウイチにとっても楽しめるモノだった。



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